開発途上国の子どもたちを救うために、寄付をする方が増えています。寄付は、国際協力に参加するための、とても有効な手段のひとつです。寄付にはどのような方法があるのでしょうか。世界の子どもたちを救うための、効果的な寄付について考えてみましょう。
開発途上国への寄付には様々な種類があります。ここでは、物資を寄付する場合と、募金・寄付をする場合のそれぞれの効果や、直接寄付と間接寄付の仕方などについて取り上げてみました。
私たちが開発途上国の人々のために物資を送るのは、少し困難を伴うようです。それはなぜでしょうか。
日本はとても恵まれている先進国のひとつです。個人が所有している物品の数もとても多く、家は物で溢れています。例えばペンひとつにしても、ひとりで何本も、時には何十本も所有していることも多いのではないでしょうか。ところが開発途上国に住む人々の中には、ペンを1本も持っていない人が大勢いるのです。日本の家庭に眠っている余剰品や不用品を開発途上国に送ることができたら、どんなに喜ばれることでしょうか。
しかし、物品を開発途上国に送るのは、あまり現実的ではありません。梱包代、輸送費、関税、倉庫代、仕分けや配布をする人員と人件費など、多くの日数・人員・費用がかかってしまうのです。信頼できる現地の受け入れ先があることも必要です。
外務省は、海外へ物資を送る場合について、次のように述べています(注1)。
外務省:国際協力とNGO FAQ(よくある質問)16.中古衣類を途上国支援に活用したい より
個人間で少量の物品を送ったとしても、送料がかかるのはもちろん、相手国に無事に着いたとしても関税が多くかけられて受け取りが困難になったり、輸送途中で紛失してしまうことも珍しくありません。届けたい物品の価値をはるかに超えるコストとリスクを覚悟する必要があります。
旅慣れていたり、相手側のことをよく知っている場合は、自分で直接現地まで持っていく事もできるでしょう。利用する航空便のチケットによって持ち込める重量があるので、よく調べる必要があります。そして、信頼できる受け入れ先があることが不可欠となります。
以上の事から、個人で途上国へ物資の寄付をすることは難しい場合が多いことがわかります。個人が日本から送ることができる物資には限りがあるため、分配の方法などについて注意深く考える必要があります。適切な場所で適切な人々に、適切な方法で分配をしないと、争いの元になってコミュニティが壊れるなどの危険も生じるのです。
日本から送りたい物資が、相手国の習慣や文化・宗教・気候などに適したものであるかも、よく考えなければなりません。必要性はあるのか、現地でも修理や交換ができるのかなど、しっかり考慮することが重要となります。
もし開発途上国へ物資を寄付したいのであれば、文房具など特定のものを募集しているNGOや国際援助団体に託すのが効果的でしょう。現地に組織を持っており、専任のスタッフが常駐しているような信頼できる団体であれば、限られた物資をどのように分けるべきかを知っており、効果的な支援に結び付けることができます。たとえば国際協力機構(JICA)では、「世界の笑顔のために」プログラムを通して物品の寄付を呼び掛けています(注2)。
募金や寄付は、国際協力の活動に参加する有効な手段です。開発途上国への支援のために、赤十字やユニセフなど、国際機関や国際NGOなどに募金・寄付をする方も多いことでしょう。信頼できる団体への支援は開発途上国までしっかり届くので、とても効果的であると言えます。
開発途上国への支援を実施している団体の多くは、現地に事務所があり、支援が必要な人々との信頼関係ができています。その国の背景や人々のニーズ、そして優先順位がわかっているので、適切なプログラムを実施することができるのです。募金や寄付は、そのようなプログラムを円滑に進めるための必要不可欠な資源となるのです。
募金や寄付をした団体が「認定NPO法人」であった場合は、寄付金控除の適用を受けることができます。認定NPO法人とは「所轄庁(都道府県知事又は指定都市の長)の認定(若しくは仮認定)を受けた認定NPO法人(若しくは仮認定NPO法人)(注3)」のことです。認定NPO法人であるかどうかは、信頼できる団体である事の、ひとつの基準になり得るでしょう。
どのような寄付の仕方があるのでしょうか。内閣府は、寄付の方法について次のように述べています(注4 P117)。
直接寄付も間接寄付も、困難に直面している世界の人々を救うためのプログラムに使われることは間違いありませんが、もし特定の分野や国など、目的がはっきりしているのであればNPO法人などへの直接寄付の方が適しているでしょう。
NPO法人や国際機関など、開発途上国の人々を支援している団体は数多くあります。それぞれ得意分野や力を入れているプログラムなどが違うので、ホームページで調べたり、説明会に参加するなどして、活動に賛同できる団体を探しましょう。
寄付の方法も数多くあります。募金箱に入れるなど一時的なものや、ひとつのプログラムに何年も寄付を続ける継続的なものもあります。賛同できる国際NGOの会員となって会費を納めることも開発途上国への大きな支援です。フェアトレード商品を購入したり、クリック募金やポイント募金、クラウドファンディングなどを利用するのも、手軽にできる寄付と言えるでしょう。
子どもの立場はとても弱く、紛争や貧困の最も深刻な被害者となってしまいます。世界の子どもたちの多くが、様々な困難に直面しているという現状があるのです。子どもたちを救うために、どのような支援ができるでしょうか。
紛争や疫病、自然災害などの発生は予測できないものが多く、深刻な状態になることがあります。開発途上国はもともと社会基盤が脆弱で、紛争や災害から人々を守ることが困難で、その国だけで解決することができません。特に一番弱い立場である子どもは、栄養や衛生面、安全面などで影響を受けやすく、すぐに劣悪な環境に陥ってしまいます。
ユニセフは、「紛争、自然災害、感染症の蔓延・・・。そうした緊急事態や人道危機の中で、最も犠牲を強いられるのは、いつも子どもたちです(注5)」と述べています。残念ながら、子どもが一番の犠牲者となっている状況は、今も昔も変わっていません。子どもを支援している国際NGOワールド・ビジョンが実施する緊急支援は、最も弱い立場の子どもにも支援が行き届くように配慮しています。
緊急支援の初期は、物資の支援が中心となります。世界中から支援物資が送られることもありますが、受け入れ国の文化や気候などに合わず、善意の品々が使われないケースも珍しくありません。
例えば2004年にスリランカで津波災害が起きたとき、世界中から届いた大量の支援物資の中には、南国では着ることの無い長そでのセーターやコート、宗教上食べられない食品などもあったと言われます。受け入れる側は誰に配れば良いのか、対処するのにとても苦労したました。このような場合は、物資の寄付ではなく、募金や寄付をした方が良いでしょう。本当に必要な物資を購入することができるからです。
支援物資を準備したり人員を派遣するためには多くの資金が必要です。いつ起こるとも知れない災害に備えるために、募金や寄付を日頃から呼びかけている団体も多いので、そこに寄付することは、誰かの命を救い、ニーズに合った支援物資を届けることにつながります。
開発途上国の子どもを支援するときは、長期的な視野に立った支援が不可欠です。教育支援をはじめとした、子どもが安心して成長できるよう総合的な取り組みが必要となります。大人たちも巻き込んで地域全体を開発するようなプログラムが効果的です。多くの国際NGOは子どもたちを支援するプログラムを何年も継続し、長期的な支援をしています。
例えば、国際NGOワールド・ビジョンはチャイルド・スポンサーシップを通した開発援助活動を実施し、困難な状況に置かれている子どもたちが健やかに成長できる、持続可能な環境を整えるための支援を行っています。子どもが教育を受ける権利や、安全に暮らす権利が守られるように、支援地域の人々とともに水衛生、保健、栄養、教育、生計向上等に取り組んでいます。
開発途上国の子どもへ長期的な支援を続けるには、経験のあるスタッフと安定した資金が必要となります。募金や寄付は大きな助けとなるのです。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、キリスト教精神に基づいて、貧困、紛争や自然災害などの 困難な状況で生きる世界の子どもたちのために、世界約100カ国で活動する国際NGOワール ド・ビジョンを構成する支援国事務所として、1987 年に設立されました。「開発援助(チャイルド・スポンサーシップ等)」「緊急人道支援」「アドボカシー」を活動の柱とし、世界の子どもたちが未来に希望を持つことができるよう、多角的な支援を継続しています。この活動の大部分は、皆さまからの支援で成り立っています。
ワールド・ビジョンは認定NPO法人です。定期的に東京都へ事業報告と決算報告を提出し、外部の会計士による監査も受けています。ご支援金は寄付金控除の対象となります。
皆さまの寄付によって2019年に実施した活動についてまとめると、総事業数は32カ国で159事業でした。内訳は次の通りです。
●開発援助・・・24カ国85事業
(うち、チャイルド・スポンサーシップは21カ国45事業)
●緊急人道支援・・・16カ国74事業(西日本豪雨緊急支援含む)
●アドボカシー・・・国連本部で開催された「SDG2019サミット」に参加、公開セミナー開催 など
2019年度の経常収益は60億6,992万円でした。資金の集め方は以下の通りです。
●募金や寄付・・・64.5%
(チャイルド・スポンサーシップ募金 51.5%)
(水・食料のための募金・難民支援募金など 13%)
●国際機関や政府等からの補助金・・・35.4%
●その他・・・0.1%
経常費用は58億3,536万円で、その使い道は次をご覧ください。
●現地事業活動・・・83.9%
●広報活動・・・14.6%、
●団体の運営や管理・・・1.5%
この割合は毎年ほぼ同じで、例えば2017年度は皆さまからの募金の82.7%が現地事業活動、広報活動は15.4%、団体の運営や管理は1.9%でした。
このように、ワールド・ビジョンでは皆さまからの寄付の殆どを現地事業活動に用いています。皆さまのご厚意が、しっかりと現地に届くようになっています。
皆さまの募金は、子どもたちのために様々な方法で役立てられています。難民支援のため、危機にある子どもたちのため、緊急人道支援のためなど、困難に直面している子どもに希望を届ける支援活動を行うことができます。例年11月頃からは、栄養不良の子どもの命を守り将来の食料を届ける、クリスマス募金のご案内をしています。また、現在、世界中の人々を苦しめている新型コロナウィルスへの緊急支援も実施しています。
ワールド・ビジョンは、日本政府(外務省)や国際協力機構(JICA)、国連機関などとも連携し、世界の子どもたちのために支援活動をしています。
日本政府や国連機関との連携等による資金の活用にあたっては、事業総費用の一部をNGO側も拠出する必要があります。ワールド・ビジョンは皆さまの募金と日本政府や国連機関等による資金を合わせて、様々な事業を実施し、大きな効果を上げています。
※このコンテンツは、2020年4月の情報をもとに作成しています。
そんな私たちの活動を支えるのは、
「チャイルド・スポンサーシップ」というプログラムです。
チャイルド・スポンサーシップは、
月々4,500円、1日あたり150円の皆さまからの継続支援です。
貧困、紛争、災害。世界の問題に苦しむ子どもとともに歩み、
子どもたちの未来を取り戻す活動に、
あなたも参加しませんか。
今あなたにできること、
一日あたり150円で子どもたちに希望を。
注1 外務省:国際協力とNGO FAQ(よくある質問)
注2 JICA:「世界の笑顔のために」プログラム
注3 国税庁:No.1263 認定NPO法人に寄附をしたとき
注4 内閣府:参考資料4.NPO法人を取り巻く支援の概況
注5 ユニセフ:ユニセフの主な活動分野|緊急支援・人道支援