「すべての人に健康と福祉を」とは、2015年9月に国連サミットで採択されたSDGsにおける目標のひとつです。SGDsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための目標のことです。
現在、世界では、健康や福祉分野においてさまざまな課題があります。そこで本記事では、すべての人に健康と福祉を提供するための取り組みについて解説します。どのような課題があるのかも踏まえて、私たちに何ができるのか一緒に考えていきましょう。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、世界中の人が健康で必要な支援や保障を受けて暮らせることを目指す目標です。達成にあたり、下記13項目のターゲットが設定されています。
ターゲット | |
3.1 | 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。 |
3.2 | すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。 |
3.3 | 2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。 |
3.4 | 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。 |
3.5 | 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。 |
3.6 | 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 |
3.7 | 2030年までに、家族計画、情報・教育および性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。 |
3.8 | すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセスおよび安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 |
3.9 | 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質および土壌の汚染による死亡および疾病の件数を大幅に減少させる。 |
3.a | すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。 |
3.b | 主に開発途上国に影響をおよぼす感染性および非感染性疾患のワクチンおよび医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)および公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護および、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。 |
3.c | 開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政および保健人材の採用、能力開発・訓練および定着を大幅に拡大させる。 |
3.d | すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和および危険因子管理のための能力を強化する。 |
(注1)
保健や福祉制度は、国によってさまざまです。例えば、医療サービスが十分に整っておらず母子の死亡率が高い国もあれば、生活習慣病や薬物乱用、環境汚染が問題となっている国もあります。そのため、それぞれの国や地域が課題を見つけ、国際社会と連携を取りながら状況を改善していくことが重要です。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成するために、世界や日本ではどういった取り組みが行われているのか、見ていきましょう。
例えば2017年には、母子健康法が改正。妊娠期から子育て期にわたる継続的な支援提供を目的とし、地域ごとに「子育て世代包括支援センター」を設置することが法制化されました(注5 p.4)。また政府は9月1〜30日までを「健康増進普及月間」とし、健康に関する広報やキャンペーンを実施しています(注6)。
さらに企業や団体と協賛し「SMART LIFE PROJECT」というプロジェクトを発足。法律や制度を整えるだけでなく、一般市民向けの広報活動も積極的に実施(注7)。また日本国内に対してだけではなく、国際通貨基金(IMF)による大規模災害抑止・救済基金への拠出や、開発途上国への支援といった対外的な取り組みも行っています。
政府だけではなく、多くの日本企業でもCSRの一環として目標3「すべての人に健康と福祉を」への取り組みが実施されています。例えば、ある食品会社では、独自研究に基づいた機能性素材を活用した商品やサービスを積極的に提供。消費者がより健康になれるような商品づくりに努めています。
また「健康を促進する食べ方」を広めるためにレシピを公開したり、セミナーや料理教室を開催している企業もあります(注8)。ほかにも国際NGOと連携して海外の母子健康改善プロジェクトを推進する企業や、売上の一部を寄付金に充てている企業などがあります。
ワールド・ビジョンでは、開発途上国において安全な水や衛生環境の確保を支援しています。例えば2004年からは15年間にわたり、ウガンダ共和国のナラウェヨ・キシータ地域において実施したチャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラムでも、水・衛生の支援を行いました。
支援の結果、安全できれいな水が飲める世帯が増え、地域全体の井戸の数は2006〜2013年の間で約2倍の101基に。2015年時点では、地域の91.6%もの人が安全できれいな水にアクセスできるようになりました。きれいな水が手に入るようになっただけでも、あらゆる病気のリスクが大きく減ります。
ワールド・ビジョンでは、開発途上国における子どもたちの栄養状態を改善する活動にも力を入れています。例えば、2007年からはコンゴ共和国のカンボブ地域で進めているチャイルド・スポンサーシップによる支援プログラムでも、栄養改善に力を入れています。
ガンボブ地域では食料不足に悩み、貧血気味の子どもたちが多くいました。そこで地域の住民にに、市場で売れる農作物の種や土地を提供。栽培方法も指導することで、多くの人々が収入を得られるようになっただけではなく、新鮮な野菜を子どもたちに食べさせられるようになりました。
ワールド・ビジョンでは感染症や災害といった緊急事態に対する支援も実施しています。例えば、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した際は、以前から実施していた開発プログラムの支援地域内で感染症対策を実施。さらに医療体制がぜい弱な開発途上国や難民・避難民の多い国への支援を行いました。
具体的にはマスク、医療器具といった備品の提供や、地域ヘルスワーカーを通じた感染予防策の促進などを行いました。2020年12月までには、5846万5957人もの人々に支援を届けることができました。
SDGsでは不平等の解消や環境保護などが目標とされています。しかしこうした目標を達成するには、まず世界中の人々が健康で安心して暮らせるような環境を実現することが先決です。
私たちワールド・ビジョンはとくに立場の弱い子どもたちに対して、皆さまからの寄付を募り、支援を行っています。皆さまのご支援によって命が守られ、未来を拓くことができた子どもたちがたくさんいます。
このように、皆さまの支援で世界を変えることが可能です。私たちの活動に共感していただけましたら、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。
注1 農林水産省:SDGsの目標とターゲット
注2 ユニセフ:Levels and trends in child mortality 2021
注3 公益財団法人日本WHO協会:WHOは何をしているの
注4 外務省:平和と健康のための基本方針の決定
注5 厚生労働省:厚生労働省における妊娠・出産、産後の支援の取組
注6 厚生労働省:令和4年度健康増進普及月間について
注7 スマート・ライフ・プロジェクト:スマート・ライフ・プロジェクト
注8 農林水産省:17の目標と食品産業とのつながり