(2020.03.13)
「未来ドラフト2020~わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション~」の関連イベント「アイデア発想イベント」を2020年3月8日(日)、無観客・ライブ配信型で実施し、若い世代を中心に約400名が視聴しました。また、登壇者への質問受付をデジタルサービスを利用して実施したところ、約80件の質問が寄せられ、若者の難民問題への関心の高さがうかがえました。
新型コロナウイルスの影響により、急遽、無観客・配信型に変更しての実施となりましたが、会場協力をしてくださった「esports 銀座 studio」は配信に強い最適な設備を備えており、"休校"中の今こそ、教育の機会が失われている子どもたちにデジタルテクノロジーをもって有益な情報を届けるべき、と多大なるサポートをしてくださりました。
第一部では、池上彰さん(フリージャーナリスト)が登壇し、「世界の難民問題」をテーマにシリア難民、南スーダン難民、難民受入れ国、難民キャンプでの生活などについて、ご自身の体験談も踏まえながら分かりやすく解説しました。
また、難民は「かわいそうだから助けてあげなければならない存在」ではなく「たくまくしく自立できる存在」だと話しました。池上さんがザアタリ難民キャンプ(ヨルダン)を訪れた際にそのことを強く感じたそうです。さらに、当時、現場の責任者が話した印象的だった言葉を以下のように紹介しました。
「難民をリスペクトすることが大事だ。一人ひとりプライドをもっている。援助漬けになっていると、人間としての生きがいを失ってしまう。難民キャンプでもたくましく生活ができる。その自信とともに母国に戻り、国を立て直してほしい」
難民の中にも身体能力が極めて優れている人がたくさんいて、オリンピックを目指していた人もいます。「難民だってオリンピックや国際大会に出ることができる」と知ったとき、彼ら彼女らにとってどれだけ希望となったことか、と想いを馳せながら話を終えました。
NHK報道局ディレクターで、数々の難民アスリートを取材してきた飯野真理子さんは「難民アスリートの挑戦」というテーマで講演。シリア出身の水泳選手、エチオピア出身のマラソン選手などの生活、言葉、想いを映像を用いながら紹介しました。
「難民と呼ばれるけど、私は人間で市民。故郷がない人ではなく、故郷がある」
「私たちは難民ではなく、同じ人間。他の人たちのことも考えられる人を人間と呼ぶのではないか」
最後は、日本が191カ国から支援を受けた「東日本大震災」に触れました。空爆から逃れているシリアの子どもたちが「がんばれ日本」と書いた絵を送ってくれたエピソード等を紹介し「東京五輪は『共生』を学ぶ機会。(難民アスリートたちに)大事なことは必ず伝わると信じている。助けてもらった日本が、どう優しさを循環できるかをみんなで考えたい」と熱い想いを語りました。
池上さんと飯野さんの対談では、池上さんが難民問題に深く迫るようになったきっかけ、飯野さんがシリアへ留学したきっかけなどのお話も交えながら、東京五輪に期待することについて語りました。東京五輪開催が危ぶまれている現状に対して「難民アスリートの東京五輪への想いを聞くと、必ず実現しなければならないと思いましたね」と池上さんは力強く述べました。
また、視聴者からの質問もデジタル上で受付け、「難民を助けるために学生にできることはなんですか?」や「そもそも、なぜ紛争はなくならないのですか?」などの質問に池上さん、飯野さんが答えました。
第二部では、「未来ドラフト2020」の課題テーマに対して「お題」寄せた協力企業の方が登壇し、アイデアを考えるうえでヒントとなるようなお話をしてくださりました。クックパッド株式会社の「料理の力」、株式会社テレビ東京の「メディアの力」、株式会社ムラサキスポーツの「デザインの力」、そしてヤフー株式会社の「インターネットの力」。アイデアを考えている若者から具体的な質問も多数寄せられ、有意義な時間となりました。