2012.07.19
チャイルド・スポンサーシップによる1999年から13年間の継続的なご支援により、地域の環境が様々な形で整えられました。心からの感謝のメッセージとともに、地域での活動をご報告いたします。
【支援地概要】
カビティゴッラワ地域開発プログラム(以下ADP)は、スリランカ北中央州アヌラーダプラ県23の郡の内の一つ、カビティゴッラワ郡を対象に1999年から支援活動を実施してきました。この地域では収入の90%を溜め池灌がいの稲作に頼っていますが、トウモロコシ、ヒヨコマメ、トウガラシやその他の野菜栽培も収入源になっています。
ADPは4つの村から始まり、2001年にはカビティゴッラワ郡の26村の内13村を支援するまで地域を拡大して活動してきました。
支援開始前は、大部分の世帯が貧困ラインを下回る生活を余儀なくされていただけでなく、内戦(※)が拡大する不安から、精神的にも将来に希望を見いだせない不安定な生活を送っていました。その中で最も脆弱な存在であったのは子どもたちで、学校へ通うことは困難であり、全く学校へ行ったことがない子どもの数が7%に上っていました。
また、社会的な問題も大きく、特にアルコールの高い消費量や、夫による妻への暴力、高い自殺率など多くの問題を抱えていました。
こうした中、カビティゴッラワADPでは、保健衛生、教育、経済開発、市民組織の育成などの面で、支援地域の人々が持続できるような開発が行われ、地域の子どもたちが健やかに成長できるような地域になることを目指して支援活動を行って来ました。
支援の結果、就学率がほぼ100%となり、中退生(ドロップアウト)が減少しました。中学卒業レベルの試験を受ける生徒の割合が80%に伸び、高校卒業レベルの試験を受ける生徒の割合は50%にまでなりました。また、奨学金を受けることで、高等教育に進む生徒の数も増加しました。
5年生の奨学金試験に合格したサチニちゃん(10歳)のことは、学校はもちろん、また村全体の誰もが知っています。試験でよい成績をおさめたサチニちゃんが、学校の制服を着て誇らしげな笑顔で写っている写真は、学校の校長室に掲げられて、ほかの生徒たちの大きな励ましとなっています。
ヤカウェワ小学校は小学1年生から5年生まで、26人しか生徒がいない最も貧しい家庭の子どもたちが通う村の学校です。少しでも余裕のある家庭の子どもたちは村の外のもっと良い学校に通っています。以前、この小さな学校では、奨学金試験に合格することなど考えられず、子どもたちも夢を持つチャンスなどありませんでした。
ワールド・ビジョンが学校や子どもたちに勉強に必要な学用品や教材などを支援した結果、子どもたちの学力はどんどん向上していきました。
「この小学校の生徒が試験に合格するのは、学校が始まって以来初めてのことです。ほかに4人の5年生が今回試験を受けましたが、あと少しで合格できる成績でした。これは今までにない快挙です!」と、語るランジス校長。
今では、サチニちゃんの合格だけに留まらず、学校全体がさらなる合格者に期待を寄せています。
2012年6月でワールド・ビジョンの全ての活動は終了し、ワールド・ビジョンと住民委員会の間で合意書を締結し、ワールド・ビジョンが管理してきた活動や資産、書類などを移管するとともに、住民委員会が地域のさらなる発展のために中心的役割を担っていきます。合意書では、地域の最も脆弱な人々への支援が継続されるように、今後の住民委員会の利益の5%が割り当てられることが明記されます。住民委員会はローンの貸し出し事業なども行い、地域の住民の農業や住宅、小規模ビジネスなどの必要に応じた経済活動に活用されていきます。
これまでワールド・ビジョンの支援で実施してきた様々な活動をさらに発展させ、地域の子どもたちや人々の生活の改善に貢献していくことが大いに期待されます。
「ワールド・ビジョンによって、私たちは力を合わせて一致することの重要性を教えられ、2002年に住民組織であるカビティゴッラワ地域総合開発組織(KIRDO)を設立しました。以降、私たちは、子どもたちと地域の人々のためにワールド・ビジョンとともに多くの活動を行ってきました。いろいろな問題に直面し活動の中断を覚悟したこともありますが、ワールド・ビジョンはいつも私たちとともにいて、問題解決に力を貸してくれました。
スポンサーの皆さまのご支援のおかげで、ワールド・ビジョンを通して目標に向かって歩み続ける力と、勇気に溢れる地域となった私たちは、今、胸を張ってお別れを言えます。本当にありがとうございました」
「カビティゴッラワADPに住む子どもたちや、その家族の生活の変革をこの目で確認することができたことを、光栄に思っています。ADPの活動中に、30年以上続いた内戦が終結したことは、とても喜ばしい事です。
地域の人々と私たちワールド・ビジョンスタッフは、内戦による人々の悲しみを何年にもわたって見てきました。内戦という困難の中、貧困とも戦いながら進んできたこの13年を、誰もが感謝と喜びをもってかみしめています。
内戦が終わったものの傷は残っています。しかし、住民は、今、プログラム活動の"実り"を享受し自信に満ちています。子どもたちの幸せのために、プログラム終了まで続けてくださった、親愛なるスポンサー皆さまのご支援に心より深く感謝申し上げます」
さらに詳しくカビティゴッラワ地域開発プログラム最終報告書を読むにはこちら (PDF)
「"何もかも"はできなくとも"何か"はきっとできる」
※スリランカの内戦:1975年にイギリスから独立後、26年間にわたってスリランカ反政府武装勢力タミル・イーラム解放の虎(LTTE)と政府との内戦が続きました。1995年にLTTEの脅威がカビティゴッラワ郡の地域におよぶようになり、内戦が拡大し、いくつかの村でも多くの人々が犠牲となりました。政府により1997年から徐々に内戦が抑えられ、国内で避難していた住民の帰還が始まりました。ワールド・ビジョン・スリランカによる支援は、当初は避難民への緊急支援が中心でしたが、帰還民の定着と地域開発のニーズに合致したADPが開始されました。2009年5月にLTTEは敗北宣言し、スリランカ政府とLTTEの四半世紀以上にわたる内戦は事実上終わりを告げました。