法律監修:湊総合法律事務所 弁護士 湊 信明
弁護士 太田善大
「人生100年時代」の現代、仕事をリタイアした後も長く社会と関わり続けたいと考える方が増えてきました。そのような中、「最期の社会貢献」として注目が高まっているのが、遺言によってご自身の遺産を第三者に無償譲渡する「遺贈」や、相続人による相続した遺産の寄付です。ワールド・ビジョン・ジャパンにおいても近年、こうしたご寄付のお申し出をいただく機会が増えています。
近年関心が高まっている遺贈、相続した遺産の寄付について、ご寄付をいただく団体の立場として、4回のシリーズにわたって考えます。第1回目のこの記事では、日本国内での現状、意識についてご紹介します。
日本でも近年、こうした寄付への注目や関心が高まっています。ここ数年で「終活」という考え方が定着し、遺言の準備をする人が増加していることに加え、寄付による社会貢献意識の高まりや、相続人不在により行き場のない財産が生まれていることなどが関係していると考えられます。特定非営利活動法人国境なき医師団が2018年に実施した調査(注1)では、「遺贈」の認知度は全体で64.4%、70代では8割以上にのぼります。また、「遺贈してもよい」までを含めた遺贈の意向度は全体で49.8%と、約半数におよびます。
一方で、実際の寄付件数/寄付額は決して多いと言えません。日本の相続市場全体の規模は拡大傾向にあり、現在の世代間資産移転額は約80兆円と推計(注2)され、2030年には1,000兆円にものぼると言われます。しかし、相続税非課税の特例適用実績(平成25年分。主税局調べ)によると、公益法人などに遺贈・寄付された相続財産は約300億円であり、2016年の日本国内での個人寄付総額7,756億円(注3)のわずか0.5%にとどまります。つまり、社会貢献をしている団体への遺贈に関心はあっても、実際の寄付にはつながっていない場合が多いと考えられます。
それでは、上記のようなギャップが生まれるのには、どのような要因があるのでしょうか?
前掲の調査では、遺贈寄付について不安に思うこととして、「寄付した遺産の使い道(どのようなことに役立てるか分からず不安、など)」が28.1%で最も高く、その他「寄付する団体選び(詐欺にあわないか不安、など)」「寄付する団体の活動内容」「家族に迷惑をかけないか」などが上位にあげられました。これらの不安は、相続した遺産からの寄付にも共通して当てはまるものと考えられます。思いはあっても、信頼できる団体を見つけられない、具体的な手続きが分からない、家族の理解を得られるのか不安である等から実現していない場合が多いのかも知れません。
すでに述べたように、遺産を寄付する方法は大きく分けて「遺贈」と「相続した遺産の寄付」の二つです。
①「遺贈」は、遺言によって遺産の一部またはすべてを特定の個人や団体に無償で譲渡することをいいます。相続人か相続人以外の第三者かに関わらず、遺産を誰に遺すかについて亡くなった人の意思を尊重するための制度といえます。
②「相続した遺産の寄付」とは、遺産を相続した故人のご家族などがその一部を寄付するケースです。具体的な手続きは、相続した方自身が行います。故人にゆかりのある寄付先や使途を選ぶ方が多いようです。
近年では、法改正によって自筆証書遺言の保管制度が導入され、遺産の使途について本人の意思を残す仕組みが拡充されつつあります。このことにより、相続人以外に遺産を遺しやすくなり、社会貢献としての遺贈のハードルも下がりつつあります。
遺贈・相続した遺産からのご寄付は、お一人の方の人生の証。ワールド・ビジョン・ジャパンでは十数年にわたり、これらのご寄付をお受けしています。
あなたご自身や、あなたの大切な方の財産を、子どもたちのより良い未来に役立てるために、ぜひワールド・ビジョン・ジャパンにお手伝いをさせていただけませんか?弁護士などの専門家や関係機関と連携しながら、担当スタッフが伴走いたします。遺贈寄付についてのパンフレットもご用意しています。ご相談はすべて無料です。まずはお気軽にお問合せください。
ワールド・ビジョン・ジャパン 法人・特別ドナー課
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次の記事では、遺贈の仕組みや注意点について詳しくご紹介します。
※この記事は、2020年8月に作成しております。諸法令は適宜改正される場合がありますので、最新の情報をご確認ください。
※1 特定非営利活動法人国境なき医師団日本:「遺贈」に関する意識調査2018
※2 北村行伸:世代間資産移転の実態と政策課題
※3 日本ファンドレイジグ協会:寄付白書2017