監修:湊総合法律事務所 弁護士 湊 信明
弁護士 太田善大
近年の寄付による社会貢献意識の高まりや、相続税対策を背景に、相続財産の一部を寄付するケースが増えつつあります。大切なご家族から相続した財産を、世界の子どもたちのために役立てたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。故人の遺志に沿うために、相続財産からの寄付(以下、相続財産寄付)というかたちで子どもたちを支援する方法があります。
遺贈や相続財産寄付について、ご寄付をいただく団体の立場として考えるこのシリーズ。第1回目の記事では日本国内での意識や現状、第2回目の記事では遺贈寄付の特徴や注意点をご紹介しました。第3回目となる今回は、相続財産寄付について解説するとともに、貴重な寄付がどのような支援活動に活かされているか、実例をまじえてご紹介します。
まず、相続財産の意味や内容と、実際にどのような形で相続財産寄付が行われているのかを見てみましょう。
相続財産について知るために、まずは相続とは何かについて見てみましょう。相続について、国税庁は次のように(注1 P.108)記しています。
政府広報オンライン(注2)では、もう少しわかりやすく述べられています。
つまり相続とは、亡くなった人から財産上の権利義務を引き継ぐことです。引き継がれる財産には、債務などのマイナスの財産も含まれています。このように承継される財産を、相続財産といいます。
民法と相続税法で相続財産の範囲に違いがあります。例えば、被相続人の生命保険金を相続人が受け取った場合、民法ではその生命保険金は相続人固有の財産であり、相続財産とはなりません。しかし、相続税法では相続財産とみなされます(みなし相続財産(注3))ので、相続税の課税対象となります。
民法と相続税法による相続財産の考え方については他にもさまざまな違いがあるので、詳しい内容については税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続財産寄付とは、故人から財産を相続した故人のご家族などがその一部を特定の個人や団体に譲渡することです。近年では社会課題に取り組む多くの団体が、相続財産寄付の効果的な受け皿として機能しています。
ここでは、実際にワールド・ビジョン・ジャパンに寄せられた相続財産寄付の事例をいくつかご紹介します。
・スリランカの幼稚園建設と修復
生前スリランカに滞在経験があるお義父様のご遺産を引き継いだご遺族は、お義父様のゆかりの地であるスリランカへのご支援を選ばれました。ご支援により、2園の幼稚園の建設と修復が実現しました。
ご支援をいただく前の幼稚園は、老朽化した暗い公民館を間借りしている状態で、子どもたちが安心して学べる環境ではありませんでした。ご支援により新しい園舎が建設され、子どもたちが明るく清潔な環境で学べるようになりました。実際に幼稚園を訪問されたご遺族は、「今までキレイな海や山、世界遺産を訪問しましたが、この子どもたちの笑顔以上に素晴らしい景色はありません。今までで一番ステキな旅行になりました」と話してくださいました(詳しくはこちら)。
・ルワンダとヨルダンでの小学校建設と教育支援
「学校もないような世界の貧しい国の子どもたちが、ひとりでも多く学校に行けるように」という奥様の遺志を尊重したご遺族の希望により、ルワンダとヨルダンで教育事業にご支援いただきました。
ルワンダでは、小学校の校舎を建設。それまで教室数が足りず、同じ教室ですし詰め状態になって勉強していた子どもたちの学習環境が大幅に改善され、のびのびと授業を受けられるようになりました。
ヨルダンではシリア難民の子どもたちへの教育支援として、補習授業や教師・保護者への研修などを実施しました。ご遺族は、「とにかく一人でも多くの子どもたちが、学校で学ぶ喜びを自分のものにできるように、と願ってやみません。毎日、明るい希望をもって学校に、家庭に、地域社会に生きることができますように」との感想をお寄せくださいました(詳しくはこちら)。
相続財産には相続税が課税されますが、条件によっては寄付した金額分が非課税となります。どのような場合に非課税となるのでしょうか。
国税庁は相続税について「相続税は、個人が被相続人から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課せられる税金です(注4)」としています。相続や遺贈などにより取得した財産の課税価格の合計額から、控除できる債務と葬儀費用を差し引いた金額が、遺産に係る基礎控除額(「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出。2020年10月現在)を超える場合、相続税の申告をする必要があります。相続税の申告が必要な場合は、通常は被相続人が亡くなった翌日から10カ月以内に、申告と納付をしなければなりません。
しかし、特定の法人などに相続財産寄付を行った場合には、その寄付した財産は相続税の課税対象としないという特例があります。
相続税が非課税となる特例はいくつかありますが、相続財産からの寄付に適用される特例について、国税庁は次のように説明しています(注5)。
この特例を受けるためには、以下すべての条件を満たす必要があります。
認定NPO法人に寄付をしたとしても、2年を経過した日までにその団体が認定NPO法人に該当しなくなった場合や、寄付された財産が特定非営利活動に使われなかった場合などは、非課税の特例が適用されないので注意が必要です。
相続財産寄付の非課税特例の適用をお考えの場合、信頼できる認定非営利法人(認定NPO法人)を選び、期間に余裕をもってご相談することをおすすめします。
相続財産寄付は、寄付を行った相続人の所得税の確定申告において寄付金控除を受けることができ、現在は、下記の「税額控除」と「所得控除」から有利なほうを選択することができます。
「(寄付金合計額-2千円)×40%」が税額から控除できます。
ただし、年間所得の40%の寄付が控除の限度です。所得税額の25%を限度として控除が認められます。
「所得控除」(寄付金控除)
「寄付金合計額-2千円」が所得から控除できます。
ただし、年間所得の40%が限度です。
相続財産寄付をお考えなら、寄付先としてワールド・ビジョン・ジャパンをぜひご検討ください。ワールド・ビジョン・ジャパンは、「認定NPO法人」として東京都の認定を受けています。そのため、相続財産寄付は相続税の非課税対象となります。また所得税の申告において寄付金控除の対象となります。
ワールド・ビジョン・ジャパンでは、大切な財産を託して下さった故人のご遺志、愛する方の想いを受け継ぎ、ご寄付くださるご遺族のお気持ちを大切に、お考えに沿った事業に活用いたします。故人やご家族のお名前を、支援地にプレート等の形で残すことも可能です(ご支援いただく事業の内容によっては、設置できない場合があります。ご提案時にプレート設置のご希望を伺い、その可否をお伝えいたします)。
あなたの大切な方の財産を子どもたちのより良い未来に役立たせるために、ぜひワールド・ビジョン・ジャパンにお手伝いをさせてください。遺贈・相続財産寄付についてのパンフレットもご用意しています。ご相談はすべて無料です。まずは、お気軽にお問合せください。
ワールド・ビジョン・ジャパン 法人・特別ドナー課
TEL. 03-5334-5351(平日11:00~15:00)
お問合せ・パンフレットのご請求はこちら
次回の記事では、ワールド・ビジョン・ジャパンへの遺贈や相続財産寄付の具体的な手続きについてご紹介します。
※この記事は、2020年10月に作成しています。諸法令は随時改正される場合がありますので、最新の情報をご確認ください。
注1 国税庁:民法の相続制度の概要 ~相続税法を理解するために~
注2 政府広報オンライン:順次、変わっていきます 相続に関するルール(文字で読む)
注3 国税庁:No.4105 相続税がかかる財産
注4 国税庁:相続税のあらまし
注5 国税庁:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき