【7年間の事業が終了!】歴代担当者が振り返る、シリア難民とヨルダン人の子どもたちへの教育支援(後編)

(2021.08.02)

左から、國吉、渡邉、服部

2014年4月に開始した「シリア難民およびヨルダン人の子どもたちへの教育支援事業」が、2021年6月をもって終了を迎えました。
事業終了に際して、ヨルダンに駐在し、現場に最も近いところで事業に携わった歴代担当者3人に、座談会形式のオンラインインタビューを実施。今だから言える当時の話や、難民支援への思いを聞きました。

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印象に残っている、人との出会い

(司会)この事業を通して多くの方に出会ったと思いますが、特に印象深い出会いはありましたか?

(國吉)事業の立ち上げが落ち着いて、本格的に子どもたちへの支援に携わったのは3カ月間ぐらいだったのですが、その短い間でも子どもの目がどんどん変わっていったのは覚えています。

ある時、ヨルダンの教育省の方が補習授業の視察に来られたのですが、子どもたちが「アルファベットが分かるようになった」とか1人ずつ発表している様子をご覧になって、その方が泣いてらっしゃったんです。「成果がこんなにすぐに出るなんて」と。

教育省とは調整で苦労しましたが、ヨルダンという国が一丸となって、シリア難民の子どもも含めたヨルダンにいるすべての子どもをサポートしていこうと本当に思っているんだな、私たちと思いは一つなんだな、と感動しました。

(渡邉)私は、先生方との出会いが印象深いです

補習授業をしてくれている先生や、公立学校で活動の場所を提供してくれている校長先生は、「どんな形でも子どもたちのためになることを」と、陰でずっと私たちの活動を支えてくださっていました。教育省と交渉してくれたこともありました。
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ワールド・ビジョンのスタッフだけではなくて、そういう先生方や教育関係者たちと思いはひとつなんだなと感じていました。

校長先生と渡邉スタッフ
校長先生と渡邉スタッフ

(服部)私は、事業の終了に向けた知見移譲の一環として、補習授業の方法やあるべき姿を他団体とともにまとめる作業をしていました。その中で、ヨルダンにおける難民への教育分野をずっとリードして来られたアフマドさんという方と出会いました。

シリア危機が10年にもなり支援するNGOも減ってきている中にあっても、難民支援や教育支援へのパッションや使命感に溢れる方で、みんなが慕ってついていく感じの方でした。

でも先日、病気で急死してしまわれて...。「アフマドさんの思いをみんなで引き継いでいかないと」と、今でも私たちに影響を与え続けていらっしゃいます。こういうパッション溢れる方との出会いは忘れられません。

いま、改めて思うこと

(司会)3人が挙げられた方々は皆、子どもたちのために何かしたいという思いが強い方々ですね。そういう方々と一緒だったからこそ進めてこられた事業なのだと、改めて感じます。

それでは最後に、難民の方々の現状や支援について改めて思うこと、または日本の皆さまへのメッセージをお願いします。

(國吉)「難民」というと、日本人には想像しにくいと思います。でも少し前までは、シリアの人たちも自分が難民になるなんて想像もしていなかったんだと思います。

整然とした美しい街並みが広がる紛争前のシリア
整然とした美しい街並みが広がる紛争前のシリア

私のシリア人の友だちは、「シリアはすごくいい国で、ご飯もおいしくて、人も良くて、景色もきれいで、いつでも遊びに来て!」と祖国に誇りを持っています。事業を立ち上げたときから、「国に帰りたい。いつでも帰りたい」という声は、大人からも子どもからもみんな聞かれました。

帰りたいけど帰れない、そういう思いを10年以上も持ち続けながら生きている人たちがいることを、他の方にも知ってもらいたいです。

ヨルダンのシリア難民キャンプで遊ぶ子どもたち
ヨルダンのシリア難民キャンプで遊ぶ子どもたち

(渡邉)あるシリア難民のご家庭を訪問した時、お母さんは「故郷に帰りたい」と言っていました。「家が壊れているのは知っているけども、自宅のがれきの隣にテントを張ってでもいいから故郷で暮らしたい、故郷ってそういうものよ」と。そういう思いを抱きながら、難民の方々は暮らしています。

補習授業の子どもたちだってそうです。私は、補習授業を終えた子どもたちを、本当はもっと長く見守ってあげたいです。13歳に達して卒業したからといって、何のサポートもない世界に放り出されるのは、やりきれない部分もあります。

支援とまではいかなくても、「私はあなたを気にかけているよ、見守っているよ」ということを分かってもらえる何かがないかと考えています。

そして、将来、平和が訪れてシリアに帰還できるようになれば、帰還支援という新たなニーズも出てくるでしょう。私はそういう方々を引き続きサポートしていきたいです。紛争が終わったから良かった、ではなく、復興までちゃんと関わってあげられるような世の中になっていると嬉しいですね。

また、今、私はシリア国内に残っている避難民の方々への支援に携わっていますが、シリアから逃げられず戦禍の中で生きざるを得ない人々がいることも、もっと知っていただきたいです。難民だけではなく、私たちの目に留まることの少ない国内避難民のことも気にかけられるような社会になるといいなと思います。


(服部)最近会ったシリア人のお母さんも、「シリアに帰りたい」と言っていました。でも一方で、「シリアは以前とは違う状況になってしまって、帰りたいと思える場所ではなくなってきている」とも言っていて、ものすごい葛藤と闘っていると感じました。

じゃあずっとヨルダンに居られるかと言うと、物価も家賃も高いしヨルダン人からはいつまでも外の人と見られるしで、本当に未来が描きにくい環境なんですよね。そんな状態が10年も続いて、「希望ってどうやって持てばいいんだろう」という方が増えているように感じます。なので、渡邉さんが言っていた「見守る人」の存在がなくならないというのは、とても大きなことだと思います。NGOや国連の支援も減ってきています。

今回、JPFからいただく資金を使った事業は終了しますが、日本の皆さまからいただいた募金を使った事業は続きます。これは、「日本の人々はあなたたちを見守っているよ」というメッセージでもあるので、これからもサポートを続けられるのは大きいと思っています。

(司会)シリア難民支援に対する3人の熱い想いが伝わってきました。

(服部)これまで3人で顔を合わせていても、ここまでしっかりこの事業について話をする機会はありませんでした。今日、國吉さんと渡邉さんの話を伺って、改めて、それぞれが難民の方々のために全力で走ったバトンリレーだったんだなと実感しました。

これからも、人道支援家として関わる人道危機のその時々の状況に合わせたベストな支援を届けていけるような働きができればいいなと思います。

ヨルダン教育支援のこれから

新型コロナウイルス感染症の影響により、避難生活を送るシリア難民を含め、ヨルダンに暮らす子どもたちの教育環境は危機的状況にあります。JPFの助成は終了となりますが、引き続き、皆さまにご支援いただいた募金によって、子どもたちが学習の中断によって取り残されることのないよう、補習授業による教育支援を継続していきます。

子どもたちが未来に希望を持てるように、難民支援募金にご協力ください。
リンク難民支援募金について、詳しくはこちら


今夏、未来ドラフト2021というアイディア・コンペティションを通じて、シリア難民やヨルダンの子どもたちと日本の若者をつなぐアイデアのエントリーを受付中です(応募締切:2021年8月15日)。シリアの復興やヨルダンの未来を担う子どもたちの教育機会を支え、より良い未来を創る一員として、ワールド・ビジョンは活動を続けていきます。

未来ドラフト2021

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