SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」の現状 | 取り組みを解説

SDGsとは、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標であり、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すことを目標としています。そしてSDGsに含まれる17項目の目標のうち10番目にあたるのが「人や国の不平等をなくそう」という目標です。

不平等と一言でいっても、その内容はさまざま。貧富や教育、ジェンダーの不平等など、あらゆる不平等が世界では問題となっています。そこで本記事では日本や世界におけるジェンダーの現状、および具体的に実践されている対策について紹介します。

日本においても、不平等がないとは言い切れません。現状を把握し、私たちにできることを一緒に考えていきましょう。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」とは

南スーダンで暮らす子ども
南スーダンで暮らす子ども

SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」は、各国内および各国間の不平等を是正することを目的としています。SDGsには17の目標をより具体的にした「ターゲット」が設けられています。目標10を達成するために掲げられたターゲットは以下の10項目です。

10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化および社会的、経済的及び政治的な包含を促進する
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する
10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)および海外直接投資を含む資金の流入を促進する
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する

(注1)

上記のとおり「人や国の不平等をなくそう」では、不平等により立場の弱い人や国を積極的に支援し、あらゆる点から平等な社会を作ることを目標としています。各国が同じ目標に向かって政策や社会制度を進めていくことで、あらゆる不平等が少しずつ解消されて行くでしょう。

また「人や国の不平等をなくそう」の目標達成には国家や世界レベルでの対策も重要ですが、私たち一人ひとりの当事者意識も非常に大切です。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」の現状

ケニアの学校に通う子どもたち
ケニアの学校に通う子どもたち

では、SDGs「人や国の不平等をなくそう」の背景には、どういった現状があるのでしょうか。世界と日本、それぞれにおける不平等の現状を見ていきましょう。

世界における人や国の不平等の現状

世界における不平等は、以下のとおりさまざまです。
  • 貧富の不平等
  • 教育の不平等
  • 性別の不平等
  • 貿易の不平等

国や地域によって、大きな問題となっている不平等の内容は異なります。まず貧富について見てみましょう。2017年の統計データによると、世界全体の資産の約33%は、世界の人口のうち、たった1%の富裕層が保有しているとあります(注2)。

また、世界全体の25%以下の資産を、最貧困層の40%で分け合っているのが現状です。さらに世界人口の半分を超える人々は、社会保障にアクセスできていません。そして、災害によって死亡する人の90%以上は、低所得国と中所得国に集中しています(注3)。

次に、教育格差や性別の格差も見てみましょう。世界では、6~17歳の子どもの6人に1人にあたる2億5,800万人が学校に通えていません(注4)。

さらに世界には性別による教育格差がある地域も存在しており、2018年時点で教育を受けられない6〜17歳の女の子は約1億3,200万人いるとされています。そのうち約5,200万人はサブサハラ以南のアフリカ、4,650万人は南アジアの女の子です(注5 p.5)。このように世界では大きな貧富の差や、人を取り巻く環境の不平等があるのです。

日本における不平等の現状

日本においても、不平等は他人事ではありません。例えば日本では、7人に1人が相対的貧困にあるとされています。相対的貧困とは、その国の等価可処分所得の中央値未満の収入しかない状態です。生活の最低水準が満たされていない「絶対的貧困」とは異なります。

日本の相対的貧困率は、G7の中でも2番目に高い割合です(注6)。また社会における所得分配の不平等さを表す指標である「ジニ係数」は、29歳以下の若年層と65歳以上の高齢者層において高い傾向が見られます(注7)。これは特に若年層と高齢者層が、ほかの年代よりも収入格差の影響を受けているということです。

また性別による不平等も問題となっています。世界経済フォーラムが2021年3月に発表したデータによると、日本のジェンダーギャップ指数は0.656であり、順位は156カ国中120位でした(注8)。これはASEAN諸国より低く、先進国の中でも最低レベルです。つまり日本では、まだまだ男女の平等も実現できていないということになります。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」への取り組み

栄養不良のためワールド・ビジョンが運営するクリニックに通うソマリアの子ども
栄養不良のためワールド・ビジョンが運営するクリニックに通うソマリアの子ども

さまざまな不平等に対して、世界や日本ではどのような取り組みをしているのか、見ていきましょう。

世界における不平等解決への取り組み

世界では国連が中心となり、あらゆる不平等解決に向けて取り組んでいます。例えば経済的な不平等を解消すべく、以下のような経済開発を推進している最中です(注9)。

  • 物各国からの拠出金による開発の推進
  • 農村部の極貧層を対象とした低利の貸付と無償資金援助
  • アフリカにおける開発の重視
  • 女性の経済的安全の向上を図るプログラムを支援
  • グローバル経済の「ソフト・インフラ」整備
  • 開発途上国の工業支援
  • 国連食糧農業機関(FAO)による飢餓対策
  • 国連貿易開発会議(UNCTAD)によるグローバルな貿易関係改善
  • 国際通貨基金(IMF)と世界銀行による経済改革の推進
  • 空運と海運の改善
  • 子ども支援の全世界的合意形成
  • スラムを人間にふさわしい居住地に変える
  • グローバル・ネットワークへのローカル・アクセスの提供
  • 国際電気通信連合(ITU)による電気通信の改善


プロジェクトやテーマごとにさまざまな国際機関が設立され、各国もそれに合わせて少しずつ社会制度や経済状況が改善されつつあります。またこのほかにも人種や性別による差別の撤廃など、あらゆる取り組みが進められています。

日本における不平等解決への取り組み

日本ではSDGs目標達成に向け、毎年「SDGsアクションプラン」という計画書が作成されています。SDGsアクションプラン2022によると不平等解消に向けて「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」という目標が掲げられています。このうち、性別の不平等に対する取り組みは以下のとおりです(注10 p.3〜p.5)。
  • 女性デジタル人材の育成
  • 「生理の貧困」への支援
  • 女性の登用目標達成
  • 女性に対する暴力の根絶
  • 女性活躍・男女共同参画の取り組みを推進
  • 2022年中に第6回 国際女性会議「WAW!」

また子どもの貧困といった不平等への取り組みも掲げられています。
  • 子どもの貧困対策の推進
  • 子ども中心の行政を確立するための新たな組織を2023年中に設置
  • 教育のデジタル・リモート化の促進世女性デジタル人材の育成

このように、日本ではジェンダーや貧困の不平等是正に力を入れています。また世界全体でもSDGs目標を達成すべく、途上国を含めた治療・ワクチン・診断の開発・製造・普及を包括的に支援するといった支援活動も行っています。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」に対するワールド・ビジョンの取り組み

安全な水に喜ぶガーナの子どもたち
安全な水に喜ぶガーナの子どもたち

ワールド・ビジョンでは、SDGs目標10の「人や国の不平等をなくそう」達成に向けて、数々の支援を実施しています。

開発援助活動

ワールド・ビジョンでは世界中の子どもたちが健やかに成長できるよう、以下の分野で開発援助活動を行っています。

  • 水衛生
  • 教育
  • 保健
  • 栄養
  • 生計向上

活動の主軸となるのは、チャイルド・スポンサーシップというプログラムです。1日あたり150円の継続的な寄付を募り、あらゆる不平等に、より弱い立場で苦しんでいる子どもたちの支援に活用します。

例えば村に井戸を作ることで、子どもたちに安全な水を届けるだけではなく、水くみの負担を軽減して学校へ通えるようにするなど、その地域で暮らす子どもにとって、必要な物資や支援を届けることができます。

ご支援者さまには、自分が支援しているチャイルドの成長と支援の成果を年に1度ご報告します。2021年度には、約5万人のチャイルド・スポンサーからのご支援を、21カ国の48の地域に届けることができました

緊急人道支援

ワールド・ビジョンでは紛争や災害の被害を受けた子どもたちを守るため、以下のポイントに留意して緊急人道支援を行っています。
  • 命を守る
  • 日常を取り戻す
  • 未来を築く

近年では新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ワールド・ビジョン史上最大規模での緊急対応を実施。2020年度は世界70カ国以上で約5,100万人に緊急支援を届けました。また紛争のあったウクライナでも、故郷を逃れた人々に、ウクライナ国内外で緊急支援を展開しました。

食料や石けん、歯ブラシ、乳幼児用のおしりふきといった物資を届けるだけではなく、子どもたちの心の傷をいやすケアも実施しました。また子どもたちが避難先でも教育を受けられるよう、教材セットの提供や学習環境の整備なども行っています。

アドボカシー活動

ワールド・ビジョンでは直接支援を行うだけではなく、子どもたちにとって世界が安全で平和な場所になることを目指した国際レベルでの啓発活動「アドボカシー(政策提言)」も行っています。

具体的には一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)が、SDGs目標達成に向けた現状と課題を分析し、日本政府への提言をまとめた「スポットライトレポート」の作成にも携わりました。

また国際機関や一般の方に対しても、さまざまなイベントやプログラムを開催して情報の発信を積極的に行っています。

私たちにできることから始めよう

ブラジルで暮らす子どもたち
ブラジルで暮らす子どもたち

現在、世界各国では不平等の解消に向けてさまざまな取り組みが行われています。しかし、それでもまだ貧困や紛争、災害の中で命の危険にさらされている子どもたちが多くいるのが現状です。

私たちワールド・ビジョンは、こうした立場の弱い子どもたちに対して皆さまからの寄付を募り、支援を行っています。皆さまのご支援によって未来を拓くことができた子どもたちがたくさんいます。支援の結果、多くのコミュニティが自分たちで生活を向上させ、負の連鎖を断ち切ることができています。

このように、一人ひとりの支援で世界を変えることが可能です。私たちの活動に共感していただけましたら、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。

今あなたにできること、一日あたり150円で子どもたちに希望を。

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子どもたちの未来を取り戻す活動に、あなたも参加しませんか。

「世界の子どもたちのことを、1人でも多くの方に知ってほしい」という願いを込めてメールマガジン、LINEメッセージをお届けしています。知って、あなたにできる新しい"何か"を見つけてください。

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参考資料

注1 農林水産省:SDGsの目標とターゲット外部リンク
注2 ユニセフ:10.人や国の不平等をなくそう外部リンク
注3 国連広報センター:SDGs報告 2019外部リンク
注4 ワールド・ビジョン:教育と子どもたち
注5 UNESCO 2018:子どもの5人に1人は学校に通えていない P5pdfアイコン
注6 厚生労働白書:国際比較からみた日本社会の特徴 P105pdfアイコン
注7 厚生労働省:図表1-8-10 所得再分配によるジニ係数の改善(2017年・年齢階級別)外部リンク
注8 男女共同参画局:「共同参画」2021年5月号外部リンク
注9 国際連合広報センター:経済開発外部リンク
注10 SDGs推進本部:SDGsアクションプラン2022 P3~5pdfアイコン

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