南スーダンで新型コロナ対策事業を開始:子どもたちに安全な水を届けます!

(2021.09.13)

南スーダンの子どもたち
南スーダンの子どもたち

ワールド・ビジョン・ジャパンは、皆さまからの募金と、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成金で、南スーダン共和国アッパーナイル州マラカル市で、新型コロナウイルス対策支援事業を2021年3月31日より開始しました!

「手洗い・うがい」をすることがむずかしい南スーダンの子どもたち

南スーダンは、長期にわたる紛争により、水道や浄水施設が整備されておらず、「きれいな水を確保すること」が非常に困難です。南スーダンでは、徒歩30分圏内で安全な水を使用できる住民の割合は約3割*に限られており、多くは川や浄水されていない井戸から水を汲み、生活用水や飲み水として使用しています。こうした水は、細菌や動物の糞尿が混じって汚染されています。幼い子どもたちは急性の下痢で死亡することもあり、汚染された水を使用することは非常に危険です。

こうした状況の中、2020年より世界中で蔓延する新型コロナウイルス感染症は、南スーダンの子どもたちの命をより危険にさらしています。日本の家庭や学校では日常的にできる手洗い・うがいですが、南スーダンの子どもたちにとってはきれいな水で手を洗うことは容易ではありません。また、手洗いには石けんで手を洗うことが重要とされていますが、2019年12月の調査では、事業地アッパーナイル州では17%** の世帯しか石けんを使用していませんでした。

PCR検査は首都のジュバ(事業地から飛行機で1時間半)でしか受けられず、医療設備も整備されていない事業地では、日頃の手洗い・うがいという感染予防が「子どもたちの命を守る最も有効な手段」です。

*Humanitarian Response Plan (HRP) Addendum for COVID-19 2020, p.52, UNOCHA
**Food Security and Nutrition Monitoring Report (FSNMS), Round 25 - February 2020

新型コロナから子どもたちを守る支援

そこでワールド・ビジョン・ジャパンは、事業地アッパーナイル州のマラカル市で、新型コロナ予防対策のため、緊急の人道支援を開始しました。

①浄水装置や水道の整備・維持

南スーダンで使用されている簡易浄水装置
南スーダンで使用されている簡易浄水装置

事業地には、過去に建設して動かなくなったままの簡易浄水装置がありました。この浄水装置は、上下水道の整備がすぐにはできない地域において、応急措置的に人々に安全な水を提供するために南スーダン全土で広く使われているものです。

現地スタッフと地元政府が調査をし、古くなった部品を取り換えるなどの修繕を行えば再度使えるようになることがわかりました。そこでこの事業では新しく装置を設置するのではなく、既存の浄水装置を修繕して再活用することとしました。

ナイル川
ナイル川

修繕に必要な資材(重さ約30t)を、南スーダン国内だけでなく、隣国ウガンダからも集めています。南スーダンではほとんど道が舗装されておらずでこぼこ道のため、資材を載せたトラックは事故を起こさないよう速度を下げて走行しなければなりません。南スーダンの首都のジュバに資材が届けば、今度は大きな貨物船に資材を載せ、ナイル川を約2~3週間かけてのぼり、事業地マラカル市まで運びます。

長い道のりですが、一歩一歩、子どもたちに水を届けるために頑張っています。
また、修繕が終了したあと、浄水装置などの水道設備を維持管理していくための水管理委員会を住民とともに作っていきます。

②学校教員に向けた感染予防のための研修

感染予防のための研修を受ける学校教員
感染予防のための研修を受ける学校教員

地域の子どもたちが手洗い・うがいの習慣を身に付けるために、事業地にある学校教員に向けた、新型コロナに関する正しい知識と予防法についての研修をおこないました。

③感染予防法の普及と衛生用品の配布

感染症予防法普及のための研修を受ける衛生クラブの子どもたちと保護者
感染症予防法普及のための研修を受ける衛生クラブの子どもたちと保護者

子どもたちが、学校だけでなく家でも感染症対策ができるように、教員や保護者に向けても新型コロナについての研修を行いました。研修後、地域の人々に予防法の普及活動を行う予定です。その際は教員や保護者などの大人だけでなく、「衛生クラブの子どもたち」も地域のリーダーとなって、在校生や地域の人々に手洗いの仕方などを伝えていきます。そのため、研修には、小中学校の衛生クラブの子どもたちも参加しました。

また、事業地で不足している石けんやマスクなどの衛生用品の配布も行います。

担当スタッフより

南スーダンでの事業実施は一筋縄ではいきません。スタッフは、紛争による治安悪化から常に自分の身を守りながら事業をしています。2020年からは新型コロナの拡大で人やものの移動に制限がかかり、計画通りに事業を進めることがとても困難なこともあります。ですが、子どもたちに一刻も早く安全な水が届けられるように全力を尽くします。

緊急人道支援課 南スーダン事業担当 高橋奈津子

ケニアでHEAT(危険地域への赴任者・出張者向けのセキュリティ研修)を受講した髙橋スタッフ
ケニアでHEAT(危険地域への赴任者・出張者向けのセキュリティ研修)を受講した髙橋スタッフ

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