2014.05.15
昨年11月にフィリピンを襲い6300人の命が犠牲になった台風30号の被災から、5月8日で半年を迎えました。皆さまには緊急支援募金を通して、またチャイルド・スポンサーシップの支援を通してフィリピンをご支援をいただき、心より感謝申し上げます。
この半年の緊急支援状況:【フィリピン台風第11報】
3月15日~25日の10日間、ワールド・ビジョン・ジャパンのスタッフ2名がフィリピンを訪問し、チャイルド・スポンサーシップを通して日本の皆さまにご支援いただいているレイテ、サマール地域の状況を確認してきました。
レイテとサマールは、台風30号によって最も大きな被害を受けた地域でした。もともと貧しかったこれらの地域では、今回の被害で新たなニーズが生まれ、長期的な復興支援の必要性がますます高まっています。
今回の訪問では、地域の方々から現状について直接お話をうかがい、行政関係者や現地スタッフと話し合いの場を持つことによって、台風前までの支援計画を見直すことが主な目的でした。
厳しい状況の中、お互いを励ましながら前に進もうとしている地域の方のたくましさと、子どもたちの明るい笑顔が印象に残る訪問となりました。
以下、現地の様子を報告させていただきます。
支援地域の訪問には、フィリピンの首都マニラから国内線で1時間半ほどの距離に位置するレイテ島のタクロバン空港を利用します。海岸に面するタクロバン空港は台風30号で大きな被害を受け、いまだに電気が復旧していない中で営業をしていました。
サマールとレイテ地域を担当している現地スタッフ(各4人、合計8人)は、タクロバン市内にある雑居ビル2階の事務所を共有しながら働いています。
事務所がある地域にはたくさんの商店が並んでいますが、そのほとんどは看板が壊れ、シャッターが下りていました。スタッフによると台風前の約2割程度しか営業が再開できておらず、物価は約2倍に高騰しているそうです。
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日本のチャイルド・スポンサーの皆さんに支援いただいているレイテ地域開発プログラム(以下、ADP)は、レイテ州タクロバン市中心部の現地事務所から車で30分~1時間程度の範囲にある6つのバランガイ(村のような単位)が対象地域となっています。
同じく現地事務所から車で1時間半ほどの範囲にあるサマールADPも、6つのバランガイが対象地域となっています。
今回は、レイテADPで5つ、サマールADPで2つのバランガイを訪問しました。
最初に訪問したレイテ地域の小学校は、台風で吹き飛んでしまった屋根がまだそのままになっていました。学校の敷地内に設置された仮設テントで授業が再開できているそうで、通ってきている子どもたちは元気いっぱいの笑顔で挨拶をしてくれました。
レイテ、サマール両地域の多くの学校では11月・12月に授業ができなかった補講として土曜日にも授業をしているのに加え、4月の2週目まで延長して授業を実施する学校もあるとのことでした。
(通常は3月の第2週で授業が終了、5月末まで夏休みで6月から新学期が始まる)
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小学校の先生と地域の方々に、台風後の子どもたちの様子を聞いたところ、
・学校への出席率は、3月現在はほぼ台風前の水準に戻っている
・熱を出したり下痢をする子どもの数が増えた
・強い雨や風を怖がるようになった子どもがいる
といった意見が聞かれました。
チャイルド・スポンサーシップの支援とは別に、ワールド・ビジョンの緊急支援チームが運営している、「チャイルド・フレンドリースペース」で、子どもたちの心のケアが実施されていることも聞きました。
レイテADPに住む10歳の女の子、クリスティンちゃんの家を訪問しました。
クリスチャンの家は台風で全壊してしまいましたが、ワールド・ビジョンからの支援資材と壊れた家の残りを使って修復した家で生活を続けていました。
クリスティンちゃんは、台風前にスポンサーから受け取った手紙とプレゼントをクローゼットの奥に大切にしまっていました。台風でも紛失せずにに見つかったお手紙とプレゼント(千代紙でできた日本人形)を、嬉しそうに見せてくれました。
5歳の時に母親を亡くし、祖母と暮らしているクリスティンちゃんにとって、日本から自分を応援してくれるチャイルド・スポンサーの存在は大きな励ましになっているそうです。
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「台風で何もかもを失って途方にくれていたとき、ワールド・ビジョンが配ってくれた支援物資ひとそろいのセットは本当にありがたかった。水や食べものだけでなく、毛布、鍋、スプーンなどの日用品まで入っていた。こんな完璧なセットを支援してくれた団体はほかにはなかった。支援をしてくださった皆さんに、どうかお礼を伝えてください!」
こう話してくれたのは、チャイルド・スポンサーからの手紙をチャイルドに届けたり、チャイルドの家庭を定期的に訪問するのに協力くださっているボランティアの方でした。
ワールド・ビジョンは2009年からこの地域でチャイルド・スポンサーシップによる活動を開始しました。地域のボランティアの皆さんと現地スタッフは、今でこそ一緒にテーブルを囲んで活発な意見のやりとりをしていますが、支援開始当初は「何か質問は?」とスタッフが聞いても誰も発言をせずに沈黙が続いていたそうです。
チャイルド・スポンサーシップの活動を進めていくためには、地域の方の理解とボランティアの皆さんの協力が不可欠です。
今回のミーティングで、スタッフと地域の方の良好な関係にある様子が伝わってきました。その秘訣を聞いてみました。
Be true. Be a real friend. We know about family each other.
「正直であること。本当の友人になること。
私たち、お互いの家族のことも知っているのよ」
との答えが、ぱっと返ってきたのが印象的でした。
明るい笑顔で感謝の言葉を発してくださる地域の皆さんでしたが、「困っていることはどんなことですか?」という質問に対しては表情を曇らせ、以前から厳しかった生活環境が台風でさらに悪化している様子を少しずつ話してくれました。
「台風直後はがれきを片付ける仕事で収入があったが、それも終わってしまった。
このままでは、とても家族を食べさせていかれない」
「緊急支援の食糧があった時期は、子どもの体重が増えました」
「乗り合いバスが台風で壊れてしまった。車の支援はしてもらえないだろうか」
サマール地域では、台風30号の被災前から農業の収入では家族を十分に食べさせるのが厳しい世帯が少なくありませんでした。
被災後、苗や種子の値段、農具のレンタル費用が高騰しており、農業の再開を難しくする要因となっています。
厳しかった生活は、さらに困窮の度合いを増しています。
サマール、レイテ地域での活動は、2009年に初期計画を作るところからスタートしました。
地域住民の方と現地スタッフの間で少しずつ信頼関係を構築し、2年間の準備期間を経て2012年からようやく「第1期」と呼ばれる活動を開始したところで、今回の台風30号が発生しました。
今回の訪問と現地スタッフとの話し合い結果をふまえ、台風前に計画していた支援期間と支援分野を見直しました。
見直し後の支援計画:【フィリピン台風第12報】
サマール、レイテ地域の訪問後、現地事務所で打ち合わせの時を持ちました。支援計画の見直しに関する話し合いに加え、日本とフィリピンのそれぞれの状況を共有しました。
日本からは、チャイルド・スポンサーの皆さまがどんな思いを持って支援をしてくださっているかを説明しました。特に、台風直後にチャイルドと家族の安否を心配して多くの問合せが寄せられたこと、無事を報告できたときの喜びを具体的な声とともに紹介させていただきました。
現地スタッフからは、今でも停電が起こること、インターネットの接続環境が非常に悪いことを実際の画面を見ながら説明を受けました。
また、平日は単身赴任で事務所のそばに住んでいるスタッフ、サマール地域のある家庭に間借りをして働いているスタッフがいることも聞きました。
「僕たちは、あの台風の生き残り。
残された者には、何かきっと役割があるのだと思う。
支援してくださるチャイルド・スポンサーの皆さまに感謝して、
これからも頑張っていきます」
こう話してくれたのは最年少(27歳)のレイジースタッフでした。
1年前まで公務員という立場で社会福祉に携わっていたレイジースタッフは、ある仕事でワールド・ビジョンのスタッフと一緒に働く機会があったそうです。公務員の同僚や上司とは価値観のギャップを感じていた彼は、ワールド・ビジョンのスタッフが「貧しい人とともに働く」姿勢を持っていることに共感し、現在に至っているそうです。
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