(2020.07.07)
日本からの観光地としても人気の高いベトナムは、ここ10年のGDP成長率が平均7%前後と高い経済成長率を示しています。しかし同時に国内の貧富の差が問題となっており、特に本事業の対象地域でもあるベトナム北部の山岳地帯は高い貧困率が問題となっています。
またベトナムに54あるといわれる少数民族グループは多くが父権制であり、女性の家族、地域における意思決定権が弱いと言われています。貧困とジェンダー不平等の土壌は少数民族女性の教育や知識が十分ではない状況を生み出し、他の地域に高い収入を求める思考を助長し、人身取引の被害者としてターゲットになることが多く、ベトナム国全体の人身取引の被害者の80%以上を少数民族の女性が占める一因となっています。
本事業では、山岳民族が多く暮らし、人身取引の被害が多いと報告されているディエンビエン省ムオンチャ郡、トアンザオ郡において女性と女の子が学び女性同士で情報交換することができる拠点を確保し、そこで収入向上の機会を提供するとともに、人身取引及び女性と子どもに対する暴力(以下「VAWC」)から身を守るライフスキル研修を実施します。
具体的にはニーズが特定された、
1.ジェンダー不平等(女性)
2.知識とスキル不足(女児)
3.社会的システムの脆弱性(地域社会)
の3つの分野において、それぞれ以下のような活動を計画しています。
まず活動を通して女性と女の子が各種スキルを身につけ、自信を持ち、より積極的に地域の活動に参画することができるようになります。そしてその過程において、女性と女の子が家庭や地域社会において決定権・発言権を持つようになり、最終的には自分と家族、同じ境遇にいる仲間を人身取引とVAWCから守れるようになることを目指します。
本2020年6月16日に、ディエンビエン省の省都ディエンビエンフー市で、事業の開始にあたりキックフミーティングを行いました。
新型コロナウィルス感染拡大の影響で人が集まってのイベントは5月まで禁止されており、予定より2カ月遅れての開催となりましたが、ディエンビエン省の各関係機関の協力を経て、無事開催に至りました。会議にはディエンビエン省および事業地であるトアンザオ郡、ムオンチャ郡の外務局や労働傷病兵社会局、女性同盟の幹部らが出席しました。
これらの各代表者から、ディエンビエン省や各郡における人身取引の現状や取り組みについて、ワールド・ビジョンから事業の概要について発表がなされました。その後、出席者の間で事業の活動計画について活発な議論が行われました。特にその中で、本事業が女性・女の子を暴力(人身取引を含む)から身を守るスキル、生計向上、子どもの保護システムの強化など包括的なアプローチを取っていることに対して、評価の声が聞かれました。
会議の終わりには、3年後の事業終了式では、再び皆で集まって良い成果を共有できるよう、各関係機関が積極的に協力しあっていくことが確認されました。
ベトナム駐在 崎川勝志スタッフ
ベトナムは順調な経済発展を遂げ、ハノイやホーチミンといった都市部では高層ビルの建築ラッシュ真っ只中で、市民の生活も豊かになってきています。しかし、一方でディエンビエン省のような山間部では、未だに簡易な木造の家で、道路も舗装されておらず電気の供給も限られている地域に住んでいる少数民族が少なくありません。
同じ国でも、生まれた場所により、大きく異なる生活環境に置かれている状況を目のあたりにすると、やるせない気持ちになります。山間部の少数民族は、高い所得やより良い生活に憧れ、ブローカーにそこを付け込まれ、騙され、人身取引の被害にあうケースが少なくありません。人身取引は被害者の一生をまったく変えてしまう恐ろしい犯罪です。
本事業で、山間部の女性・女の子の生計向上・エンパワーメントを図ることで、人身取引のリスクから身を守り、彼女らの一生を守っていきたいと思います。