「世界では、どこの国が難民を受け入れているのだろう?」
あなたは、このような疑問をお持ちではありませんか?国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の「数字で見る難民情勢(2018)」の発表によると、世界では紛争、差別、迫害によって故郷を追われた人の数が7,000万人を超えました。(※1)この70年間で最高レベルの数値となる難民の数は、受け入れ国なしで生きることが困難です。
それでは、故郷を追われた人はどこへ向かうのでしょうか? 今回は、難民の受け入れ国について、世界の現状をお伝えします。
・難民の発生が多い国
・世界の難民受け入れが多い国
・日本の難民受け入れ事情
あなたの難民への理解が、未来への第一歩となりますように。
2018年時点で、紛争や迫害によって移動を強いられた人の数は7,080万人にも上り、今もなお増え続けています。(※1)このようにして家を追われた人々は大きく分けて「難民」と「国内避難民」の2つに分類されます。
難民とは、「難民の地位に関する条約(難民条約)」では「人種、宗教、国籍、政治的意見や特定の社会集団に属する理由で、自国にいると迫害を受ける(恐れがある)ため他国に逃れた人たち」と定義されています。2018年において難民の数は2590万人にも上り、シリア、アフガニスタン、南スーダンなどが主な発生国です。(※1)多くの難民は自分と家族の命を守るため、陸や海を渡り国外へと脱出をします。
「難民」と「国内避難民」の違いは、国外へ逃れるか、国内で移動を強いられるかです。2018年の国内避難民数は4,130万人で、難民・国内避難民全体の約6割となります。(※1)内戦、紛争、政治的な迫害、もしくは自然災害によって、国内の安全な地域へと逃れますが、国際的な支援がなければ安全な暮らしができない日々が続いているのが現状です。
難民は主に中東、アフリカの地域で発生していますが、国によって難民が発生する事情は異なります。2018時点において難民の発生が多い上位3カ国について解説します。(※1)
シリアの難民発生数は670万人になり、難民全体の3分の1を占め、世界で1番多い国です。主な理由は「内戦」です。2011年から今もなお続く「シリア内戦」は多くの市民が犠牲となり、内戦の影響で故郷を離れなければならない人たちが多く発生しています。
アフガニスタンの難民は270万人になり、およそ国民の10人に1人が故郷を離れななければなりません。主な理由は「紛争」です。1979年のソ連軍の侵攻以来つづく混乱、タリバーンの台頭に伴う治安悪化、2001年のアメリカ同時多発テロなど、紛争が原因で多くの難民が発生しています。
アフリカ東部に位置する南スーダンでは230万人の難民が発生しています。主な理由は「紛争」です。2011年にスーダン共和国から独立した南スーダンですが、2013年に首都ジュバで起こった武装衝突がきっかけとなり、難民の発生は全土まで広がっています。
世界では内戦や紛争によって故郷を離れなければならない難民が発生しているため、難民受け入れ国の協力が難民の命を守る一つの鍵となっています。
トルコの難民受け入れ数は370万人で、世界で最も多い難民の受け入れ国です。
主に、隣国であるシリアからの難民を受け入れていて、シリア難民の数は270万人にも上ります。(※1、※2)
多くのシリア難民を受け入れているトルコですが、難民の労働環境が整わないと収入は低く、栄養不足になり、貧困状態の生活が続いてしまいます。難民の受け入れは国際的に評価されていますが、難民キャンプには大勢の人が溢れている現状もあり、長期的な支援を必要としているのが現状です。
2019年、トルコ政府により100万人のシリア難民を自国へ送還する発表がされました。世界では、行き場を失った難民の支援が求められています。
パキスタンの難民受け入れ数は140万人で、多くがアフガニスタンからの難民です。(※1)
アフガニスタン難民の仕事はほとんどなく、厳しい生活を余儀なくされています。難民キャンプのインフラは整備されていないため、子どもたちに充分な栄養が行き渡らないのが現状です。
2002年以降、日本を含めた世界からの支援もあり、430万人のアフガニスタン難民がパキスタンから自国へ帰還しました。(※3)しかし、国内では未だ紛争が続いているため、多くの難民が不安を抱えています。
ウガンダは120万人の難民を受け入れていて、アフリカで最も多い難民受け入れ国です。(※1)主な難民は南スーダンの紛争によって行き場を失った女性や子どもたちです。ウガンダのビディビディ難民居住地で生活する南スーダンの難民は28万人にもおよび、そのうちの71%が子どもです。
南スーダンの紛争によって財産を失った難民は生活が困難となり、育児放棄や子どもに対して搾取や虐待をするケースが増えています。教育の機会を失った子どもたちは基本的な読み書きを習得できないため、将来仕事に就けない場合もあります。衛生の知識や道路標識の区別、搾取から身を守る方法を知らなければ、子どもたちに未来はありません。
ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)では支援事業を通じて、子どもたちに教育の機会を与え、子どもたちが健やかに成長できる生活環境を整えることを目指しています。
スーダンは110万人の難民を受け入れていますが、主な難民は隣国の南スーダンからです。しかし、スーダンでもダルフール紛争によって国内避難民が発生しているため、難民キャンプの生活もまた安全とは言えません。
感染症や食糧難で命を失う難民や教育を受ける機会のない子どもたちは、国際的な人道支援がなければ安全な生活ができません。
ワールド・ビジョンでは、支援事業を通じて難民キャンプに食糧を届けたり、小学校の教室を整備するなど、難民の安全な暮らしを目指しています。
2015年、ドイツ政府は100万人の難民受け入れを発表しました。難民の受け入れを始めた結果、シリアを始め中東国から多くの難民が流入します。ドイツが難民の受け入れ政策をした主な理由は「国内の高齢化」や「人口減」と言われています。
しかし、難民は労働許可が降りないと安定した収入を得られないため、貧困な生活を余儀なくされます。また国内の一部では難民受け入れ政策への反発もあり、今もなお難民に対しての支援は模索状態です。
2018年時点では、日本の難民受け入れ人数は10493人の申請に対し、42人と先進国の中でも非常に低い数値です。(※4)難民の受け入れ数が少ない理由のひとつとしては、難民発生国が中東、アフリカ、アジアに集中していることも関係しています。すでに経済的にも貧しい難民は、島国である日本へ辿りつくのはとても困難です。
難民への支援は「受け入れ」だけではありません。ワールド・ビジョンでは難民支援募金を通じて、シリア、南スーダンなど多くの難民に対して支援を行なっています。詳しい支援内容はこちらをご覧ください。
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※2 国連UNHCR協会:周辺国のシリア難民に届けられた支援の形
※3 UNHCR - 日本政府、アフガン難民とパキスタンの若者へ支援に270万米ドルを拠出
※4 法務省 - 平成30年における難民認定者数等について
※このコンテンツは、2019年9月の情報をもとに作成しています。