【開催報告】塩野義製薬×WVJ ケニアでの母子保健支援活動について報告

(2018.3.23)


診療所で生まれた赤ちゃんとお母さん
支援事業により開所した診療所で生まれた赤ちゃんとお母さん
2017年3月5日~8日、ワールド・ビジョン・ケニア(以下、WVケニア)で保健栄養事業の統括責任者を務めるミリアム・ムベンベ・スタッフが来日し、ワールド・ビジョンが塩野義製薬株式会社様(以下、塩野義製薬)と連携して実施しているケニアにおける母子保健支援事業「Mother to Mother SHIONOGI Project」(以下、プロジェクト)について、塩野義製薬主催のメディア向け説明会と社内イベントで報告を行いました。

「事業地域には感染症との闘いの原点がありました」

プロジェクトの進捗と成果を報道関係者向けに報告するメディア向け説明会は、事業初年度の2015年から塩野義製薬主催で年に1回開催されています。今回で3回目となるメディア向け説明会は3月6日(火)に東京・丸の内で開催され、WVケニアのミリアムスタッフとワールド・ビジョン・ジャパン(以下、WVJ)の事務局長、木内が登壇しました。

まず、本プロジェクトのオーナーである塩野義製薬 執行役員・海外事業本部長 竹安正顕氏が挨拶に立ち、「Mother to Motherプロジェクト」の進捗と塩野義製薬が目指すCSRのあり方について発表しました。

当初3年間の予定であったプロジェクトの計画を2年間延長し、これまでのプロジェクトの成果を土台として今後はデータ化に取り組み、行政からの継続的なコミットメントを得ることで、「支援地域及びプロジェクトの持続可能性につなげたい」と述べました。

また、同社の感染症薬開発の歩みが紹介され、2年あまりのプロジェクトを通して「ここに感染症との闘いの原点がある」と再認識したことに言及。「それぞれの国・地域の衛生・栄養状態、経済の発展段階に応じた感染症制御・予防の仕組みが必要」との認識が強まり、日本及びアジア地域のオピニオンリーダーを招いたシンポジウムを開催したことも報告されました。

最後に、「塩野義製薬は創薬型製薬企業として社会とともに成長し続けることを中期経営計画で掲げています。『Mother to Motherプロジェクト』を通して引き続きSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標 )に貢献していきます」と、社会的責任への継続的なコミットメントを表明しました。

(右)塩野義製薬㈱執行役員・海外事業本部長の竹安氏、 (中央)ワールド・ビジョン・ケニア保健栄養事業担当ミリアム・ムベンベ (左)ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長 木内真理子
(右)塩野義製薬㈱執行役員・海外事業本部長の竹安氏、(中央)ワールド・ビジョン・ケニア保健栄養事業担当ミリアム・ムベンベ(左)ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長 木内真理子

「人々の行動の変化は、希望の象徴です」

続いて、WVケニアのミリアムがプロジェクトの2年次の進捗について発表しました。1年次の診療所外来棟の開設に続き、2年次には産科棟の開設や雨水タンクの設置と、施設がさらに充実したことや、栄養不良児の診察、産前産後検診、分娩など、施設での医療サービスも拡大したことが報告されました。

これらの活動の結果、プロジェクト開始後の2年間で診療所を利用する患者数は2.5倍以上に増加、また、産前産後検診や予防接種など母子保健サービスの受給率も著しく改善されました。また、診療所での出産件数が、プロジェクト開始前の5件から、2017年には23件に増えたことに言及。

「23件というデータは数としては少ないかもしれません。しかし、『診療所で出産=弱さの表れ』とみなされるコミュニティでの変化であることに目を留める必要があります。この23件は、多くの母子の命を守ることにつながる、意義深い変化を象徴する希望の数字なのです」と述べました。さらに、男性の決定権が絶対であるマサイ族のコミュニティにおいて、男性の理解促進が進んでいることを報告し、このような人々の意識と行動の変容、診療所のサービス拡充、さらに、水・衛生や栄養など総合的なアプローチも取り入れて事業を進めていく計画を示しました。

2016年に開所した外来棟
2016年に支援により開所した外来棟

「成果をわかる形で伝えていくことが自立性・持続可能性につながります」

次に、WVジャパン事務局長の木内から、事業の新しいステージとして実施する調査事業についてその背景と目的について説明しました。多様なパートナーが連携して取り組むことが求められるSDGsの時代において、NGOにも成果を出し、その成果を定量的にまとめて発信する要請があることに触れ、これから展開する調査事業が、民間企業、NGO、現地の政府、日本と現地の学識機関が強みを持ち寄って実施する「新たなパートナーシップ」での取り組みであることを述べました。

続けて、①現状・問題点の把握、②データに基づく介入、③結果の科学的評価という事業の3段階のプロセスを説明、世帯と診療所において、保健・栄養・水衛生・幼児教育の4セクターの総合的アプローチの中から最適な処方箋をさぐり、科学的根拠に基づく有効な対策を提示することを目指すという全体像を示しました。

定期的に子どもの栄養状態を確認
定期的に子どもの栄養状態を確認

「介入と調査からなる事業を通して、2つの持続可能なインパクトがもたらされることを期待しています。第一にコミュニティの自立です。コミュニティの人々の知識・問題意識・解決能力の向上に資することで、自らが地域を変える原動力になることを期待します。第二に政策へのインパクトです。

『Mother to Motherプロジェクト』の事業地域のような資源が限られた地域では、コミュニティの貢献に加えて、外部からの投資・サポートが必要です。調査の結果が政府行政のいっそうのコミットメントを引き出すことにつながれば、より持続可能性が高まるでしょう。」

最後に、再び、塩野義製薬の竹安様が登壇し、世界に残る様々な社会課題に対して、有効は処方箋となりうる新規技術に触れ、持続可能な社会を実現するために、様々な革新的な技術を有する日本企業の連携を呼びかけました。

2017年に開設した産科棟
2017年に開設した産科棟

80名の皆さまの前で講演

メディア向けセミナーの翌日3月7日(水)、WVケニアのミリアムと、WVジャパンスタッフは塩野義製薬の研究所を訪問し、日々新薬の開発に尽力している研究者の皆さまを前に講演しました。研究所とテレビ会議でつないだ塩野義製薬本社から約80名の方が参加されました。

前日にミリアムスタッフと木内が報告したプロジェクトの進捗と今後の展望に加えて、ミリアム自身のこれまでの歩みやキャリアについて、講演とQ&Aセッションの2部構成で発表を行いました。Q&Aセッションでは、プロジェクトに関する内容に加えて、「アフリカの人々にとって医療機関を受診するのは身近なこと?」「医師や医薬品を信頼していますか?」「製薬企業に期待することは?」等、社内イベントならではの質問をいただき、看護と公衆衛生学の学位を持つ専門家、かつ、保健・栄養事業を統括する責任者、でありながら母親でもあるミリアムの回答に、会場の皆さまは熱心に聴きいっていました。

最後には、塩野義製薬医薬研究法部長の塩田様から、WVの活動へのあたたかい励ましと製薬企業としての使命についての力強いメッセージがありました。

(左から2人目)塩野製製薬㈱医薬研究本部長の塩田様、(同3人目)ミリアムスタッフ、塩野義製薬㈱プロジェクトチームの皆さまとWVJスタッフ
(左から2人目)塩野製製薬㈱医薬研究本部長の塩田様、(同3人目)ミリアムスタッフ、塩野義製薬㈱プロジェクトチームの皆さまとWVJスタッフ

参加された塩野義製薬の皆さまからは、以下のような感想をいただきました

  • 日本よりはるかに大変な環境の中頑張っておられるミリアムさんの話は、同じ女性(母)として刺激を受ける部分が多かったです。
  • やはり、私が製薬企業一社員としてお役に立てることは、日々頑張る事、つまり「お薬をお届けし続ける事」ではないかなと改めて思いました。
  • 人々の意識を変えることはとても時間のかかる、というお話から、継続の大切さを改めて感じました。

----------------------

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、世界の子どもたちの健やかな成長のために、企業・団体の皆さまとの連携を進めています。

パートナーシップには様々な形があり、ビジョンと目的を確認しながら、対話を重ね、子どもたちの健やかな成長に資する活動を進めています。

関連ページ


ページトップアイコン 「【開催報告】塩野義製薬×WVJ ケニアでの母子保健支援活動について報告」トップに戻る