国際協力の仕事の内容や種類を知ろう

「国際協力を仕事にする」と聞くと、どのような仕事を思い浮かべるでしょうか。
広く知られているものとしては、国際連合(国連)や国際協力機構(JICA)、青年海外協力隊があります。実は、これら以外にも国際協力の仕事はあり、国内から国際協力に携わる方も沢山います。今回はそんな国際協力の仕事に「必要なものは何か?」「どこでどんなことをしているか?」などについて紹介していきます。

国際協力の仕事について

ワールド・ビジョン・スーダンのスタッフたち


学生の方の中には国際協力に関心が高く、将来は国連や青年海外協力隊、NGOで働きたいと考えている方もいるでしょう。一方で、どのような職種があるのか、働いている人は実際に何をしているのか、どんなキャリアがあるのかなど、分からないことも多いと思います。まずは国際協力にまつわる仕事の概要を見てみましょう。

国際協力とは

世界には196カ国の国が存在します。そのうちの約150カ国が開発途上国と呼ばれている国々で、その多くで貧困や紛争などの問題が起こっています。このような問題は世界規模の課題であり、各国が力を合わせて問題解決のため取り組むことが重要視されています。

このように地球全体の平和や発展のために各国が支援を行うことが「国際協力」です。国際協力には、政府開発援助(ODA)などのように国が行う支援以外にも、NGOなどさまざまな組織や団体などが携わるものがあります。

また、市民の一人として企業や地域で国際協力に関わることもできます。たとえば、「持続可能な開発目標(SDGs)」「企業の社会的責任(CSR)」の一環として国際協力活動に力を入れる企業があったり、学校教育ボランティア活動として開発教育や寄付行為の普及などを行う地域があったり、あなたの身近なところでも国際協力は行われているのです(注1)。


国際協力の仕事内容

国際協力を仕事にしている人は、どのようなことをしているのでしょうか。国際協力というと、開発途上国に行って活動するイメージが強いかもしれません。しかし、現地で活動することはもちろん、国内から現地スタッフのフォローや組織運営をするなど、仕事内容は多岐にわたります。

具体的に国際協力を行っている組織の種類として、国際機関、政府系機関、NGO、企業の4つが挙げられます。組織によって活動の範囲などが異なり、仕事内容も多様ですが、それぞれが貧困や教育、環境などの各分野で世界で起こる問題解決のために活動をしています。

国際協力の仕事の種類


次に「国際協力の仕事内容」で挙げた組織で、どのような活動を行っているのか解説します。

国際機関

国際機関とは、テロや感染症、環境問題などのグローバルな課題を解決するためにつくられた機関です。その代表的な組織が国連で、国連を中心に様々な組織や専門的な機関が存在します。「国際機関の仕事=国際協力」というイメージが強いですが、国際機関の仕事には専門知識の有無も含めて、多様なスキルや知見を持った人材が必要です。そのため国際協力の経験以外のキャリアも活かすことができるのが特徴です(注4)。

国際機関で働くためには、各機関の欠員募集に応募する(空席広告)、ジュニア・プロフェショナル・オフィサー(JPO)派遣制度を利用する、国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)試験を受けるといった3つの方法があります。

空席広告とは、国際機関職員の退職や転任などによる欠員が生じた場合に各機関のウェブサイトに掲示される募集広告を指します。空席広告には勤務地、勤務期間、求められる能力などが細かく記載されています。自分に合う空席広告があれば応募が可能です。

JPO派遣制度は外務省が実施しているもので、35歳以下の日本人に対し、原則2年間、国際勤務での勤務経験を積む機会を提供しています。応募には年齢制限や語学などの条件もあり、それぞれが求める分野での修士号と2年以上の職務経験も必要なため、選考通過は容易でありません。しかしながら、これまで約1700名が派遣され、2001年以降の派遣者の7割以上が派遣後に国際機関に正規採用されていることから、国際機関で経験を積みながら正規職員を目指すことができる制度です(注2)。

YPP試験という職務経験を問わない試験は、JPO制度と比較して応募条件のハードルは下がりますが、求められる分野での経験や知識がとても重要になります(注3)。

政府系機関(外務省、JICA、JBIC)

国際協力に携わる日本の政府系機関としては、開発協力の担当省庁である外務省や、実施機関であるJICA、国際協力銀行(JBIC)が挙げられます。これらの機関では公的資金である政府開発援助(ODA)によって、平和構築やガバナンス、基本的人権の推進、人道支援などといった開発途上国の「開発」を主たる目的とした資金(贈与・貸付等)や技術提供を行っています(注5)。

・外務省
国の利益を守る仕事を担う外務省では、平和で豊かな国際社会や経済発展のために取り組んでいます。多くの外交官が世界各国の大使館や総領事館で働いていて、日本の文化を外国に紹介したり、海外に住む日本人の保護をしたり、派遣先の国や地域の政治経済に関する情報収集を行って分析し、交渉をするなどの様々な仕事をしています(注6)。

外務省に就職した場合、数年間国内で研修をしたのち、それぞれの言語を習得するため海外留学に行き、文化や歴史などを学びます。言語習得後、各国の在外公館へ配属されます(注7)。国と国の架け橋のような役割のため、コミュニケーション能力や交渉能力が必須となる仕事です。

・JICA
JICAはODAの実施機関である政府系機関で、開発途上国の支援を行っています。JICAは世界90カ所以上に拠点を持ち、150以上の国や地域を協力対象にしています。事業内容も多岐にわたるため、大学や民間企業、地方自治体などと連携をした政策実現から、開発途上国での現場仕事まで、多様な業務があります。

JICAは開発途上国の「国創り」のため、数十年後を見据えた長期的で真に求められる国の基盤づくりに取り組むことができる点が大きな特徴です。1900人以上の職員から成り立っているJICAでは、部署がいくつかに分かれています。勤務地は本部(東京)・国内拠点・海外拠点に分かれ、2~4年ごとに国内外問わず異動があります。JICAでは中途採用の他に、新卒採用を学部学科を問わず募集しているので、職務経験の有無に関係なく、国際協力の分野にチャレンジすることができます(注8、注9)。

・JBIC
JBICは、Japan Bank for International Cooperation(国際協力銀行)の略称です。JBICは日本の政策金融機関として日本及び国際経済社会の健全な発展に貢献するため、民間金融機関を補完しつつ、大きく5つの分野の業務を行っています。

具体的には、海外での資源開発や産業の維持や向上、インフラ開発、地球温暖化のための環境保全活動などが挙げられます(注10)。社員の方のインタビューから、JBICで働くことで金融やインフラなどの専門知識が付き、グローバルイシューについてより身近な場所で当事者として携わることができることが特徴です(注11)。JICA同様、新卒採用を行っています。。

国際協力NGO

アフリカ、ルワンダの支援地訪問ツアーに同行したワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフ


政府が中心となった国際機関以外にも、国際協力を行うための組織にNGO(Non-Governmental Organizaton (非政府組織))があります。私たちワールド・ビジョンだけでなく、国境なき医師団やグラミン銀行、セーブ・ザ・チルドレンなどが挙げられます。国内では一般企業と同じように総務、会計、広報、プロジェクトの企画立案や、活動のための資金調達をしています。海外ではプロジェクトの実施のため、現地スタッフのマネジメントや、関係するパートナー(現地政府、コミュニティ、国際機関、日本大使館など)との折衝・調整に関する業務などを行っています(注12)。

それぞれのNGOで行っているプロジェクトや活動範囲が異なる点が特徴として挙げられます。また、活動するための資金調達が重要な業務にもなるため、行っている活動を発信することも大切な仕事のひとつです。

青年海外協力隊


青年海外協力隊とはJICAが実施しているボランティア派遣制度です。駅の広告やテレビのコマーシャルなどで見かける方も多いのではないでしょうか。そんな青年海外協力隊は1965年に発足して以来、約90カ国で4万人以上の隊員を派遣してきた実績と歴史があります。

応募対象者は20~39歳です。2014~2016年度の帰国者の年齢層を見ると26~30歳の参加者が多く、就職をして身に着けたスキルを国際協力に活かす社会人の方が多いのが分かります(注13)。120以上もの職種で募集を行っており、資格や専門知識の必要なものから不要のものまで幅が広いのが特徴です。そのため自分の経験や知識、特技から職種を絞ることが可能です。年に2回、春と秋に募集期間が設けられており、派遣期間は1~2年の長期のものと、1カ月~1年ほどの短期のものがあります(注14)。

企業(開発コンサルタント、CSV部門)


次に、国際協力関係の活動に取り組む企業と開発コンサルタントについて紹介します。近年、国際協力は政府系の機関など以外に企業でも取り組まれるようになっています。社会問題をビジネスで解決するソーシャルビジネスを行う企業もあります。

また企業の中で、CSV(Creating Shared Value)という考えが注目されています。CSVは日本語で「共通価値の創造」と訳されます。これは社会的価値を生み出すことで、企業が新たに経済的価値も享受し、社会と経済もどちらも発展させることができるという考えです(注15)。日本の企業では、キリンホールディングスが食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指してCSV事業に取り組んでいます。CSVの考えを取り入れることで、企業が身近な場所から問題解決のために取り組み、SDGsの開発目標達成にも寄与することができます。

開発コンサルタントとして国際協力に携わるキャリアも考えることができます。開発コンサルタントとは、政府から開発協力をする際に、必要な専門的な知識やスキルを開発現場に提供する人のことを指します。規模や内容の幅も広いため、開発コンサルタントは、様々な領域をカバーした技術力と専門性が必要になります。国際機関の仕事は企画・立案やプロジェクトの運営がメインですが、実際に現地で調査を行い具体的に作業をするのが開発コンサルタントの仕事です(注16)。


このように国際協力の仕事には様々な職種があることが分かりました。
組織などによって採用条件や職種も異なるため、具体的に携わりたい組織などがあれば、実際にそこで働く方などから話を伺ったり、事前に情報収集をしたりすることも大切ですね。国際協力に携わる仕事は言語能力以外にも、ある特定の分野での知識や経験が重要になることから、希望のキャリアに向けて着実に経験を積むことが大切ですね。

ワールド・ビジョンでの国際協力の仕事

資金集めのためにマラソン大会に参加するワールド・ビジョンのスタッフ


ワールド・ビジョン・ジャパンでは約80名のスタッフが国際協力の現場で働いおり、業務の内容は大きく3つに分けられます。1つは途上国で実施する事業の調整・管理を行う事業管理部門である支援事業部、2つ目は日本国内でファンドレイジングや広報を行うマーケティング部門(マーケティング第1部・第2部)、3つ目が財務・経理や人事・総務・ITなどの管理部門(サポートサービス部)の業務です。
これら3つの主な仕事内容と、さまざまな国際協力への携わり方を紹介します。

事業管理

まずは支援地域での事業管理を行う支援事業部から紹介します。
支援事業部には約30名のスタッフが在籍しています。支援事業部は、担当の支援地域と、緊急人道支援に関する課に分かれています。それぞれの地域における開発援助事業(水衛生、教育、保健、栄養、生計向上)の企画・運営管理・モニタリング・評価をしています。日本政府(外務省)やJICA(国際協力機構)、国連機関等と連携した開発援助事業にも取り組んでいます。また支援事業部では、アドボカシー担当者が市民社会、政府への働きかけを行っています。

マーケティング(ファンドレイズ)

2つめは日本国内でファンドレイジングや広報を行うマーケティング部門(マーケティング第1部・第2部)です。ファンドレイズとは、民間の非営利団体が活動のための資金を個人や民間、政府から集めることを意味します。私たちワールド・ビジョン・ジャパンもこのファンドレイズを通してお預かりしたご寄付で日々の活動をしています。ワールド・ビジョンという団体をより多くの方に知っていただくための広報・広告活動に加えて重要なのは、すでに寄付をくださっているご支援者の皆さまへの報告と、問い合わせに対する対応です。

活動報告のイベントや、支援地訪問ツアーの企画・実施もしています。個人のご支援者に加え、企業の方からのお問い合わせにも対応しています。スタッフだけでは担い切れない業務をボランティアの皆さまに助けていただいています。お預かりしたご寄付を間違いなく入金処理すること、マーケティング戦略を決めるための分析・企画も重要です。マーケティング部のスタッフは、こうした多岐にわたる業務を担当しています。

管理部門

3つめはワールド・ビジョン・ジャパンの組織を支える管理部門、サポートサービス部です。現在は約10名のスタッフがサポートサービス部で主に組織の財務や総務の役割を担っています。そのため、日々の業務は一般的な企業と変わらない部分もあります。採用や育成・評価、給与の支払や税金・社会保険関係の手続き。法人として必要な総会・理事会の開催、登記や年次の報告。文房具からサーバーなどの大きな機器に至るまで、さまざまな調達など。NGOならではといえば、支援地への駐在員の派遣に関わる業務はもちろん大切な仕事です。

日本の支援者の方からのあたたかい想いが込もった支援金を適切に管理することも重要な仕事です。財務や経理の仕事はお金の計算や知識だけが必要と思われがちですが、私たちの活動は寄付から成り立っています。そのため、寄付がどのように使用され、子どもたちにどんな影響を与えているのか、会計の透明性と説明責任が求められます。財務・経理課は、信頼できる質の高い業務を遂行し、どんなときでも寄付者の方に説明責任を果たせるように努めています。

国際協力に携わるさまざまな方法

インドネシアで支援を行うワールド・ビジョンのスタッフと地域の子どもたち


国際協力に関心がある方の中には、高いスキルや知識がなかったり、収入の面で不安を抱いたりしている方も多いかもしれません。たしかに国際協力の中には高い専門知識を必要とする仕事も多くあります。けれども、国際協力に携わるうえで重要なのは、世界をより良くして、世界で起こる問題を解決したいという「想い」です。一人ひとりがその「想い」から何か小さなことでもアクションを起こすことが国際協力の力になります。ここでは、2つの国際協力への関わり方を紹介します。

・インターンやボランティアスタッフ
ワールド・ビジョン・ジャパンでは正式なスタッフをはじめ、インターンボランティアの受け入れを行っています。インターンやボランティアはワールド・ビジョン・ジャパンの日本オフィスで仕事を行います。国際機関では週5日のインターンですが、ワールド・ビジョン・ジャパンのインターンは週1日から始めることができ、学業との両立もできます。インターンの仕事は、翻訳や書類作成、イベントの企画・運営、コンテンツ作成、SNS運用、WEB分析、進行中の案件に関わったりと様々な業務を経験することができます。インターンをすることで改めて自分の興味・関心、将来のキャリアを考える機会になります。

また、ボランティアとして関わることもできます。私たちの活動は、現在約420名のボランティアスタッフの方に支えられています。ボランティアの方には主に事務の仕事や開発途上国の子どもたちからの手紙の翻訳(ご自身がチャイルド・スポンサーシップの方のみ)をしていただいています。

ワールド・ビジョン・ジャパンのオフィスは子どもたちの困難な状況を変えたいと思う方々の熱い気持ちで溢れています。「社会貢献や国際協力に関心があり、子どもたちや世界のために何かしたい」という思いを持った方をお待ちしております。

社内のスタッフやインターンが日々ブログを書いています。ワールド・ビジョン・ジャパンの社内やスタッフの雰囲気を知ることができます。ぜひご覧ください。

・寄付
ワールド・ビジョン・ジャパンに寄せられる資金の5割は、チャイルド・スポンサーシップという継続寄付によるものです。2019年度は、48,426人の方がチャイルド・スポンサーとして継続的に寄付をお寄せくださいました。
チャイルド・スポンサーシップとは、支援地域の人々が、子どもの健やかな成長のために必要な環境を整えていくことを支援するプログラムです。

チャイルド・スポンサーシップを通じて世界のために活動をしませんか。

リンクチャイルド・スポンサーシップについて詳しく知る


チャイルド・スポンサーシップは下記から申し込みください。

チャイスポ申込み2



※このコンテンツは、2020年4月の情報をもとに作成しています。

参考資料

※1 JICA:国際協力とは外部リンク
※2 立命館大学:国際機構の仕事外部リンク
※3 外務省:国際機関で働こう外部リンク
※4 外務省:国際機関で働くために外部リンク
※5 外務省:開発協力、ODAってなんだろう外部リンク
※6 外務省:外務省ってどんなとこと?外部リンク
※7 外務省:日本の未来を紡ぐ、未来を創る外部リンク
※8 JICA:組織概要外部リンク
※9 JICA:仕事内容外部リンク
※10 JBIC:国際協力銀行の役割と機能外部リンク
※11 JBIC:職員が語るJBIC REAL DAYS外部リンク
※12 WVJ:NGOスタッフが見た光外部リンク
※13 JICA:帰国者の概要外部リンク
※14 JICA:JICAボランティア事業外部リンク
※15 トーマツ企業リスク研究所:共通価値の創造外部リンク
※16 一般社団法人海外コンサルタンツ協会:開発コンサルタントとは外部リンク

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