夢を叶えたチャイルド~ベトナムのタンさん~

逆境を力に:ベトナムのタンさん

明るく話す現在のタンさん明るく話す現在タンさん

にこやかに笑う青年。現在ユーチューバーとして活躍する彼の名はタンさんです。この明るい笑顔からは想像がつかないほど大きな困難を乗り越えてきたタンさん。逆境に直面する彼と彼の家族を支えたのは、彼自身の強さとチャイルド・スポンサーシップを通した日本からの支援でした。

思いがけぬ事故:昏睡状態に

モン家の長男として、ディエンビエン省のトアンザオ郡に生まれたタンさん。 家計は厳しく、両親は日の出から日が暮れるまで畑で働く日々でしたが、頭が良く、弟を大切にするタンさんの存在が大きな誇りでした。

タンさんはチャイルド・スポンサーシップの支援を受け始めました。しかし、そのすぐ後、この貧しくも幸せな家庭を困難が襲います。

8歳のタンさんは、学校が終わった後、木の実を採るために木登りをしていました。高いところに手を伸ばそうとした矢先、滑ってしまい、先の鋭い枝が左目に刺さってしまったのです。地域の医療センターで懸命な応急処置が施されるも、傷は腫れ上がるばかりで、数日後、彼の目は見えなくなり、昏睡状態となってしまいました。

あたたかな思いやりとサポート:一命をとりとめる

タンさんの状況を知ったワールド・ビジョンのスタッフは、すぐに駆けつけ、彼を病院に連れていくよう、両親の説得を試みます。しかし、何日も目を覚まさない息子に、悪霊がとりついていると感じた両親は、除霊の儀式が必要だと主張しました。

スタッフは当時を振り返ります。「彼の状況は深刻で、とても心配でした。私自身も子どもを持つ母親で、彼の両親がどれほど彼のことを愛しているかはよくわかっていました。そこで、彼らの意思を尊重するために、儀式を続けながら、ワールド・ビジョンが治療費を出して病院に連れていくことを提案しました」

儀式を行ってもタンさんは一向に目を覚まさず、スタッフの必死の説得により、首都ハノイにある病院に連れていくことになりました。そして、左眼奥に一片の枝が残り、神経感染症を起こしていることが判明しました。懸命な手術と集中治療室での何カ月にもわたる治療のおかげで、一命をとりとめ、右目の視力は回復しましたが、後遺症でタンさんの身体には麻痺が残りました。

誰も取り残さない:希望の光が扉を開ける

タンさんは、回復のために長期にわたる治療が必要だと、医者から告げられました。お父さんは、 タンさんが家の中を歩き回れるように、竹竿でリハビリ用の棒を作りました。 そして、2年をかけて、徐々に彼は自分の力で動くことができるようになりました。

さらに、タンさんの前向きさはここで留まらず、事故が起きる前のように友達と遊んだり勉強をしたりしたいと願いました。毎日家で学校から兄弟が帰宅するのを待ち続けていた彼は、ワールド・ビジョンのスタッフに「学校に戻りたい。歩けるようになって、両親の仕事を手伝いたい。どうか僕を助けてください」と懇願します。しかし、当時、タンさんの暮らす地域には、特別支援学級がありませんでした。彼の両親がコミュニティの学校に相談しましたが、そこで学ぶことは「とても難しい」と判断されてしまいました。

タンさんとワールド・ビジョン・スタッフタンさんとワールド・ビジョン・スタッフ

ベトナムでは、障害を持つ子どもの43%が、教育から社会参加に至るまで、複数の障壁を経験しています。障害のある子どものうち、学校に通うことができるのは10人に1人です(UNICEF、2022年)。タンさんのように経済的に余裕のない子どもたちにとって、この困難はより大きくのしかかり、学校に戻りたいという彼の願いは、遠い夢となっていました。

その頃、ワールド・ビジョン・ベトナムは、障害を持つ子どもの教育のための啓発活動を行っていました。そして、その活動が契機となり、自治体や学校の協力を得て、タンさんは学校に戻れることが決まりました。 もちろん、右手足の機能を失くしてしまった彼にとって、3年間のブランクの後、学びなおすことは決して簡単ではありません。それでも、タンさんは希望を捨てることはありませんでした。

事故から3年後、学校へ戻ることができたタンさん事故から3年後、学校へ戻ることができたタンさん

明るい未来に向けて:YouTubeチャンネルと農業をやりたい!

あの運命的な出来事から10年の月日が経った今、18歳になったタンさんは、特別支援学校に通う高校1年生です。 寮生活を送り、週末にしか家に帰ることはありませんが、彼の根気強さにより、簡単な家事を自分の力でできるようになっています。

タンさんはYouTubeチャンネルを作り、モン語の歌や学校生活について発信しています。 現在、数百人の登録者がいて、新しいマイクを手に入れたというタンさん。「ベトナムで1番貧しいユーチューバーだ」と笑いながら話します。

さらに、「YouTubeチャンネルの他に、ウサギを育てているんだ。上手くいきそうだから、高校を卒業したら、弟とウサギ農園を始めたい」と熱く語ってくれました。タンさんは、困難を乗り越え、明るい未来に向けて歩み出しています。

家族のような存在となったタンさんとワールド・ビジョン・スタッフ家族のような存在となったタンさんと
ワールド・ビジョン・スタッフ

現地のワールド・ビジョン・スタッフにとって、タンさんは「家族のような存在」だといいます。ワールド・ビジョンは今でもタンさんのもとを定期的に訪れ、彼と彼の家族を支えています。また、自治体とも協力して、すべての人、特に最も弱い立場にある子どもたちに教育の機会が与えられるよう働きかけています。

タンさんは、ワールド・ビジョンの支援によって人生が変わった20万人以上のベトナムに暮らす子どもの一人です。経済、教育、医療における機会の格差をなくすために取り組んできた結果、子どもたちは潜在能力を発揮し、人生を最大限に楽しむことができるようになっています。

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タンさんが車椅子でも移動できるように、ワールド・ビジョンとコミュニティの支援で舗装された歩道タンさんが車椅子でも移動できるように、ワールド・
ビジョンとコミュニティの支援で舗装された歩道

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