2014.05.16
2013年11月8日に発生し、フィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号(ハイヤン)。最も被害が大きい地域の一つであるレイテ島とサマール島で、ワールド・ビジョン・ジャパンは2009/10年からチャイルド・スポンサーシップによる支援を行ってきました。
フィリピン国内でも貧困度の高い両地域は、高い乳幼児死亡率(14.2%、サマール)や低い就学率(小学校66.96%、レイテ)など多くの課題を解決するため、支援では、教育、経済開発、保健衛生、リーダーシップ育成の分野に取り組み始めていました。
地域住民の方と現地スタッフの間で時間をかけて信頼関係を築き、積極的な参加を得ながら、少しずつ取り組みの成果が芽生えていた矢先に、台風30号の直撃を受けました。
被災後、ワールド・ビジョンは支援計画を一から見直し、2014~15年の2年間を台風からの復興期間と位置づけ、右図の計画に基づいて支援を実施することにしました。
特に、行政機関による支援が届きにくい子どもたちと人々を支援することを目指しています。
日本人スタッフによる現地レポート
レイテ、サマールの支援地域は内陸にあるため、建物の被害の多くが強風によるものです。家屋が全壊/半壊してしまった人々は、自分たちで拾い集めた廃材や防水シートなどを使って立て直した家屋で生活していますが、強度は低く、次の台風に耐えうるものではないことは明らかです。
ワールド・ビジョンでは、2つの地域で台風により家屋が全壊した約660世帯に、より強度の高い家屋(Core Shelter)を支援します。これらの世帯は以下の基準に基づき、支援地域の人々との話し合いのもと選出されました。
・自分たちの収入だけでは家屋を再建できない
・最も弱い立場に置かれた世帯であること(例.片親、子ども世帯、高齢者や障がい者、妊娠中・授乳中の女性がいるなど)
・5歳以下の子どもがいる世帯
・他の支援機関等から、シェルター支援を受けていない世帯
ワールド・ビジョンが資材を支給し、家屋の建設は支援地域の人々自身が行います。今回の台風により多くの建物が強風により全壊/半壊した要因の一つは、設計図通りの建設が行われていないことやずさんな施工管理にあると言われています。そのためプログラムでは、フィリピンの労働雇用省技術教育技能教育庁(TESDA)の協力を得て、支援地域の代表者約30名に家屋建設のトレーニングを実施します。彼らがトレーニング後それぞれのコミュニティに戻り、他の世帯の家屋建設を中心となって進めていくことを目指しています。加えて、家屋が半壊した300世帯以上に、家屋修復のための資材を支給する予定です。
レイテ、サマールで実施してきた、貯蓄・融資組合(CoMSCA)の活動を引き続き実施します。CoMSCAは、コミュニティ内の有志メンバー十数人によって構成されています。メンバーは週に一度集まり、それぞれ少額を出し合いグループとして貯金をし、その貯金を家族の必需品(例.子どもの学用品や、食糧、薬など)の購入や非常事態(例.家族や親族の事故、病気、死亡など)が発生した際に、低利で融資を受けることができます。
CoMSCAの活動は、メンバー個人にとっての経済的な支援になるだけではなく、コミュニティ全体としての回復力の底上げにつながります。ワールド・ビジョンが支援している他のADPでは、CoMSCAのメンバーたちが台風に備えるためグループの貯蓄から非常食等を購入し、また台風後には、倒壊した家屋を再建するための融資を受けました。金融機関などから融資を受けることが難しい人々にとって、災害で自分たちの生計手段も被害を受けているなか、低利で融資を受けられるシステムが自分たちのコミュニティにあることは、生活を再建していく上で大きな意味を持ちます。
台風前、両ADPでは計11のCoMSCAグループが活動していました。うち2つのグループは、小規模のビジネス(洗濯石鹸、食器洗剤などの製造・販売)を行っています。今後は既存のグループの活動を継続しつつ、新しいグループも立ち上げる予定です。
被災した子どもたち(幼稚園~高校)への学用品や、学校への教材支給を実施します。特に教材支援については、「行政機関からは教師に対する支援がないので、とてもありがたいです」という声が寄せられています。子どもたちが安心して6月からの新学期を迎え、学校生活を送れるようになることを目指しています。
2016年度以降は、支援地域の状況をふまえつつ、より長期的に子どもたちの健やかな成長を支える地域開発プログラムに移行します。しかし、台風による被災をふまえ、より多くの支援を子どもたちに届けられるよう、当初の計画よりも予算規模を拡大し、支援期間も2年間延長して2027年まで実施します。
台風で大きな被害を受けた地域の再生には、長い年月が必要です。ワールド・ビジョン・ジャパンはチャイルド・スポンサーシップによる息の長い支援で、今後13年という歳月をかけて、地域の再生と、子どもたちの成長を支えていきます。貧困度が高く、自然災害が頻発する両地域の子どもたちが少しでも安心して、健やかに成長できる環境を目指して、地域の人々に寄り添った、息の長い活動を実施していきます。
子どもたちの未来を支えるチャイルド・スポンサーシップの活動の輪に、加わっていただけませんか?