アフリカの教育は何が問題なのか - 現状、課題、支援方法を解説 -

アフリカの多くの国々において、教育の発展が課題のひとつとされています。このことは多くの人が認知している一方で、具体的にどのような問題があるのかという質問に正しく回答できる人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、アフリカの教育の歴史や現状、問題点やその原因について詳しく説明します。最後に、アフリカの教育問題を解決するために、私たちにできることを紹介します。

アフリカの教育の歴史

ガーナの学校に通う子どもたち
ガーナの学校に通う子どもたち

近代的な教育をアフリカにもたらしたきっかけは、キリスト教の伝来と言われています。その後、植民地支配、第二次世界大戦後の独立という2つのターニングポイントを機に、アフリカの教育の状況は大きく変わっていきました。(注1)

植民地時代

キリスト教の布教団体によってもたらされた西欧型の学校教育は、当時の代表的な宗主国であったイギリスやフランスが植民地政策を推し進めることを目的としていました。

例えば「経験主義」と呼ばれるイギリスの植民地政策のもとでは、アフリカの人々を独自のカリキュラムで教育し、植民地を安定的に統治・運営していくことができる人材の育成・訓練が目指されました。

フランスの政策は「同化主義」と呼ばれ、アフリカの人々をフランス人化することを目的に教育が行われ、教育を受けた者だけがフランス人社会における市民権を得ることができました。

こうした植民地時代の学校教育は、従来の伝統社会の権威を否定し、伝統宗教を悪と決めつけるものでした。



独立後

第二次世界大戦が終わり、アフリカ諸国は次々と独立を果たしました。アフリカ人によるアフリカ人のための国造りをしていくためには、人材の確保が急務でした。そのため、どの国も教育に注力し、急速に発展していきました。

初等教育では、1960年の総就学率が36%でしたが、83年には75%に達しました。また、同時期の成人識字率も9%から42%に向上しました(注1)。

しかし、その後の人口の爆発的な増加や経済の停滞に伴い、アフリカは社会サービスを中心に大きく低迷することになります。それに伴い、教育も停滞していきました。教育の停滞は貧困や経済格差を生み、国の経済状況もさらに落ち込むといった負の連鎖を引き起こしたのです。

そのような中で国際社会は、アフリカをはじめとした開発途上国と呼ばれる国々が置かれた状況を変えるためには、教育こそが重要な役割を果たすと考えました。1990年に「万人のための教育(Education for All: EFA)」が宣言されたことをきっかけに、世界中のドナーが基礎教育支援に関心を持つようになったのです。

アフリカの教育の現状と問題

マラウイの学校に通う子どもたち
マラウイの学校に通う子どもたち
現在のアフリカの教育の状況はどうなっているのでしょうか。ここでは、アフリカの中でも特に教育支援が必要とされている、サブサハラアフリカ地域に焦点を当てて見ていきましょう。

子どもの現状

国際連合児童基金(ユニセフ)が発表した「世界子供白書2019」によると、2012年から2018年までのサブサハラアフリカ地域の教育の現状は、以下の通りです(注2 表10)。
  • 小学校に入学する年齢で未就学の児童の割合:男子19%、女子24%
  • 中学校に入学する年齢で未就学の生徒の割合:男子34%、女子37%
  • 小学校を修了した児童の割合:男子64%、女子64%
  • 中学校の修了した生徒の割合:男子48%、女子42%
  • 小学校の最終学年の児童のうち、最低限度の読み書き・算数能力を身に付けた児童の割合:読み書き57%、算数45%



問題点

これらのデータを世界平均と比較すると、未就学率が高く、修了率が低いことがわかります。このことからアフリカの教育には、学校へのアクセスと教育の質に問題があると言えそうです。

まず、学校へのアクセスについては、現在もまだ2割近くの児童が小学校に通えず、中学校になるとその割合はさらに大きくなります。また、男子に比べて女子児童の方が未就学率がやや高い傾向にあることからも、性別による格差が存在すると言えます。

また、仮に入学しても最終学年まで到達できない子どもの割合も決して低いとは言えません。小学校では約4割、中学校では約5割の生徒が、何らかの理由で留年または中退などにより、卒業できていないことが分かります。

教育の質については、小学校で最低限度の読み書きと計算を身に付けることなく卒業する児童が、4~5割いることが分かります。この事実は、彼らが大人になってから日常生活や仕事をする上で、大変な困難が生じる可能性があります。このような教育格差は、さらなる経済格差を生む原因になるでしょう。



原因

では、これらの問題が引き起こされる原因は何なのでしょうか。ここでは、その原因を学習環境、貧困、教育に対する意識、の3つの観点から解説します。

学習環境の不足
上述の通り、アフリカは世界でも特に人口が急激に増加し続けている地域です。この現状はは教育にも大きな影響を与えています。その1つが学校と教員の数です。子どもの数に対して学校や教員の数が少ないことは、子どもが教育を受けることを妨げる大きな原因となっています。

ただ、学校や教員の数を急激に増やすことは、教育の質の低下を招きます。学校数を増やしても、教員の質や教室内の設備の不足が起こるため、子どもが受ける教育の質の低下に大きく影響してしまうのです。

貧困による教育機会の喪失
子どもが学校に通えない原因は、家庭環境にもあります。アフリカには、明日食べていくだけで精一杯の経済状況である家庭が多くあります。そのため、子どもの教育費を捻出できず、学校を休ませたり、留年・中退したりしてしまうケースが多々あります。

結果として、子どもが強制労働を強いられたり、子ども兵士として拉致され、暴力を受けるなど、新たな問題も噴出しています。

教育に対する保護者の意識の低さ
親が子どもの頃に十分な教育を受けてこなかったことから、子どもに教育を受けさせる意義や必要性を認識していない場合もあります。そのため、子どもを労働力とみなしたり、簡単に退学させる原因の一端を担っていることが考えられます。

かつて女子に教育は必要ないと考えられてきた地域では、今でも女子を学校に通わせることを軽視している保護者もいます。そのような背景も、上で示したデータにおいて男子より女子の方が就学率や修了率が低い理由の1つと考えられます。

アフリカに対する教育支援

教育支援の一環として寄贈された本を読むジンバブエの子どもたち
教育支援の一環として寄贈された本を読むジンバブエの子どもたち

このようなアフリカの教育の問題を解決し、状況を好転させていくために、どのような支援が行われているのでしょうか。ここでは、アフリカに対して行われている支援を、国際機関・政府による支援とNGOなどの民間による支援に分けて解説します。

国際機関・政府の支援

政府による支援で最も代表的なものに政府開発援助(ODA)があります。ODAとは、開発途上国の社会・経済の開発を援助することを目的とした、政府が行う経済協力のことです。

ODAには二国間援助と多国間援助があり、二国間援助は支援を必要としている国(主に開発途上国と呼ばれる国が多い)が、支援を行う国(ドナー国)に対して支援を要請することで実施されます。

一方、多国間援助は、ドナー国が国際機関に出資し、国際機関を通じて支援が実施されるものです。したがって、国際機関が行う支援の多くは、各国政府による資金援助によって成り立っていると言えるでしょう。

また、これらの資金は毎年国の予算に計上されているものであり、私たちの収める税金によって行われている国際協力と考えることもできます。

国際機関・政府による支援内容は多岐にわたりますが、教育に関する支援は、学校建設など設備や施設に対する資金援助と、教員の能力強化や教科書開発などの技術協力援助に大別できます。



NGOの支援

民間の支援でもっとも代表的なものが、NGO(Non-govenmental Organization,非政府組織)による支援です。NGOは、開発、貧困、平和、人道、環境等、地球規模の問題に自発的に取り組む組織を指し、日本には現在400以上の国際協力NGOが存在していると言われています(注3)。中でもアフリカの教育を支援するNGO団体は70以上あります(2018年1月現在)(注4)。

NGOの支援の特徴は、開発途上国の人々が本当に必要としているニーズにきめ細かく応えることができる点です。特に緊急人道支援が必要な際にいち早く現地入りし、迅速な活動を行っています。紛争地や難民に対する支援などを行っている団体も数多くあります。

教育に関しては、学校の施設や設備に関する支援のほか、職業訓練教育や奨学金事業など、規模や対象地域こそ限定的ですが、市民レベルで本当に必要な人に支援が行き届くような活動を行っています。



わたしたちにできること

このように、さまざまな団体がアフリカの教育支援を行っているなかで、私たちにできることは何でしょうか。

ひとつは関心を持つことです。政府が行っているODAによる支援は、私たちの税金によって支援されているにもかかわらず、多くの方はそのお金がどの国にどのように使われているかを知りません。国民が関心を示さないものにお金は多く流れません。日本のODAの援助額は、一時期に比べ減少傾向にあります。その状況に反して、世界の格差はどんどん広がっており、アフリカの貧困や教育などの問題はいまだ解決されていません。

まずは私たちが問題を知り、それを解決するために何をすべきか考えることこそが、世界のどこかで今も取り残されている人たちを救う第一歩になるはずです。

また、知るだけではなく、さらに行動を起こしたいという方には、NGOに寄付をするという方法もあります。ODAはあくまで国の予算から捻出されるものであり、私たち市民が簡単にその使い道を変えることはできません。しかし、NGOなどの国際協力を行う団体への寄付金は、私たち市民の力でお金の流れを変えることのできる方法のひとつです。

ワールド・ビジョンの取り組み

南スーダンの小学校に通う子どもたちとワールド・ビジョンのスタッフ
南スーダンの小学校に通う子どもたちとワールド・ビジョンのスタッフ

ワールド・ビジョンは、1950年に設立された国際NGOで、これまでアフリカをはじめとしたさまざまな開発途上国の教育支援のために活動を行ってきました。

ワールド・ビジョンの教育支援

ワールド・ビジョンは、校舎の建築・修復など、子どもたちが安全に学ぶ環境の整備、難民の子どもたちのための学校運営、補習授業の開催、教員の養成・研修、教育を受ける重要性、女子の教育などの啓発活動、コミュニティの学校運営への参画促進等を行っています。

例えば、南スーダンという国は2013年から内戦状態にあり、60万人以上の難民が隣国のエチオピアへと逃れています。ワールド・ビジョンは、そのエチオピアの難民キャンプの子どもたちのために教育支援を行っています。学校を建設し、その学校を運営し、子どもたちの教育を受ける権利を守る活動を行っています。



チャイルド・スポンサー・シップに参加するには

ワールド・ビジョンでは、アフリカを始めとした開発途上国の子どもたちへの長期支援の一環として、チャイルド・スポンサーシップによる支援活動を実施しています。

チャイルド・スポンサーシップとは、子どもの健やかな成長のために必要な環境を整えていけるよう活動するプログラムで、支援を受けた子どもたちが、いずれ地域の担い手となり、支援の成果を維持・発展させていくことを目指しています。

具体的には、学校に井戸や給水タンク、トイレなどを設置し、子どもたちが安心して学校に通うための支援活動に活かされています。

貧困、紛争、災害。世界の問題に苦しむ子どもとともに歩み、
子どもたちの未来を取り戻す活動に、
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一日あたり150円で子どもたちに希望を。

参考資料

注1 JICA「アフリカの教育外部リンク
注2 国際連合児童基金「世界子供白書2019 統計データ外部リンク
注3 外務省「国際協力とNGO外部リンク
注4 特定非営利活動法人アフリカ日本協議会「アフリカで活動する日本のNGOデータベース(50音順)外部リンク


※このコンテンツは、2021年2月の情報をもとに作成しています。

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