SDGs目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」の現状を解説

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標です。17項目の目標と169のターゲットで構成されており、私たちがより長く安心して暮らせる未来を作ることを目的としています。

その中の7つ目の目標が、「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」です。この目標は、私たちの生活に欠かせないエネルギーをよりクリーンに、そして世界中の人々が等しく使えるようにしようというものです。

本記事では、そんなSDGsの目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」の詳しい内容や、世界における現状、取り組みについて解説していきます。私たちに一体何ができるのか、一緒に考えていきましょう。

SDGsの目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」の内容

レソトで暮らす子ども
レソトで暮らす子ども

SDGsの目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」の内容は、以下のとおりです。

7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

(注1)


1つ目の目標では、2030年までに世界中の人が安く安定したエネルギーを使えるようにすることが掲げられています。2つ目以降では、より環境負荷の低い再生可能エネルギーの技術開発や普及が目標とされているのが特徴です。

目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」に対する世界の現状

ニジェールで暮らす人々
ニジェールで暮らす人々

では、目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」に対する世界の現状を見ていきましょう。

電気を使えない人は世界に約7.6億人

世界銀行の発表によれば、2021年時点で電気を使えない人は世界におよそ7億5900万人もいることが分かっています(注2)。2010年の12億人と比べると10年間で大幅に減っており、全世界の9割以上の人が電気を使えるようになりました。しかし、電化のペースは近年鈍化しているとのこと(注3)。

特にアフリカは、世界で最も電化されていない地域であり、2020年時点で5億6800万人が電気にアクセスできていません。そのうえ人口は増加傾向にあるため、電力サービスの普及が追いつかないという現状があります。その結果、サハラ以南のアフリカで電気を使えない人の割合は、2018年の71%から2020年には77%に跳ね上がってしまいました(注3)。

世界のほとんどの地域では電気を使えない人の割合が減少しているなか、こうした地域があるのも事実です。また2020年前後では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やロシアのウクライナ侵攻がエネルギー価格を高騰させ、より開発途上国へのエネルギー供給が鈍化している傾向があります。

再生可能エネルギーの割合は全体の17.7%

SDGsの目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」では、再生可能エネルギーの普及を目標としています。再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱といった自然界に常に存在するエネルギーのこと。石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは違い、枯渇する心配がなく、CO2を排出しないといったメリットがあります(注4)。

しかしそんな再生可能エネルギーの消費量は、2019年時点でわずか17.7%(注2)。エネルギー全体の2割にも満たないのが現状です。2010年から2019年までの9年間で以前の25%ほど増加しているものの、まだまだ普及しているとはいえません。

例えば日本の生活においても、ガスや石油式の家電はいまだに主流です。太陽光を取り入れた住宅設備は金額が高いこともあり、導入できない家庭も多いでしょう。

汚染された大気が人体に影響する場合も

石油やガスを燃焼させると、CO2だけでなく「硫黄酸化物」や「窒素酸化物」といったあらゆる有害物質が大気中に排出されます。こうした物質は大気を汚染し、人体に悪影響をおよぼすこともあるのです。

例えば大気中の汚染物質が強い太陽光を受けて変化し、光化学オキシダントという物質に変化すると大気に白いもやがかかったようになります。これが光化学スモッグです。人によっては目がちかちかしたり、喉が痛くなったりといった症状が出ることも。

ほかにも大気汚染は酸性雨やPM2.5、黄砂といったあらゆるものの原因になります。また人だけでなく、自然下に生きる動物や植物、農作物に悪影響をおよぼすことも懸念されます(注5)。


目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」達成への取り組み

ケニアで暮らす子どもたち
ケニアで暮らす子どもたち

では日本や世界では、 目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」の達成に向けてどういった取り組みを行っているのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

日本の取り組み

日本でも、化石エネルギー中心の社会から徐々に炭素中立型(カーボンニュートラル)へとシフトしていくための取り組みが行われています。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量をさまざまな手段で相殺し、排出量を実質ゼロとすることです。

政府の定める「エネルギー基本計画」では、2030年までに温室効果ガスを46%削減することを目標に掲げています。具体的な取り組みとしては、非化石電源の導入拡大や技術開発、インフラの整備などを実施。

私たちの生活に身近なところでいえば、エコカー減税や省エネ家電への補助金などが挙げられます。電力自由化に伴う、電気の安価かつ安定した供給の促進も同様です。また政府は東日本大震災で甚大な被害を受けた福島を、クリーンエネルギーの導入モデルケースとすることを目指しています。

そのためほかの都市に先駆けて、福島を復興しつつカーボンニュートラルな都市作りを目指しているのも特徴です(注6)。ほかの先進諸国と連携も取りつつ、今後もよりクリーンなエネルギーの普及に向けて取り組んでいくでしょう。

世界の取り組み

世界では、1974年11月にIEA(国際エネルギー機関)が設立されました。IEAとは石油を中心としたエネルギーについて、消費国間でグローバルな協力を行う国際的な機関です。日本やアメリカを含む30カ国が加盟しています。

加盟国内には石油の備蓄を義務化。さらに供給が不安定になった場合は、各国が連携して対応しています(注7)。またIEAに限らず、国連加盟国は各国が協力して送配電ネットワークを強化、省エネルギーの推進活動を進めています。

特に電気の普及率が低い開発途上国に対しては、積極的に支援を実施。直接的な支援に限らず、資源分野の人材育成や人的ネットワークの構築などにも力を入れています(注8)。

ワールド・ビジョンの取り組み

国際NGOワールド・ビジョンでは、開発途上国の人々が安定したエネルギーを利用できるよう、さまざまな支援を実施しています。例えば2018年からは、パナソニック株式会社と合同でケニアでの「無電化地域ソリューションプロジェクト」を実施しました。

地区内の小学校と診療所に、それぞれ太陽光発電・蓄電システムを整備しました。エネルギー源を確保したことで、農作物に撒く水の確保や養鶏といった、現地における収入の創出にも成功。また学校に通う子どもの家庭150世帯には、ソーラーランタンを支援しました。薪や灯油の代わりにソーラーランタンを使用することで、人々の健康の改善や経済的負担の軽減だけでなく、夜も自宅で勉強できるようになることから子どもの学力向上が期待できます。

このプロジェクトのほかにも、水を媒介とする病気や死に悩まされていたアフガニスタンの地域に太陽光発電式の浄水システムを導入。現地の課題を解決した実績もあります。このようにワールド・ビジョンでは、地域のニーズに応じた形で支援を実施し、現地の人々が安定したエネルギーを安全に利用できるよう活動を続けています。

私たちにできることから取り組もう

ブラジルで暮らす子どもたち
ブラジルで暮らす子どもたち

世界にはいまだに、電気を使えない人や健康被害に懸念のあるエネルギーを使わざるを得ない人々が多いです。そういった人々のために、ワールド・ビジョンは日々世界各地で支援活動を進めています。

また、ワールド・ビジョンはエネルギー分野以外の支援も数多く実施しています。貧困や飢餓、教育問題などが例として挙げられます。世界中のさまざまな問題に対して向き合い、現地の課題やニーズに応じた支援を行っています。

私たちの活動に共感していただけましたら、ぜひ募金ページから支援をお願いいたします。どの分野・活動を支援するかは自由にお選びいただけるため、ご自身の関心にあうプロジェクトがあるかどうかご覧ください。

皆さまの支援で、救われる命があります。私たちと一緒に、より安全で健やかな未来を作っていきましょう。

参考資料

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