(2020.09.04)
ジャパン・プラットフォーム(JPF)と皆さまからの募金によって、2016年7月から2020年7月までの計4年間実施した教員研修が修了し、南スーダンの西エクアトリア州タンブラ郡で、47名が教員免許を取得しました。
この結果、未来を担う子どもたちに適切に教えられる人材が不足していたタンブラ郡の状況が、少しずつ改善しつつあります。
タンブラ郡の教育の課題として、長期にわたる紛争の影響により、学校での教育の機会が途絶えたり、たとえ教育の機会があったとしても、教員自身が受けてきた教育の質が低かったり、教員研修が実施されていない状況がありました。
特に、教員研修が行えておらず、教員免許を取得している教員が不足している状況は、南スーダンの未来を担う子どもたちが学ぶべき内容を適切に教えられる教員がいないということを意味しています。
この事業を開始する前には、政府公認の教員研修を修了し教員免許を取得した教員がタンブラ郡の全教員159人中10人しかいませんでした。教員研修を修了していない教員の多くが、各科目の指導法について熟知していないだけではなく、全教科において南スーダンの初等教育カリキュラムを英語(公用語)で教えることに自信がない状況でした。さらに、初等教育を修了していない教員が多く、小学校高学年の児童に対して教えるために必要十分な各科目の知識を有していないことから教員の養成が急務となっていました。
このような状況を少しでも改善するため、ワールド・ビジョン・ジャパンは、教員資格を有していなかった教員に対して、正式な教員免許の取得に向けた研修を実施しました。
教員研修では、2016年7月から2020年7月までの4年間、毎年2カ月間、6教科(英語、算数、理科、社会、宗教、教授法)のそれぞれのカリキュラムに沿った科目別指導法研修を行いました。
各年度の研修後に、習熟度テストを実施し、成績および出席率が優秀であった研修生が次年度の研修の対象となり、最終年であった今年の研修では、47名(男性42名、女性5名)が全過程を修了することができました。中には、すべての科目で80点、90点以上を記録するとても優秀な研修生もいました。
研修後の習熟度テストの結果、治安の悪化、そして今年に入ってからは新型コロナウイルス感染症の影響など、4年間を通じて様々な外部環境の変化により研修の続行が危ぶまれました。特に初年度の研修では、算数の習熟度テストで約半数の教員が不合格という結果になり、その後再度研修を行い、研修生は自主的に勉強を重ね、追試を行い、何とか合格することができました。
様々な困難に直面しましたが、研修生一人ひとりが高い意識と熱意を持って研修に参加し続けた結果、今年7月に無事に教員免許状が郡教育局長を通じて教員47名に授与されました。
研修生の代表を務めたジェイコブさんは、「4年間の研修で様々なことを学びました。特に、子どもたちの習熟度を記録として残すことの重要さに気づかされました。また、教員としての学校での振る舞いのみならず、コミュニティでの振る舞いを通じて人々の見本となることがいかに大切かを学びました。最初の年の研修では、算数の理解が追い付かず大変でしたが、他の教員とグループを作り、研修外の時間でもディスカッションの場を持つことで理解を深めました。この研修で学んだことを、自身の村の学校でも実践していきます」と話してくれました。
世界で最も若い国・南スーダンで子どもたちを育てるという教育の未来は、ジェイコブさんのような熱い想いを持った教員たちに託されています。