SDGs目標8「働きがいも 経済成長も」の取り組みやできることを解説

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標です。内容はさまざまで、私たちがより長く安心して暮らせる社会を実現するために17項目の目標と169のターゲットが掲げられています。

その中で8つ目の目標が、「働きがいも 経済成長も」というものです。この目標は世界中のすべての人に生産的でやりがいのある人間らしい仕事を提供し、社会の全員で経済成長を実現していこうという取り組みです。

そこで本記事では、そんなSDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」の現状や、世界や日本における取り組みについて解説していきます。経済や雇用の問題に対して、私たちにできることを、一緒に考えていきましょう。

SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」のターゲット

信号待ちのドライバーにキャンディを売るホンジュラスの子ども
信号待ちのドライバーにキャンディを売るホンジュラスの子ども

SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」の内容は、以下のとおりです。

分類 ターゲット
8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。

(注1)



目標8「働きがいも 経済成長も」は、各国それぞれが積極的に雇用を創出し、経済成長していくことを目標としています。ただし、ただ働く人を増やして経済を回すだけではありません。

すべての人々が平等に、そしてやりがいを感じられるような人間らしい仕事を提供することも大きな目標の一つです。例えば雇用において昨今の問題となっている「児童労働」や「人身売買」、「強制労働」。これらは働き手の人権や尊厳を無視した労働形態です。

こうした労働を世界からなくし、年齢や性別、地域の分け隔てなくすべての人々が生き生きと働ける社会を目指すのがSDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」の特長です。

SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」の現状

縫製工場で働くバングラデシュの子ども
縫製工場で働くバングラデシュの子ども

では現在、SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」はどの程度達成されているのでしょうか。世界の現状や課題を見ていきましょう。

世界の失業者は約1億8,800万人にものぼる

国際労働機関(ILO)の発表によれば、2019年時点で働く年齢に達している人は世界に57億人いると推計されています。しかしその中で、雇用されているのは約33億人とあります。つまり労働人口の約57%ほどしか、自身の労働力に見合った労働をしていないのです(注2 p.18,19 )。

ではそのほかの人はというと、約23億人(全体の39%相当)は何らかの事情で労働できない状況にあります。そして残りの約4億7,300万人(全体の4%相当)が十分に労働力を活かせていない人々です。そのなかでも、約1億8,800万人は、完全な無職であることが分かりました(注2 p.18,19)。

なお、労働力を活かせていない状況にある人々のうち、約1億1,900万人は積極的に働く意欲のある人で構成されています(注2 p.18,19)。つまり働く意欲を持っているにもかかわらず、適切な仕事がないといった理由で、働いていないということです。

さらに仕事に就いている人の中でも、うち約1億6,500万人は時間に見合う十分な賃金を得ていないとあります(注2 p.18,19)。このように、世界には働きたくても働けない人や働いても十分な成果が得られていない人が数多くいるのです。

SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」を達成するには、こうした人々が平等に労働市場へアクセスできるようにしたうえで、労働に見合う賃金を得られる体制を作らなければなりません。

世界には大きな経済格差がある

世界では、国や地域ごとの経済格差も大きな課題となっています。例えば2019 年には、世界の超富裕層26人が世界人口の下位約38億人の総資産と同額の富を保有しているという報告がありました(注3 p.283)。

つまり、極端に資産を多くもっている人とそうでない人がいるということです。この格差は地域ごとに顕著です。インドやアフリカには貧困層が集中しており、中国やアメリカ、ヨーロッパ諸国に富裕層が集中しています(注3 p.284)。こうした格差は徐々に縮小されているものの、大きな問題です。

さらに、子どもにおける貧困問題は解決していない、という現状もあります。サハラ以南のアフリカでは、極度の貧困状態にある子どもの数が2013年から2017年にかけて、6,400万人も増加しました(注4)。

また国連児童基金(ユニセフ/UNICEF)の統計によれば推定6人に1人、世界で3億5,600万人もの子どもが極度の貧困状態にあるとされています。そのうち70%は、世帯主が農業に従事しているという統計もあります(注4)。こうした子どもたちを救うためにも、国や地域を超えた雇用創出や支援活動が必要です。

10人に1人の子どもが児童労働に従事している

2021年時点のUNICEFの統計によると、世界では10人に1人の割合で児童労働に従事している子どもがいるとされています(注5)。人数にすると1億6,000 万人もの子どもが、児童労働に従事しているのです。

また、健康や安全に害を与える可能性のある、危険な仕事に従事する5歳から17歳までの子どもは、2016 年以降650万人から7,900万人に増えています(注5)。こうした子どもたちの身体や精神の安全を守るためにも、大人だけで経済を回せる雇用の創出や社会保障制度の確立は急務といえます。

SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」への取り組み事例

鉱山で宝石を求めて硬い岩を割っている子ども
鉱山で宝石を求めて硬い岩を割っている子ども

ではSDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」を達成すべく、日本や世界ではどういった取り組みを実施しているのでしょうか。具体的な事例を見ていきましょう。

日本の取り組み

日本は先進国の一つですが、いまだに男女間の雇用格差が課題としてあります。そこで政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針 2021」を策定。女性人材の育成や支援、女性の登用目標達成、女性に対する暴力の根絶など、女性活躍・男女共同参画の取組を推進するとしています(注6 p.4)。

また、多くの人がより自分らしく働けるようにと、昨今では政府が「働き方改革」を提唱。残業時間の短縮や生き生きと働ける職場の実現、柔軟な雇用の推進などを実施しています(注7)。

さらに地域が抱える人口減少や高齢化、産業空洞化などの課題に対しては、デジタルの力を活用することによって解決していくとしています。例えば自動配送、ドローン宅配、遠隔医療、スマート農業などといったサービスの実装が目標です(注6 p.5)。

世界の取り組み

世界では経済格差や新型コロナウイルス感染症、紛争による情勢不安など、経済に対してさまざまな課題があります。これらに対して国連や各国政府、世界銀行といった組織が手を取り、あらゆる政策や支援策を実施しています。

では取り組みの一例を組織レベルで見てみましょう。例えば難民に対する支援を行う組織、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、障害のある難民も取りこぼされることがないように幅広い支援を実施しています。具体的には障害者を含む弱い立場にある人々に対して、情報やサービスを提供するコミュニティセンターを拡充(注8)。

また、障害のある子どもたちが良い環境でリハビリや教育を受けることができるよう、キャンプ内のリハビリテーションセンターと幼児教育センターで支援を行っています(注8)。これにより、子どもたちの将来的な就労をサポートしているのです。

ワールド・ビジョンの取り組み

ワールド・ビジョンは世界各国で経済・食料・衛生面のあらゆる支援活動を行う国際NGO団体です。貧しい地域の人々に食料や物資の直接的な支援をするほか、その土地の人々が支援を受けなくても生活していけるよう、課題の根本的な解決にも尽力しています。

例えばアフリカのマラウイにあるクーユ地域では、地域の 95%の世帯が農業から収入を得ています。しかし、単作により土壌が疲弊した上、肥料を買う資金や農業用具の不足のために不作が続いていました。

そこで支援を通して、堆肥の使用、環境にやさしい農法などの農法改善、農作物の多様化、貯蓄・融資グループの設立などを実施。結果的に、農作物の種類と収穫量を増加させることができました。

また、ヤギや乳牛の支援により、子どもたちは栄養価の高いミルクを飲めるようになり、栄養状態が改善。さらに子ヤギや子牛を売り、子どもたちの学用品や医薬品を買えるようにもなっています。農業協同組合も設立し、農家は共同で価格交渉を行い、より有利な条件で販売ができるようになりました。

このようにワールド・ビジョンではその地域に根差し、長期的な目線で根本的な課題解決に取り組んでいます。

私たちにできることから取り組もう

農作業に従事するエルサルバドルの子ども
農作業に従事するエルサルバドルの子ども

ワールド・ビジョンではSDGsを達成し、世界中の子どもたちに明るい未来を届けられるよう、さまざまな支援に取り組んでいます。私たちの活動に関心を持っていただけた場合は、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。

1日あたり150円、月4,500円のご支援で、子どもを危険な労働や貧困から守ることが可能です。また、チャイルド・スポンサーシップでは支援を受けた子どもから直接手紙が届くため、支援した実感や喜びも感じていただけるはずです。

皆さまからのご支援で、少しずつ世界が変わっていきます。私たちとともに、できることから取り組んでいきましょう。

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