【ネパール訪問報告】チャイルドが暮らす支援地域の今


2014.07.09

ネパールの西ドティADPを訪問しました

支援地域は多くの山に囲まれています

2014年4月10~19日、ネパールの西ドティ地域開発プログラム(ADP)をワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)のスタッフ2名が訪問しました。

WVJチャイルド・スポンサーシップを通して支援するADPは22カ国、56地域ありますが、その中でもとりわけ訪問に困難を伴う立地にあり、過酷な環境で子どもたちが生活しているのが、この西ドティADPです。




支援地域の子どもたちと三野スタッフ
支援地域の子どもたちと蘇畑スタッフ
ADPスタッフとWVJスタッフ(オレンジTシャツの2人)

日本から支援地域まで、約3日かかります

小型の飛行機に乗り込み、カトマンズからダンガディという街へ移動します

日本のチャイルド・スポンサーの皆さまにご支援いただいている西ドティADPは、ネパールの首都カトマンズから西に飛行機で1時間、さらに車で10時間走ります。

標高が高く、1,000m~3,000mの高低差があり、最後の約3時間は山越えです。ガードレールもなく、幅の狭い凸凹の崖路を登ってようやくADPの入口に到着します。

日本から3日間かけてやっとたどり着いたADPの入り口から、山道を車と徒歩で移動し、支援地域のコミュニティや各プログラムの現場を訪問しました。

今回の訪問は、チャイルド・スポンサーシップを通じて行っているプログラムの活動状況を確認するとともに、ADPスタッフ、コミュニティの方々とのミーティングを行うのが目的でした。

西ドティADP事務所から日帰りで支援地域へ通うことができないため、スタッフは支援地域に数日間泊まり込む形で、事務所と行き来しながら活動を進めています。

さらに、4人のDC(Development Coordinator)と呼ばれるスタッフがコミュニティに常駐し、人々と一緒に同じ生活を送りながら、活動を行っています。

この地域にはごく少数の限られた宿泊施設しかないため、日本から訪問した2名のスタッフもADPスタッフと一緒に寝泊りをさせてもらいました。

ダンガディからさらに車で7時間走ります
最後の3時間は舗装されていない山道です
支援地域の子どもたち。はにかんだ様子で近づいてきてくれました

女子寮を整備する計画がある高校を視察しました

男子学生向けの部屋。ここより少し広い一部屋で、15人の女子学生が生活しています

この地域で唯一の高校を訪問しました。

遠方から通学する学生のための寮が併設されていますが、現在、女子生徒たちは男子寮と同じ建物にある一部屋に15人がひしめきあって生活をしており、とても良い環境とは言えません。プライバシーや安全面の理由からも女子生徒が利用し続けることが難しく、勉強を続けることが困難になっています。

女子生徒が勉強に集中できる環境を整えるために、現在、ワールド・ビジョンの支援で女子寮の整備計画が検討されています。

同校の先生や運営委員会のメンバーたちは、

「地域の中で特に女子教育が大切だと考えているので、女子寮が建設されることを望んでいます。また建設後、きちんと地域で運営していくことができるようにしていきたいと考えています」

と話してくれました。



生計向上支援を受けている家庭を訪問しました

立派な卵を見せてくれました

支援地域では、貧困のため、働き盛りの男性の多くが都市部やインドへ出稼ぎに行っているため、残された女性は家庭を守るだけではなく、農業などの重労働も一手に担っています。

また、山岳地帯のため農業に適した土地が少ない上、生産性も低く、食糧を確保することがなかなか難しいという現状があります。

ワールド・ビジョンでは、農家へのトレーニングや家庭菜園の実施、若者を対象にした職業訓練、ヤギやにわとりの支給などの生計向上支援を行っています。

子どもたちも積極的に活動に参加しています

子どもクラブの代表メンバーに色々な話を聞きました

2012年よりワールド・ビジョンの支援でスタートした「子どもクラブ」には、西ドティ地域に暮らす12~17歳の子どもたち約50人が参加しています。

子どもクラブでは、メンバーから毎月20ルピーずつを集めて運営費とし、様々な活動をしています。例えば、毎週金曜日には「トイレキャンペーン」を行い、きちんとトイレを使うよう地域の人々に呼びかけています。また、壁新聞を作成し、地域に暮らす大人や子どもたちへ啓発活動を行っています。

クラブの中心メンバーの子どもたちに話を聞くと
「これまでは、人と話すことも恥ずかしかったけれど、
子どもクラブに参加するようになって積極的に話せるようになりました。
もっとたくさんの子どもたちに入ってほしいと思っています」と語ってくれました。
地域の大人だけではなく、子どもたちも自分たちの住む地域が良くなるよう、主体的に活動に参加している様子が伺えました。

誕生日カードを受け取ったマヤちゃん

一生懸命に絵を描くマヤちゃん

今回、チャイルドに手紙を届ける訪問にも同行することができました。

訪問したのは、マヤちゃんという10歳の女の子で、最初は日本からきたWVJのスタッフに緊張している様子でしたが、現地のボランティアスタッフから日本のスポンサーから届いた誕生日カードとプレゼントを受け取ると、とても嬉しそうな笑顔を見せてくれました。

マヤちゃんはまだ文字の読み書きが難しいため、ボランティアスタッフが手紙の内容を読み聞かせます。内容を聞いたマヤちゃんが口頭で返事を伝え、スタッフが代筆して文章を綴ります。全体が出来上がった後、もう一度読み聞かせて内容を確認し、最後にマヤちゃんがプレゼントされたペンで絵を描き、お手紙のお返事を完成させていました。

「スポンサーさんの写真が欲しい!」

チャイルドにお手紙を届けると近所の子どもたちもたくさん集まって来ました

マヤちゃん以外にも、すでに日本のチャイルド・スポンサーと手紙のやりとりをしている何人かのチャイルドに会い、話を聞くことができました。
チャイルド・スポンサーの方には、「どんなプレゼントがチャイルドに喜ばれますか?」というご質問をいただくことが多いので、何が欲しいか聞いてみました。

すると、みんなが口をそろえて「スポンサーの方の写真が欲しい!」と答えてくれました。お手紙に同封してくださるプレゼントの中でも、スポンサーの方のお写真が、チャイルドにとって何よりも特別なプレゼントとなっていることをあらためて実感しました。

また、どんな生活をしているのか、何か好きなのか、どんな方なのかなどを知りたいと教えてくれました。

野を越え、山を越え...チャイルドに手紙を届けています

トレッキングさながらの道を経て、チャイルドに手紙を届ける様子

こうしたやりとりができたことによって、チャイルド・スポンサーの方々がチャイルドを大切に思ってくださっているように、チャイルドにとってもスポンサーの方々が特別な存在であり、もっとスポンサーの方について知りたいと思っていることがひしひしと伝わってきました。

支援地域は写真のような山道も多く、このような道を何時間も歩いてチャイルドに手紙を届ける様子はトレッキングさながらです。

日本のチャイルド・スポンサーの皆さまが送ってくださった手紙は、野を越え、山を越え、チャイルドの元に届いてること、そのお手紙がチャイルドにとって大きな励ましとなっていることを確かめてくることができました。

支援くださっている、日本の皆さまの思いを伝えました

訪問の最後、支援地域内で現地スタッフとミーティングを行いました

支援地訪問日の最後には、ADPスタッフとミーティングを行い、日本と西ドティADPそれぞれの情報を共有しました。

日本からは、日本のチャイルド・スポンサーの方々はどのような思いでご支援くださっているのか、チャイルドに対してどのように思ってくださっているのかなど、日頃WVJに寄せられるお問い合わせや実際の声などからご紹介させていただきました。

西ドティADPはアジアのADPの中でも地理的にも環境的にも特に厳しい状況にあり、その中で現地スタッフが誠実かつ丁寧に仕事を進めていることへの感謝を伝えるとともに、今後の引き続きの協力についてもあらためてお願いをしてきました。

「変化が見えると、嬉しい!」

首都カトマンズにいる家族と離れ、西ドティ地域で働くディナスタッフ

出張中は、ミーティング時に限らずADPスタッフから色々な話を聞く機会があります。子どもが好きで、社会から取り残された子どもたちのために働きたくて、ワールド・ビジョンに入ったというディナスタッフ。

支援地域の小さな宿泊場所に何日間も泊まり込み、数時間かけて歩いてチャイルドの家を訪ねることも多いそうです。この地域は女性に対する差別も残っており、ADP事務所のある町でも借りられる部屋がなかなか見つからず、苦労しているそうです。

それでも、「この仕事をしていて一番嬉しいのは、どんな時?」との質問に、
「コミュニティに行って、子どもたちが自分を歓迎してくれた時や、
人々の変化が見えた時」とニコニコと笑いながら答えてくれました。


リンク 蘇畑スタッフがディナスタッフについて書いたブログはこちら

リンク 2013年、蘇畑スタッフが西ドティADPを初めて訪問した時に書いたブログはこちら


今後も支援を続けていきます

西ドティADPは始まってまだ3年ほどの新しい地域です。今後も計画に沿って、支援地域の人々、スタッフと協力しながら活動を進めていきます。

引き続き、皆さまからの温かいご支援とご協力をお願い申し上げます。