編み物を贈ろう募金 2018年速報

アフガニスタンのストリート・チルドレンの子どもたちへの配布 ~速報~

アフガニスタンの北西部に位置するヘラート州とバギス州は冬の寒さが厳しいところで、気温はマイナス10℃を下回ることもあります。加えて、両州では2017年後半から続く深刻な干ばつの影響で、農業からの収穫が得られない、収入源である家畜が死亡する等、貧困家庭の生活はさらに厳しい状態へと追い込まれています。結納金を得るためにまだ幼い子どもを結婚させるケースも出るほどの厳しい経済状態の中、貧困家庭では防寒着を子どもたちに買い与えることができません。


貧困と干ばつにより多くの困難に直面する子どもたちにとって、厳しい冬はさらに過酷な状況を招きます。多くの子どもたちが暖かい衣類や家がないために、厳しい寒さが原因で病気にかかり、不幸にも命を落としてしまうこともあります。
1992年から続く「世界の子どもたちへ編み物作品を贈ろう」プロジェクトでは、アフガニスタンの子どもたちへ2016年から継続して手編み作品を贈っています。日本の人々からの贈り物は、子どもたちをアフガニスタンの厳しい寒さから守り、そして彼ら一人ひとりが、かけがえのない存在であることを伝えています。


日本全国の皆さまにお寄せいただいた1,363枚の手編みのセーター、11枚のベスト、1,988枚の帽子、1,705枚のマフラー・スカーフ、5組の手袋、7足の靴下計5,079点の編み物作品を、2018年11月25日~29日にアフガニスタンのヘラート市でワールド・ビジョン・アフガニスタンが運営するストリート・チルドレン・センターおよび就学前教育センター、そしてバギス州でワールド・ビジョンが運営する就学前教育センターにて贈呈式を行い、合計1,988人の子どもたちに編み物作品を手渡しました。現地から届けられた、子どもたちの様子をご報告いたします。

贈呈式での記念撮影

ヘラート市のストリート・チルドレン・センターで行われた贈呈式にて

編み手の方の名前が書かれたネームプレートを見せてくれる女の子たち

バギス州のジャレ・カショク就学前教育センターにて、記念撮影をする子どもたち

贈られた帽子とマフラーを身に着けてうれしそうな男の子たち

ヘラート市のストリート・チルドレン・センターで行われた贈呈式にて

新しく贈られた衣料に大興奮!僕だけのセーター

ヌールラ君(10歳)

フワフワとあたたかい編み物作品を手にしたヌールラ君は興奮を隠せません。「僕にくれるの?きれいだねー!着てみてもいいのかな?」

ヌールラ君はワールド・ビジョンがアフガニスタンで運営するストリート・チルドレン・センターで支援を受ける子どもの一人です。半年前からほぼ毎日センターに通い、心理的ケアのほか、教育や保健面での支援を受けてきました。
ふだんは靴磨きの仕事をしているので、仕事道具を入れた鞄をいつも持ち歩いています。中には、靴を磨くブラシ、茶色と黒の靴クリーム、そして磨き用の古布が入っています。日が昇ってから暮れるまで、厳しい冬でも、乾燥した夏でも、仕事を求めて歩きまわります。一日の収入は40円にも届きません。仕事をしない金曜日だけは、友達と遊ぶことができます。お父さんの家大工を手伝うこともあります。ヌールラ君のお父さんのように、この地域の一家の大黒柱は行商やイランに出稼ぎに出ています。お母さんは近所の家で家政婦として働いています。

2015年の世界銀行の調査によると、アフガニスタンの家庭の4割近くが貧困ラインに満たない生活をしており、最低限必要な衣食住、教育、医療保健サービスを受けることができずにいます。ヘラートの冬は気温がマイナス10℃にも下がる厳しい時期ですが、毛布や子どもたちに防寒具を買うことができる家庭は多くありません。ヌールラ君の家庭のように収入が少ない家庭にとって、毎日の食料を買うのがやっとなのです。

ヌールラ君にはきょうだいが4人います。今までは数少ない防寒具を兄弟たちと譲りあっていましたが、もうその必要はありません。真新しくてあたたかいセーター、マフラー、そして帽子を身に着けて、ポーズをとってくれました。「あったかいよ!色も気に入ったよ、とても素敵だね。」

すてきな贈り物で冬が越せるわ

ジャミラちゃん(9歳)

ジャミラちゃんは学校に行ったことが一度もありません。お父さんはアヘン依存症にかかっていて、仕事ができないのです。「学校に行きたいけど、仕事しなくちゃいけないの。朝早く街に出て、ペットボトルとか、金属の破片とか、紙を拾い集めて売るの。毎日だいたい200円にはなるわ。もらったお金はお父さんに渡すのよ。渡さないと怒られるの」

ジャミラちゃんは冬が苦手です。「家の中はいつも寒いから。きょうだいと1枚の毛布にくるまって寝るんだけど、雪が降ると凍えそうで眠れないわ」。

真新しい毛糸でできたセーター、マフラーそして帽子を受けとって、ジャミラちゃんは満面の笑みを浮かべてくれました。「とってもあったかい!素敵だわ。お母さんも編み物ができたらいいな。そうしたら寒い思いをしなくてもいいもの。こんな素敵な贈りものをいただいたのは初めてよ」。

大事な大事な、新しいセーター

アブドゥル・サブール君(13歳)

アブドゥル・サブール君の一日は日の出とともに始まります。人力車を引いて街に出て、野菜、果物、パンなどを拾ってお父さんに渡します。10時になると家に戻り、お茶とパンを食べてから学校に行きます。

アブドゥル・サブール君のお父さんは学校の用務員です。お父さんは年をとっていて体が思うように動かないので、放課後にお父さんを手伝って、教室や校庭を掃除します。「クラスメイトがみているところでお父さんと仕事をするのは恥ずかしかったけれど、今は慣れたよ」

アブドゥル・サブール君と8人きょうだいの全員が家計を手伝っています。お母さんと5人の姉妹たちは羊毛を洗浄する仕事をしています。「家族みんなが働かないと、食べるものとか学校用品が買えないんだよ」

アブドゥル・サブール君がストリート・チルドレン・センターに通い始めてから1年が経ちました。贈られた真新しいセーター、マフラーと帽子をさっそく着てみて、柔らかいセーターを指で撫でながら、こう話してくれました。「新品の洋服を着たことは初めてだよ。お母さんはいつもお古の洋服を買うか、お金のある近所や親せきからもらってきてくれるから。この新しい服は、学校の特別な集まりがあった時とか、誰かの家にお呼ばれしたときのためにとっておきたいな」。

ワールド・ビジョン・アフガニスタンのスタッフから

ストリート・チルドレン・センターで子どもたちのカウンセラーとして働くポヤさんはこのように話してくれました。
「寒い日が続くアフガニスタンのヘラートから、日本の皆さまに感謝を申し上げます。 皆さんは子どものときに、誕生日にカードやプレゼントをもらうことはあったでしょう。でもここストリート・チルドレン・センターに通う子どもたちにとって、それは本当に特別な経験なのです。ここアフガニスタンの子どもたちにとって、遠い国にいる人々からこのような贈りものを届けられるということは、彼らがかけがえのない特別な存在であることを知る機会なのです。
幸せを願ってくれる人がいる。そのことを知るだけで、彼らの毎日が少しでも楽になるのです」。


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