(2016.07.04)
2016年3月10日より、エチオピア連邦民主共和国の中北部アムハラ州にて、妊産婦・新生児の健康改善事業を開始しました。この事業は、外務省日本NGO連携無償資金協力と皆さまからの募金で、ゴンダール・ズリア、デラ、チルガ、デンビア、リボケムケムの5郡にて行われます。
いずれの地域でも、ワールド・ビジョンがチャイルド・スポンサーシップによる地域開発プログラムを実施しており、新事業との相乗効果が期待できます。
エチオピアは、周辺国からの難民の受け入れや干ばつなどの課題を抱えながらも、政府の開発計画により2005~2014年までの10年間には各年10%前後の経済成長を遂げ、同国の貧困率は、1999年の44.2%から2010年には29.6%まで改善しました。 さらに全初等教育純就学率も1999年の37%から2011年には87%へと大幅に改善し、その他の様々な開発指標にも改善が見られています。
しかし、一人当たりの国民総所得(GNI)は410米ドルと未だ最貧国の水準であり 、15歳以上の成人識字率は55%にとどまるなど、周辺の東アフリカ諸国と比べても低い水準にあります 。
母子保健は、エチオピアの中でも改善がみられている開発分野の一つですが、未だ課題が多く、2013年の新生児死亡率は、1,000人出産当たり28人(世界225ヵ国中185位) 、妊産婦死亡率は、10万出生当たり420人(世界216ヵ国中187位)と、世界でも最低水準にあります。
事業地のあるアムハラ州では、妊婦の37%が一度も産前検診を受けておらず、産科施設での分娩率は年間出産件数の11.7%にとどまっています 。
主な要因としては、医療施設へのアクセスの悪さ、保健施設の未整備、保健スタッフの医療技術・管理能力不足、地域住民の意識の低さや伝統的な慣習が挙げられます。
国際連合児童基金(UNICEF)によると、一般的に、新生児死亡の半数以上が産後24時間以内に起こっており、妊産婦死亡だけでなく新生児死亡を防ぐためにも、保健施設で分娩を行い、早期に産後検診を受けることが推奨されています 。
また世界保健機関(WHO)によると、2015年の5歳未満児死亡の約45%が生後28日以内の新生児期に起きており、妊娠、出産、新生児期への重点的な支援は、地域の母親と子どもの健康状態の改善に大きく貢献することが期待できます。
今回の事業では、保健センターでの産科棟の建設、産科・新生児ケアに関する備品の提供、医療スタッフへの研修(医療技術、施設管理)、地域の住民への啓発活動等の支援を行います。
こうした活動を通じて家庭、地域、医療現場におけるお母さんと赤ちゃんをサポートする体制を整えることで、地域の母子が継続的なケアを受け、健康的な妊娠期間を過ごし、安心して出産と子育てに臨むことができる環境を作ることを目指します。
これらの活動は、コミュニティや宗教リーダー、地域の保健センターのスタッフ、郡病院、助産師協会、郡保健事務所、アムハラ州保健省など多くのカウンターパートとともに事業を実施していきます。