国際協力NGOとは?国際協力NGOワールド・ビジョンの歴史と活動

国際協力NGOとは、どのような団体なのでしょうか。また、NGOが実施している国際協力は、政府が行う国際協力と何が違うのでしょうか。国際協力NGOについての基礎知識と、国際協力NGOワールド・ビジョンの歴史と活動についてまとめました。

国際協力NGOとは?

栄養不良に苦しむブルンジの子どもたち


国際協力NGOとは、国際協力を行っている非政府組織のことです。NGOの正式名称や国際協力NGOの役割、政府や国連との連携などについて調べ、国際協力NGOについての理解を深めましょう。

NGOの正式名称

NGOの正式名称はNon-governmental Organizationです。Non-governmental(政府ではない)Organization(組織)という意味で「非政府組織」と訳されています。国際協力NGOとは、国際協力を行っている民間団体のことなのです。

NGOという言葉が生まれた背景には、国際連合の存在があります。国連設立時の1945年に制定された国連憲章の第71条にNon-governmental Organizationの文字が記されています(注1)。国連が様々な協議を行う際に政府組織と民間組織との区別が必要となり、NGOという略称が使われるようになりました。


国際協力NGOの役割

国際協力を行っているNGOにはどのような役割があるのでしょうか。

先ほども触れた通り、国連は設立当初からNGOと協力関係にありました。Non-governmental Organizationという言葉が登場した国連憲章第71条は、経済社会理事会(ECOSOC)の設立に関するもので「加盟国ばかりではなく、その権限内にある事項について関係するNGOとも協議することができる(注2)」という内容になっています。

国連はNGOについて「重要なパートナーであり、かつ国連と市民社会とを結びつける貴重な存在である(注2)」と述べています。また、国際協力NGOが実施している活動について次のように説明しています。

NGOは加盟国との協議を含め、国連事務局、プログラム、基金及び機関と多方面で協力しています。NGOは情報の普及、認識の向上、開発教育、政策提言、共同運営プロジェクト、政府間プロセス参与、そしてサービス及び技術の専門性の提供など、多くの活動で貢献しています。

国際連合:NGOのためのECOSOCの協議資格に関するガイドブック(注3 P1)


国連の経済社会理事会(ECOSOC)から協議資格を与えられているNGOは、2016年9月現在で約4,665団体でした(注2)。数多くのNGOが国連機関の目的を達成するために尽力しています。

また、日本の外務省はNGOについて「開発,貧困,平和,人道,環境等の地球規模の問題に自発的に取り組む非政府・非営利組織(注4)」と述べました。そしてNGOの役割について、次のように示しています。

NGOは国際協力において各々の目的意識に基づき、自発的に活動しており、開発途上国で困窮している住民を手助けすることについて知見を持っています。政府中心の援助では対応が困難な草の根レベルのニーズをよく把握し、すぐに行動を起こし、木目の細かい支援の手を差し伸べることができます。また、活動資金も寄付金等NGOの活動目的に賛同した人々からの善意である場合や公的資金の場合もあり、いわば、日本の「顔の見える援助」の代表格です。

外務省:国際協力とNGO NGOがなぜ必要なのか?(注5 P3)


開発途上国などで国際協力を行っているNGOは、日本だけで400団体以上あるといわれています(注5)。利益を目的とするのではなく、困難に直面している世界の人々のために様々な課題に取り組んでいるのです。

このように国際協力NGOは、市民社会の声を代表して国連や政府との架け橋となり、草の根レベルのニーズの把握と素早くきめの細かい支援を実行し、顔の見える援助を行う役割があると言えるでしょう。


国際協力と国連や政府との連携

国際協力NGOの多くは、国連や政府と連携して開発途上国の問題解決に貢献しています。

まずは国際協力NGOと国連との連携について見てみましょう。

NGOsは国連の政策・プログラムについて、諮問を受けています。国連事務所、プログラム、機関に登録されたNGOsの代表に対し、国連は定期的に、ブリーフィングを行ったり、会議を開催したりしています。

国際連合広報センター:国連とNGO(注6)


国連と国際協力NGOは緊密に連携したパートナーであることが伺えます。例えば国際協力NGOであるワールド・ビジョンは、国連世界食糧計画(WFP)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)などと連携し、アジア・アフリカ・中東諸国で緊急支援や教育支援、地域開発を実施しています。


次に、国際協力NGOと日本政府との連携について見てみましょう。外務省は、NGOとの連携について次のように述べています。

外務省は、国際協力に対する国民の理解と支援を得る上で、また、政府開発援助(ODA)の有効性を高める上で、NGOと積極的に協力しています。この外務省とNGOのパートナーシップには大別して3種類があります。 「連携」、「協力」、「対話」です。 「連携」は、広い意味では、外務省とNGOがパートナーとして共に国際協力を推進することですが、狭い意味では、評価、広報等の分野で、双方にとって有益な活動を共に行うことです。「協力」は、日本のNGOが海外で事業を行う際に必要とする資金を提供し、また、国内におけるNGOの能力強化のための協力を行うことです。「対話」は、定期協議の場などにおいて、国際協力の推進、政府開発援助政策に関して、NGOの意見を聞き、政策に反映することです。

外務省:国際協力とNGO 外務省とNGOの協力(注5 P3)


政府は、国際協力NGOをパートナーにすることでODAの有効性が高まるということを明らかにしました。

政府は国際協力NGOとのパートナーシップをより一層高めるために、資金協力や能力強化のための事業を実施し、定期的な協議の場を設けています。また、迅速で効果的な緊急人道支援のためにジャパン・プラットフォームを立ち上げたり、企業とNGOの連携の場を設けたりもしています(注7)。

国際NGOワールド・ビジョンも外務省や国際協力機構(JICA)、ジャパン・プラットフォームなどと連携し、大きな成果をあげています。

国際協力NGOワールド・ビジョンとは?

南スーダンの少年とワールド・ビジョンのスタッフ


1950年にアメリカのオレゴン州で設立されたワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて「開発援助」「緊急人道支援」「アドボカシー」を行う国際NGOに成長しました。ワールド・ビジョンの背景や活動について解説します。

国際協力NGOワールド・ビジョンの歴史

国際協力NGOワールド・ビジョンは、1950年9月にアメリカ生まれのキリスト教宣教師ボブ・ピアスによって始められました。

彼は第2次世界大戦後に中国に渡り、混乱を極めた様子を目の当たりにしました。そこで「すべての人々になにもかもはできなくても、誰かに何かはできる」と考えるようになり、中国で出会ったひとりの女の子の支援を始めたのです。そして、より多くの支援をするためにアメリカでワールド・ビジョンを設立しました。それ以来、宗教・人種・民族・性別に関わらず、すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を目指して活動を続けています。

ワールド・ビジョンの活動は人々に受け入れられ、拡大し続けています。ワールド・ビジョンの活動によって、2012年から2016年の5年間だけで、貧困に直面し困難な状態にあった2億人を超える子どもたちの生活が改善されました

現在では世界100カ国で37,000人以上がワールド・ビジョンのスタッフとして働いています。その中のひとつ、ワールド・ビジョン・ジャパンについてご紹介しましょう。

ワールド・ビジョン・ジャパンの設立は1987年。設立後すぐにバングラデシュの大洪水への緊急支援を開始しました。その後もワールド・ビジョン・ジャパンは活動の3本柱である「開発援助」「緊急人道支援」「アドボカシー」を世界で展開しています。2011年の東日本大震災発生に際しては40億円を超えるご支援金をお預かりして、かつてない規模での支援活動に取り組みました。設立から30年を超え、2019年度には32カ国で159事業を実施するなど、活動を広げています

国際協力NGOワールド・ビジョンの活動

国際協力NGOワールド・ビジョンは、困難な状態にある子どもを救うため、子どもをとりまく環境を改善しています。活動の3本柱である「開発援助」「緊急人道支援」「アドボカシー」について解説しましょう。

・開発援助
ワールド・ビジョンは、チャイルド・スポンサーシップを通した開発援助活動を実施し、困難な状況に置かれている開発途上国の子どもたちが健やかに成長できるよう、持続可能な環境を整えるための支援を行っています。その内容は、子どもが教育を受ける権利や安全に暮らす権利が守られるように、支援地域の人々とともに水衛生、保健、栄養、教育、生計向上などのプログラムを実施することです。ワールド・ビジョンが行う開発援助活動は、地域の課題を解決し、子どもたちが育つ環境を整えているのです。

・緊急人道支援
ワールド・ビジョンは国内外問わず、天災や紛争、感染症などで生活が一変し、困難に直面している人々の元にいち早くかけつけて支援をしています。最も弱い立場にいるのは子どもたちです。ワールド・ビジョンの緊急人道支援は、困難に直面している人々の生命や安全を維持するだけではありません。子どもたちが貧困の連鎖に入ることなく、明るい未来を描くことができるよう、短期的・長期的なプログラムを行っているのです。

・アドボカシー
アドボカシーとは、貧困や紛争の原因について声を上げ、問題の解決のためにできることを政府や市民社会に知らせ、行動を起こすように働きかけることです。弱い立場にある子どもたちが貧困の連鎖を断ち切り、希望に満ちた未来を描くことができるように、ワールド・ビジョンは政府や国際機関、市民社会に働きかけ、様々な方法でアドボカシー活動を行っています。

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関しては、2020年2月6日に最初の声明を発表しました。常に情報をアップデートし、働きかけを行っています。

1日150円の国際協力!チャイルド・スポンサーシップ

チャイルド・スポンサーからの手紙を持つ、カンボジアの子どもたち
チャイルド・スポンサーからの手紙を持つ、カンボジアの子どもたち


1日150円で国際協力ができることをご存知でしょうか。国際NGOワールド・ビジョンが行っているチャイルド・スポンサーシップは、日本にいる誰もが、1日150円で開発途上国の子どもやコミュニティと直接つながり、子どもの未来を確実に救うことができる国際協力なのです。

私たちにできる国際協力

私たちにできる国際協力チャイルド・スポンサーシップは、なぜ効果的であると言えるのでしょうか。

チャイルド・スポンサーシップは、地域に根差した開発援助を行うことで、子どもたちの健やかな成長を目指すプログラムです。ご支援金により、教育、保健衛生、水資源開発、収入向上など様々な支援活動を長期(10 ~15年) にわたって行い、子どもの人生に変化をもたらします。

チャイルド・スポンサーシップによる支援は、一人の子どもだけを対象にしたお金や物を提供する支援ではありません。その地域に住む子どもたちが健やかに成長できる持続可能な環境を整えていけるよう、支援地域の人々とともに水衛生、保健・栄養改善、教育、生計向上、子どもの保護等の地域の課題に取り組みます。また、活動の成果を地域の人々自身が将来にわたって維持し、さらに発展できるように、人材や住民組織の育成にも力を入れています。

こうした地域開発プログラムを経て、当初の計画を達成した地域は支援から卒業していきます。例えばアフリカからは、ウガンダのナラウェヨ・キシータ地域プログラムが、2019年に支援が終了し卒業を迎えました。15年間の支援により、部族間の争いが消えて安全になりました。立派な校舎ができて教育環境が整い、初等教育修了試験の合格率が34.7%から71.1%に向上しました。井戸の数は2倍に増え、いつでも水を手に入れることができるようになりました。地域全体が改善したことで、子どもたちをとりまく環境が、安全で衛生的なものになったのです。

このように、子どもへの支援だけではなく地域全体の問題に取り組むことで、子どもをとりまく環境が改善され健やかに育つことができるのです。子どもが住んでいる地域全体の開発が持続的に行われる事こそが、チャイルド・スポンサーシップの効果を高めているといえるでしょう。

子どもたちが支援を待っています

世界の子どもたちは、様々な困難と直面しています。チャイルド・スポンサーシップは、子どもたちが直面している問題を改善します。1日150円で、子どもの未来を良い方向に変えることができるのです。

チャイルド と文通をしたり、訪問することもできます。子どもや地域の人々と直接触れ合うことは、チャイルドにとって励みになり、チャイルド・スポンサーにとっても忘れられない大きな喜びになることでしょう。

支援地域がどのように発展し、チャイルドがそこでどのように成長しているか、毎年お送りする「プログラム近況報告」と、チャイルドの「成長報告」を通じて、支援の成果を実感していただけます。

2019年度、48,426人のチャイルド・スポンサーが、57,575人のチャイルドを支援しました。チャイルドから約4万通の手紙がチャイルド・スポンサーに送られ、暖かい交流が生まれています。

チャイルド・スポンサーシップは、子どもだけではなく、その地域全体を変えることができる、強力なインパクトのある支援方法です。開発途上国で困難に直面している子どもを支援するための、とても効果的な寄付のひとつであることは間違いありません。

チャイルド・スポンサーの声をお聞きください。チャイルド・スポンサーシップは、開発途上国支援に役立つだけではなく、感動に満ちたプログラムであることもおわかりいただけるでしょう。


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※このコンテンツは、2020年7月の情報をもとに作成しています。

参考資料

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