南アジアの貧困問題とワールド・ビジョンの取り組み

南アジアの国々は貧しい地域が多い印象という方も多いかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょう。南アジアには特有の貧困問題があるのでしょうか。南アジア各国の貧困問題と、ワールド・ビジョンの取り組みについて解説します。

南アジアとは?

南アジアとはどの国を指すのでしょうか。どのように区分されているのでしょうか。日本のODAによる区分と、南アジア地域協力連合(SAARC)加盟国についてまとめました。

日本のODAプロジェクトによる区分

日本の政府開発援助(ODA)では、援助を行う対象の国々を8つの地域に区分しています(注1)。

外務省HP:ODA(政府開発援助)国別地域別政策・情報 より
外務省HP:ODA(政府開発援助)国別地域別政策・情報 より

南アジアはその中のひとつで、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブの7カ国で構成されています(注2)。

外務省HP:ODA(政府開発援助)南アジア地域 より
外務省HP:ODA(政府開発援助)南アジア地域 より

日本のODAで一番最初の円借款を行ったのは1958年、対象はインドでした。世界の貧困人口の3割が南アジアにに存在していることから、世界の貧困削減のためにはこの地域への支援が重要とされています(注3)。

南アジア地域協力連合(SAARC)加盟国

南アジアに区分されているインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブの7カ国は、南アジア地域協力連合(SAARC:South Asian Association for Regional Cooperation)に加盟しています。その7カ国にアフガニスタンを加えた合計8カ国が、SAARCの加盟国となっています。

SAARCは1985年12月に発足しました。南アジアの緩やかな地域協力の枠組みで、南アジアの人々の福祉の増進、経済社会開発や文化面での協力・協調等の促進が目的です。日本はオブザーバーとして参加しています(注4)。

南アジア各国の貧困問題

国連開発計画(UNDP)が発表した「2019年グローバル多次元貧困指数」の調査結果によると、南アジアでは家庭内の格差やジェンダー格差が大きいことがわかります。5歳未満の子どもの22.7%が家庭内で栄養面の不平等を経験しています。また、南アジアに住む女児の10.7%、男児の9%が就学せず、多次元貧困に陥っています(注5)。これらの数値や状況は、国によって大きく違っています。では、南アジア7カ国それぞれの貧困問題についてみてみましょう。

仕事をする南アジアの子ども

インド



インドは、世界銀行とOECD開発援助委員会から「低中所得国」と分類されています(注6 P62)。購買力が世界3位となったインドは、2030年までに「高中所得国」に入ることを目指しています。2011年から2015年までの間、9千万人が極度の貧困状態から抜け出すことができました(注7)。

しかし、インドの貧困層はまだまだ多いのが現状です。インドの人口は13億人で、貧困率は13.4%。2015年時点で1億7,000万人以上が貧困の状態にあり、その割合は世界の貧困層の約3分の1にものぼります(注9)。インドは、乳幼児と妊産婦の死亡率の保健指標が南アジアの中でも低いことが問題となっています(注9 P7)。未だにカーストや児童婚などの風習が残っていることも、貧富の格差が拡大する原因となっています。

バングラデシュ



バングラデシュは人口が1.65億人。世界銀行では低中所得国に分類されていますが、OECD開発援助委員会からは未だに後発開発途上国と分類されています(注6 P70、注7)。貧困人口は4,000万人ともいわれており、ガバナンス強化の必要性や基礎インフラの未整備、自然災害に対する脆弱性などの問題を抱えています(注10 )。

「世界の最貧国」と言われていたバングラデシュですが、2021年までに中所得国化の実現を目標にしており、達成できる見込みとなっています。バングラデシュは2018年に「1人当たりの国民総所得(GNI)」「人的資源開発」「経済脆弱性指標」の3項目すべてにおいて後発開発途上国から卒業できる基準を達成しました(注11 P3)。貧困層を置き去りにせず、バランスの良い発展が望まれています。

ネパール



ネパールは人口2,930万人で、世界銀行では低所得国、OECD開発援助委員会からは後発開発途上国と分類されています(注6 P66)。総人口の6割強が農業に従事していますが、生産性が低いので収入も低くなっています。2015年の大震災では約9,000人の犠牲者が出て、経済成長が著しく落ち込みました(注12)。

ネパールには職業カーストがあります。憲法で廃止されているものの、未だにその慣習は続いています。また、「カマイヤ」と呼ばれる農業債務労働者もおり、奴隷のような生活を強いられています。下位の職業カーストにいる人々やカマイヤは、ネパール固有の貧困層です(注13 P4)。

パキスタン



人口は1.97億人。世界銀行とOECD開発援助委員会は、パキスタンを低中所得国に分類しています(注6 P68)。アフガニスタンと隣接しているということもあり、政情や治安が不安定なことが大きな問題です。所得格差や地域格差、ジェンダー格差などが大きく、不満を抱える原因となっています(注14)。

パキスタンは貧しい人々の間でも大きな格差が存在しています。貧困層とひとくくりにせず、貧困の深刻度の高さによってグループ分けをし、各層のニーズに応じた支援が求められています。また、家庭内でも格差が大きく、5歳未満の子どもの3割以上が、家庭内での栄養の不平等を経験していると報告されています(注5)。

スリランカ



スリランカの人口は2,144万人。世界銀行とOECD開発援助委員会は、スリランカを低中所得国に分類しています(注6 P64)。長く続いていた内戦が2009年に終結し、目覚ましい経済発展を遂げましたが、地域間格差や所得格差が拡大しつつあるという問題があります。

都市部と地方とでは、教育や医療へのアクセスに大きな開きがあります。紛争が激しかった北部と東部の開発は主にタミル人が住んでおり、まだまだ復興が必要な状態です。多数派を占めるシンハラ人との格差も課題となっています。2019年4月には同時多発テロも起き、観光産業に打撃を与えました。

スリランカにも職業カーストが存在しています。インドよりは緩やかなので、機会があれば他の職業に就くことができますが、なかなかその機会に恵まれないのが現状です。

モルディブ



人口44万人のモルディブは、大小1,190の環礁島で成り立っています。世界銀行もOECD開発援助委員会も、モルディブを高中所得国と分類しています(注6 P74)。GDPの4割を観光が占めていますが、外的要因に左右されることが多く不安定なため、他産業の育成が急務です。そして、モルディブの島々は気候変動による海面上昇など、自然災害に対して脆弱なことが問題となっています(注15 )。

モルディブは、女性への暴力が増加している問題もあります。政府によると、2008年には196件、女児に対する暴力が報告されました。2011年にはそれが261件に増加しました。ほかにも家庭内暴力、いじめ、セクシャルハラスメントの問題もあり、女性や子どもが困難な状況に置かれています(注16)。

ブータン



ブータンは人口81万人。世界銀行からは低中所得国と分類されており、OECD開発援助委員会からは後発開発途上国と分類されています(注6 P72)。ブータンは幸福度の高い国として有名です。ブータン政府は、国内総生産(GDP)よりは国民総幸福量(GNH)を重視しています。GNHの最大化を目指した国家開発計画を掲げ、援助依存からの脱却を目指しています(注17)。

2005年の国勢調査によると、ブータンの全人口のうち都市に住んでいるのは30%で、あとの70%は農村に住んでいることがわかりました。貧困人口の98%以上が農村で暮らしていることから、農村開発が貧困削減の鍵といわれています(注18 P3)。

ワールド・ビジョンの取り組み

南アジアの国々には、ジェンダー問題や紛争問題、自然災害問題、カーストなどの身分制度の問題、都市と地方の格差の問題などがあることがわかりました。そのような問題に対して、ワールド・ビジョンはどのようなプログラムを実施しているのでしょうか。

南アジアでのワールド・ビジョンの活動風景

チャイルド・スポンサーシップ

ワールド・ビジョンは、貧困問題を解決するためにチャイルド・スポンサーシップを通した支援活動を実施しています。南アジアでは、インドスリランカネパールバングラデシュで、地域のニーズに沿ったプログラムを実施しています。

チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが健やかに成長できる持続可能な環境を整えることを目指しています。子どもが教育を受ける権利や、安全に暮らす権利が守られるように、支援地域の人々とともに水衛生保健、栄養教育、生計向上等に取り組んでいます。

また、チャイルド・スポンサーシップを通して開発援助活動を実施し、活動の成果を地域の人々自身が将来にわたって維持し、発展させるために人材や住民組織の育成にも力を入れています。

政府・国連等との連携、募金による支援

ワールド・ビジョンは、日本政府(外務省)や国際協力機構(JICA)、国連機関などとも連携し、貧困に直面している世界の子どもたちのために支援活動をしています。

日本政府や国連機関と連携等による資金の活用にあたっては、事業総費用の一部をNGO側も拠出する必要があります。ワールド・ビジョンは皆さまの募金と日本政府や国連機関等による資金を合わせて、様々な事業を実施し、大きな効果を上げています。

南アジアでは、外務省の「日本NGO連携無償資金協力」と連携して、バングラデシュで「コミュニティと取り組む水・衛生環境改善事業」を実施しました。ネパールでは「学校・コミュニティ防災事業」を実施中です。また、JICAの「草の根技術協力事業」と連携して「スリランカ国キリノッチ県における小規模畜産農家の家畜生産性向上プロジェクト」も実施しました。

皆さまの募金は、政府や国連機関等との連携事業を通して、子どもたちのために様々な方法で役立てられています。難民支援のため、危機にある子どもたちのため、緊急人道支援のためなど、困難に直面している子どもに希望を届ける支援活動を行うことができます。例年11月ごろからは、栄養不良の子どもの命を守り将来の食糧を届ける、クリスマス募金のご案内をしています。

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