(2023.05.01)
スーダン共和国(以下、スーダン)の基礎データ
首都:ハルツーム(ナイル川の源流である青ナイル川・白ナイル川の合流点、政治・軍の中枢)
言語:アラビア語(公用語)、英語も通用、その他 部族語多数
人種・民族:主としてアラブ人、ヌビア人、ヌバ人、フール人、ベジャ人等(200以上の民族が混在)
宗教:イスラム教、キリスト教、伝統宗教
面積:188万平方キロメートル(日本の約5倍)
人口:4,565万人(2021年、世銀)
データ出典:外務省:南スーダン基礎データ、AFPBB News
北東アフリカに位置し、アフリカ大陸第3位(2011年の南スーダン独立以前はアフリカ最大)の国土面積を誇るスーダンは、地政学的にも南北をナイル川が縦断し、スエズ運河の後背地として地中海世界・中東世界とアフリカを結ぶ重要な役割を果たしてきました。イスラム教を信仰するアラブ系住民が多い北部(現:スーダン)と、キリスト教や伝統宗教を信仰するアフリカ系住民が多い南部(現:南スーダン)など多様な民族が混在しているスーダンは、1899年からイギリスとエジプトによる共同統治下におかれ、南北を分断する植民地政策が取られていました。
1956年にイギリス・エジプトからスーダン共和国として独立する一歩手前で、北部のイスラム教徒と、分離・独立を求める南部キリスト教徒が対立し内戦が勃発。最終的に2005年の南北和平協定が締結されるまで約半世紀にわたり「アフリカ最長の内戦」と呼ばれるスーダン内戦(第1次:1955年〜1972年、第2次:1983年~2005年)が続きました。
第2次スーダン内戦が停戦に向かっていた頃、スーダン西部のダルフール地方では同じイスラム教徒の中でもアラブ系と非アラブ系が対立しダルフール紛争(2003年~2010年)が勃発。スーダン内戦を終結させようとしていた最中、これ以上の分離を認めない当時のバシル政権は政府軍による無差別虐殺を黙認し、「世界最悪の人道危機」と呼ばれました。
植民地政策の影響を受け、強権的で軍事的な政治体制が続き、首都ハルツームに資本が集中し低開発であった周縁地域に資本が投下されないことによる基礎的な生活インフラの欠如などが現在も課題として残っています。また長期間の紛争の影響を受け、西部のダルフール地方、油田地帯である南スーダンとの国境地帯では武力衝突が続き、不安定な情勢が続いています。
Reference: 外務省 わかる!国際情勢Vol.59、アフリカ日本協議会 南スーダンの独立 歴史的背景と今後の展望
2019年9月、約30年間続いた独裁政権であるバシル政権が軍事クーデターによって倒れ、新たな暫定政府が設立されました。しかし国民選挙による民生移管に向け政治的に不安定な状況が続き、一方で長期の内戦により疲弊していた国内経済は世界的な新型コロナウイルスの流行に伴いさらに悪化し、人々の生活に深刻な影響を与えています。
スーダンでは、2023年には国民の3人に1人にあたる1,580万人が人道支援を必要としています。この数は前年からも150万人増加し、2011年以降最も高い増加率を記録しています。*1
またスーダンはアフリカの中でも難民の受入人数の多い国の一つであり、国内には113万人の難民が暮らし、うち70%にあたる80万人は隣国の南スーダンからの難民です。*2 加えて、登録されている国内避難民は370万人以上*3に及び、大多数は2003年から2011年の間の南スーダン独立をめぐった内戦により故郷を追われた人々です。 このような背景により、人々は、長期間に渡って食糧不足、栄養失調、病気等の蔓延と隣り合わせの過酷な生活を送っています。
Reference: *1 UNOCHA:Sudan 2023 Humanitarian Needs Overview , *2 UNHCR:Sudan Situation Overview Map, *3 UNOCHA:Sudan 2023 Humanitarian Response Plan
ワールド・ビジョン・ジャパン支援事業部 緊急人道支援課