SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された国際目標です。17項目の目標と169のターゲットで構成されており、私たちがより長く安心して暮らせる未来を作ることを目的としています。
その中で掲げられている6つ目の目標が、「安全な水とトイレを世界中に」というものです。この目標は私たちに欠かせない安全な水とトイレを、世界中の人々が等しく利用できるようにすることを目的としています。
本記事では、そんなSDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の現状や、日本企業や世界における取り組みについて解説していきます。私たちにできることを、一緒に考えていきましょう。
SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」の内容は、以下のとおりです。
分類 | ターゲット |
6.1 | 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。 |
6.2 | 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。 |
6.3 | 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。 |
6.4 | 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。 |
6.5 | 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。 |
6.6 | 2030年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。 |
6.a | 2020年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。 |
6.b | 水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。 |
(注1)
SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」では、2030年までに世界中の人々が安価で安全な飲料水を手に入れるという目標が掲げられています。同時に、トイレをはじめとする下水施設や衛生施設を拡大し野外での排せつをなくすことも目標の1つです。
また世界中の人が安全な水やトイレを得るには、下水処理システムといった技術の共有や、資金の確保も課題です。そのため目標を達成するために、国際的な連携や環境保護なども掲げられています。
私たちの生活には、安全な水だけでなく下水施設や衛生施設も必要不可欠です。では目標6「 安全な水とトイレを世界中に」の現状や、なぜこれらが必要とされているのか、その問題点を見ていきましょう。
また世界の水全般に関する問題や現状については、以下の記事をご覧ください。
ユニセフのデータによれば、2020年時点で20億人もの人が安全な飲料水を利用できない状況にあります。これは世界中の4人に1人にあたる数です。2015年と比較すると、安全な水の普及率は70%から74%へと上昇。2020年には138カ国で安全に管理された飲料水を提供できるようになりました(注2)。
しかし依然として、安全な水を手に入れられない人々が多くいます。特にアフリカのナイジェリアやエチオピアといった開発途上国の水道普及率は25%以下となっています(注2)。なお、アフリカの国々は降水量も少なく、水源の確保が難しいことも課題です。
水道設備が整っていない場所では、川や池、水たまりの汚染された水をそのまま飲むしか選択肢がありません。しかし、こうした水にはあらゆるばい菌やウイルス、寄生虫などが含まれています。特に免疫機能が弱い子どもは汚染された水が原因で下痢や病気になり、命を落とすことも少なくありません。
2019年に発表されたユニセフの統計によれば、衛生環境の悪さが原因で死亡する5歳未満の子どもの数は、紛争下の暴力により死亡する子どもの20倍も多いとされています。15歳未満の場合は、約3倍です(注3 p.5)。このように、衛生的な環境を整えることは幼い命を守るための切迫した課題といえます。
水道がない地域では、遠くまで水をくみに行く必要があります。例えばケニアではわずか5歳の少女が、1日6時間もかけて水をくみに出かけています。さらにそれだけ時間をかけたにもかかわらず、得られるのは水たまりの汚染された水のみ。
こうした労働は、子どもたちの教育の機会を奪っています。また地域によっては女性や子どもが水くみをする慣習もあり、男女で教育を受ける機会に格差が生じることも大きな問題です。
家にトイレがないと、外で排せつすることになります。そのため女性は夜、暗くなってから用を足すこともしばしば。こうしたタイミングで、性的暴力を受けることがあります。また女の子は学校にトイレがないと、生理に対応できません。そのため初潮を迎えると、学校を退学してしまうケースも珍しくないのです(注4)。
このように、衛生設備が整っていないと立場の弱い女性や子どもが危険や不利益な状況にさらされてしまいます。
では目標6「安全な水とトイレを世界中に」に対して、日本や世界ではどういった取り組みが行われているのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
日本をはじめとする国連加盟国では、連携しながら世界の水問題に取り組んでいます。例えば「国連水関連機関調整委員会(UN-Water)」、「水に関するハイレベルパネル」といった組織を形成(注5)。先進国がリーダーシップを取りながら今後の取り組みについて検討しています。2023年3月には1977年以来初めての国連水会議が開催されました(注6)。
より具体的な日本の取り組みでいうと、都道府県や自治体レベルで節水の呼びかけを実施。水は限りある資源であることを、小学校の教育プログラムに取り入れている自治体もあります(注7)。開発途上国に対しては、国際協力機構(JICA)を通じて先進国の水浄化システムといった技術を提供。さらに資金調達の援助をするといった、あらゆる支援を実施しています(注8)。
また毎年3月22日は「世界水の日」として、世界の水問題に関する啓発をしているのも、目標達成に向けた取り組みの1つです。
企業でも目標達成に向けて、さまざまな取り組みが行われています。例えば日本の大手飲料メーカーでは、水源と生物多様性の再生を目的とし、森を育むプロジェクトを実施。さらに世界中の子どもたちに対し、水源の大切さを伝える教育活動も実施しています。
ある食品メーカーでは美しい水源を保つため、商品のパッケージに使用されるプラスチックの削減につとめています。海を汚染するプラスチックごみを減らし、環境負荷を下げるための取り組みです。このほか森林保全活動や、フィールドワークを通した子どもたちへの啓発活動なども行っています。
また、ある製薬会社ではすべての工場・研究所において全排水毒性(WET)試験を実施。環境生物への影響を確認し、排水規制順守にとどまらないあらゆる面に配慮した排水管理を行っています。
ワールド・ビジョンは世界中のあらゆる問題に苦しむ子どもたちを救う、国際NGOです。水問題に対しては、「2020年までに10秒に1人に安全な水を届ける」という具体的な目標を掲げ、無事に達成することができました。いまこの瞬間も、10秒に1人にきれいな水を届け続けています。
またワールド・ビジョンでは、現地の人々を主体に水衛生環境を改善するプログラムを実施。「水管理委員会」という住民組織の立ち上げや運営を支援するとともに、教育や保健、生計向上などの取り組みを行っています。これにより、持続可能な形で安全な水と衛生的な環境が届けられるのです。
ほかにも企業と協力して衛生設備を整えるプロジェクトを実施したり、必要に応じて井戸や給水設備を作ったりと、活動の幅はさまざま。皆さまからのご支援を必要な形で世界各地に届け、より多くの子どもたちが健やかに暮らせるように活動しています。
ワールド・ビジョンでは世界中の子どもたちに安全な水や衛生環境を届けるべく、さまざまな活動に取り組んでいます。活動に関心を持っていただけた場合は、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。
1日あたり150円、月4,500円のご支援で、きれいで安全な水を得られる子どもが増えます。またチャイルド・スポンサーシップでは支援を受けた子どもから直接手紙が届くため、ご自分が支援した実感や喜びも感じていただけるはずです。
皆さまからのご支援で、日々幼い子どもたちの命が救われています。私たちとともに、きれいな水で世界の子どもたちを守りましょう。
注1 農林水産省: SDGsの目標とターゲット
注2 ユニセフ: 家庭用飲料水、公衆衛生、2000年から2020年までの進捗状況:SDGsから 5年
注3 ユニセフ: Water under Fire
注4 東洋経済: 日本人がトイレを流すのに使う「驚きの水の量」
注5 国連総合広報センター: 持続可能な開発目標6:水と衛生
注6 国連総合広報センター: 2023年国連水会議
注7 青森市: おいしい水を守るために私たちにできること
注8 JICA: 全ての人々に安全な水を