森を再生し、希望を取り戻す

住民が主体となり、自然を再生する取り組みを通じて、コミュニティの人々が生きる希望を取り戻します。

世界では毎年約470万ヘクタール(日本の国土面積の約12%)の森林が減少していると言われています。生活環境から森林が減少することは、開発途上国の人々の生活をさらに困窮させています。

気候変動・地球温暖化の影響により、開発途上国の人たちの生活はより一層厳しくなっています。

大規模な自然災害の発生

大規模な洪水や干ばつの長期化など、異常気象が起こることによって人々の生活に直接的・間接的に影響を与えています。道路やダムなどのインフラが脆弱な地域では、こうした被害がより顕著です。

降雨量や降雨パターンの変化による農業や牧畜への影響

開発途上国の貧困層の多くは、小規模な農業や牧畜による自給自足の生活をしています。気候変動により降雨パターンが変化すると農産物の収穫量が減少し十分な食料を得ることが出来なくなります。

森林は生活を支えるライフライン

電気やガスのない生活環境に置かれている人々にとって、森林の樹木は日々の生活を支える貴重な資源です。調理用の薪、住宅建設のための木材、家畜のえさとなる牧草など、どれも欠かせないものばかりです。しかし気候変動と人口増加により、自然の回復力を上回るスピードで木を切ってしまい、森林減少と自然災害の悪循環が人々の生活をさらに厳しいものとしています。

ワールド・ビジョンは、住民が主体的かつ持続的に森林を再生する独自のアプローチで、人々の生活を改善しつつ、CO2削減にも貢献することを目指します。

乾いた土地の地下に森が眠っている?

ワールド・ビジョン・オーストラリアのトニー・リナウド(気候変動対策主任アドバイザー)は、1980年代にアフリカ・ニジェールで植林活動に従事していました。多くの木を植えても思うように育たず悪戦苦闘していた時に、地表では枯れているように見える木が、実は地中に大きな根を張っていることに気が付きました。

1本の木も植林せず、600万ヘクタールを緑化したアプローチ

地中に根を張る樹木は適切な管理方法によって再緑化されることに気が付いたトニー氏は、600万ヘクタールもの土地に木々を取り戻すことに成功しました。この手法は現在、「住民主体の自然再生アプローチ」(Farmer Managed Natural Regeneration:FMNR)として世界26か国で実施されています。

木が増えることは、CO2削減だけでなく貧困の削減にもつながる

日本では、森林再生はCO2削減や生物多様性を目的とした取り組みとして行われます。一方、ワールド・ビジョンが活動するコミュニティでは、貧困削減や生計向上、また教育機会の拡大や水資源の確保といった、地域全体の開発の一環として森林再生に取り組んでいます。そしてその中心には常に、すべての子どもに豊かないのちをという、私たちのビジョンがあります。

住民主体の自然再生アプローチとトニー・リナウドの取り組み

この活動に大掛かりな投資はかかりません。男性も女性も、場合によっては子どもでもできる簡単な剪定の知識と森林管理のルールを学び、住民たちが実践していきます。

住民が主体となって自然を再生する方法

住民主体の自然再生アプローチは、非常にシンプルなアクションで身近な樹木を守り育てていきます。それによって生活する環境が守られたり、大きくなった木や森林を様々な形で活用することで収入を向上さることができます。

現場での活動の様子

守って育てる木と、生活のために活用する木をコミュニティで合意します。そして、剪定や管理をすることで自然の回復力を高めます。女性や子どもたちも参加します。

世界から注目を集める取り組み

トニー氏が始めた「FMNR / 住民主体の自然再生アプローチ」は今、様々な方面から関心を集めています。2022年にはトニー本人が登場するドキュメンタリー映画「The Forest Maker」が公開され、多くの人がこのアプローチの知るきっかけとなりました。現在は国連環境計画によってWorld Restration Flagshipsイニシアティブの一つに認定され、生態系回復に大きく貢献することが期待されています。

2024年10月「住民主体の自然再生アプローチ」の開発者トニー・リナウドが来日!映画上映&トークイベントとシンポジウムを中野坂上ハーモニーホールで開催します。