人類発祥の地であるアフリカは豊かな自然と天然資源に恵まれていますが、世界の中で最も多くの武力紛争が発生している地域でもあります(注1 P2)。アフリカの内戦は現在どうなっているのでしょうか。アフリカの内戦の原因と歴史について調べてみました。
アフリカでは内戦や紛争が数多く発生しています。その歴史と現在の様子について見てみましょう。
アフリカの内戦や紛争の歴史は、奴隷貿易や植民地支配と深い関係があります。
悲惨な奴隷貿易の歴史は15世紀半ばに始まり、18世紀にはピークに達しました。19世紀にはようやく終了しましたが、奴隷にされた人々の3分の2は働き盛りの男性だったということもあり、アフリカの伝統社会構造は破壊されてしまったのです。奴隷狩りを原因とした部族間の抗争もあったと考えられています(注2)。
1884年のベルリン会議でアフリカが分割され、植民地支配が始まりました。分割をする際は民族の分布などは無視され、紙の上だけで行われました。そして植民地経営の多くは単一作物を生産するモノカルチャー経済であったため、その影響でアフリカは現在でも脆弱な経済状況となっています(注2)。
1957年にガーナが独立したのを皮切りに1960年には17カ国が独立しました。ようやく植民地支配から解放されたのです。しかし不自然な植民地分割が行われていたことが、その後の国境紛争の遠因となってしまいました。また、長く続いた植民地支配による統治体制は、アフリカの人々による健全な統治システムの発展を阻んでしまいました(注2)。
1970年から1998年の間、アフリカで発生した戦争は30件を超えました。1996年当時アフリカは53カ国あり、そのうち14カ国が武力紛争の影響を受けました。この年のアフリカの内戦による死者は、世界全体の戦争犠牲者の半数を超えてしまったのです(注3 P1)。
アフリカでは脱植民地化や独立闘争が頻発しました。1990年代にはアフリカの各地で内戦が起こりました(注4 P1)。日本でアフリカの内戦や紛争問題が注目されたのは、1994年に発生したルワンダ大虐殺です(注1 P2)。
2020年1月現在アフリカで発生している内戦のうち、リビアとマリの事例について紹介します。
リビアでは内戦状態が2011年から続いています(注5)。中東有力国の代理戦争とも言われている状態です(注6)。リビアは長く独裁政権によって統治されてきましたが、2011年の民主化運動「アラブの春」により新政府が発足しました。しかし2014年に東西に分裂。2015年に国連主導で統一政府が設立されましたが、それに反発する動きがあり、対立が続いています(注6)。
マリでも内戦が続いています(注7)。2012年から反政府勢力と政府軍による武力衝突が激化し、2013年までの間に47万人が紛争に巻き込まれました。フランスやEUがマリ支援国会議を実施したり軍事的な介入を行ったりしていますが、未だ解決できていません(注8)。
アフリカの内戦には様々な背景があります。そのうち、「民族や宗教の違い」「資源をめぐるもの」「代理戦争」の3つの視点から、アフリカの内戦の原因をまとめました。
アフリカの国境は、その多くが植民地時代に定められたもので、民族を基に国家が形成されたわけではありません。ひとつの国の中に異なった民族や宗教、文化の人々が住んでいます。その「違い」が火種となり、各地で多くの紛争が起こっています。その紛争は国境を越えて拡がる傾向にあるのです(注9)。
例えば、スーダンのダルフールでは、アラブ系民族とアフリカ系民族との紛争があります。その戦いは隣国のチャドにまで拡大しており、スーダンの反政府組織をチャド政府が応援し、チャドの反政府組織をスーダン政府が応援する、という事態になっています(注9)。
世界に注目されたルワンダ内戦も、ツチ族とフツ族の争いでした。内戦終結後は、出身部族を示す身分証明書を廃止し、融和と和解に努めています(注10)。
アフリカには多種多様で豊富な天然資源があります。原油、天然ガスだけではなく、プラチナ、クロム、銅、チタン、コバルトなども産出しています(注11)。これらの貴重な天然資源が、アフリカ各地で起こった内戦の原因となっているのです。
シエラレオネでは政府軍と反政府軍の衝突が発生しました。反政府軍はダイヤモンド産地を押さえていたので、その資金で武器を密輸することができ、内戦を長引かせることになりました。(注2)。
かつて、世界は冷戦によって2つに分かれていました。各地で冷戦の代理戦争のようなものが起こりました。アンゴラ内戦をはじめとしたアフリカの内戦も例外ではなかったのです(注2)。
冷戦が終結すると、アフリカは突然見放されることになりました。それまで外部から経済的にも政治的にも支えられていたアフリカ各国政府は、その状態を続けることができなくなり、暴動によって揺さぶられるという事態に陥ってしまったのです(注3 P7)。
冷戦後、世界は国家間の紛争よりも、国内の異なる民族、人種、宗教などによる武力紛争が頻発するようになりました。これらの紛争や内戦の多くが、アフリカや中東で発生したのです(注12)。
様々な要因が絡み合って発生しているアフリカの内戦ですが、解決策はあるのでしょうか。国際援助機関や国際NGOワールド・ビジョンによる、アフリカの内戦の解決に向けたアプローチについてまとめました。
軍事力だけでは、アフリカの内戦や紛争を根本的に解決することはできません。そこで、国連は平和維持活動(PKO)に力を入れることになりました。「平和の定着」から「国づくり」に至るまで、包括的な平和構築への取り組みを行うのが目的です。2019年10月31日の時点で、アフリカのPKO展開は7カ所でした(注13)。
国連の各機関や各国ODA、国際NGOなども、それぞれの専門性や強みを活かした支援をアフリカ各地で実施しています。日本政府も、「紛争予防・管理・解決のための制度支援」や「和平プロセス支援」「難民支援」「紛争再発予防」「地雷除去・犠牲者支援」などの分野で貢献しています(注1 P2)。
ワールド・ビジョンは約100カ国で活動する世界最大規模の国際NGOです。世界で困難な状態に置かれている子どもたちを対象に、幅広い国際協力活動を実施しています。アフリカの内戦や紛争によって命の危機に直面し、難民となって逃れた人々へも、迅速に支援を行っています。
そのように困難な状況にあるアフリカの子どもたちのために、ワールド・ビジョンは、保健・栄養の改善、安全な水の確保、教育の質改善、生計向上、難民支援、啓発活動、ジェンダーに配慮した開発などのプログラムを実施しています。
また、難民の子どもの明日を取り戻すためにTake Back Futureキャンペーンを2018年から4年間の計画で展開しています。教育を通して、紛争や貧困により移動を強いられる子どもたちに対する暴力を撤廃し、暴力が繰り返されない未来を築くことを目指しています。
※1 外務省:アフリカの紛争に対する日本の取り組み
※2 外務省:アフリカが直面する課題とわが国の対アフリカ外交
※3 国際連合:アフリカにおける紛争の原因と恒久的平和および持続可能な開発の促進
※4 UNHCR:UNHCR公文書館の資料紹介
※5 東京外語大学現代アフリカ地域研究センター:リビア内戦をめぐる国際関係
※6 日本経済新聞:リビア内戦 中東有力国の代理戦争に
※7 東京外語大学現代アフリカ地域研究センター:サヘルに対するフランスの軍事的関与への批判
※8 ユニセフ:マリ 内戦の影響は47万人に
※9 外務省:わかる!国際情勢 Vol.19 アフリカにおける紛争の現状と平和構築~PKOセンターへの支援
※10 外務省:ルワンダ共和国 基礎データ
※11 経済産業省:通商白書2016 第1節 アフリカ
※12 外務省:わかる!国際情勢 紛争後の国づくりを支える~平和構築の文民専門家
※13 外務省:国連PKOの展開状況
※このコンテンツは、2020年1月の情報をもとに作成しています。