【30周年フィナーレイベント】あふれる感謝と、未来への決意
 ~つながろう、子どもたちのために~

(2018.09.28)

9月17日東京新宿区の淀橋教会でワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)設立30周年フィナーレイベントを開催しました。プレイベントのWVフェスには300名を、メインイベントのWVカフェ・スペシャルには500名を超える皆さまにご参加いただきました。

当日の様子をダイジェスト動画でご覧いただけます

第1部:30年の歩みを振り返って

開会挨拶「30年の成果と課題」(WVJ常務執行役員 片山信彦)


「数名で始まったWVJが30年経って約80名のスタッフの規模に成長し、30ヵ国、123の支援事業を実施できるようになりました。その中で、多くのいのちが守られ、子どもたちの人生が変わり、笑顔を見ることができました。

ここまでの道のりは、決して安易なものではありませんでした。紛争や災害、そして慢性的な貧困の中にいる子どもたちを目の前にして、私たちの弱さ・力不足を感じる経験を何度も続けてきました。『本当にこの人たちの役に立っているのだろうか。もっと効果効率的にできないだろうか。どうしたらもっと日本の皆さまが世界に目を向けていただけるだろうか』など、悩みながらの30年でした。

そのような中でWVJの活動を支えたのは、聖書に示されている、最も弱い立場にいる方々に仕える、という使命感と基本理念です。そして、「Let my heart be broken with the things that break the heart of God」(神の心を引き裂くものによって、私の心を引き裂いてください)というワールド・ビジョン創始者ボブ・ピアスの言葉に表されている思いです。困難の中にある方を思い、引き裂かれた心の深い痛みと悲しみを持って、人々に仕えさせていただくのがワールド・ビジョンの精神だと思います。

激変する世界の情勢を見ますと、WVJが今後も取り組むべき課題は多いと思います。その中にあってWVJのあるべき姿を求め続け、パッションを持って前に進んでまいりたいと思います。これまでの皆さまのご支援を心から感謝申し上げるとともに、今後ともよろしくお願いいたします

WVJ常務執行役員 片山信彦

対談:酒井美紀さん(WVJ親善大使)xパンナさん(バングラデシュの元チャイルド)

「チャイルド・スポンサーシップが叶えた夢」

とても貧しい家庭に生まれ、毎日茹でたじゃがいもしか食べられなかったパンナさんですが「教育だけは大切にしたい」というご両親の意向でチャイルド・スポンサーシップに登録され、教育を受け続けることができました。

今は、夢が叶って高校で英語の先生をしています。高校での仕事の他に、近所に住む子どもたちに補習授業もしています。パンナさんが教えている6コマのうち、2コマは経済的に苦しい人たちのために無償で提供し、授業料の捻出が難しい家庭の子どもには経済的な支援もしています。

酒井さん「なぜ子どもたちへの教育にそんなに熱心なのですか?」

パンナさん「私が1人に教えれば、その人の人生を変えていける。その人が別の人を助ければ、その人の人生も変わっていく。そうしてコミュニティに広がっていくことを、私はワールド・ビジョンから学びました。元気で生きている間はずっと続けたいです」

対談する酒井美紀さんとパンナさん

パンナさんのチャイルド・スポンサーの話になった時には、涙ぐみながら話してくれました。

酒井さん「パンナさんをチャイルド・スポンサーとして支援くださっていた方は、残念ながらお亡くなりになったと伺っているのですが、もし、今その方に会えるとしたら何を伝えたいですか?」

パンナさん「今は亡くなった私のチャイルド・スポンサー。私にとっては第2のお母さんのような存在です。あなたのおかげで今の私がいます、と心からの感謝を伝えたいです。もし生きていたらバングラデシュに連れて行って、私がいかに変わることができたかを見せてあげたいです」

最後に、パンナさんから日本のご支援者の皆さまに一言

パンナさん「会場にお越しの皆さま、日本中のご支援者の皆さまは、私がそうであったように、困難な中にある子どもたちに、今を生きる力と、将来への夢と希望を与えてくださっています。その愛を受けて育った子どもは、他の人に愛を注いでいく存在に成長してきます。心からの感謝をお伝えします。本当にありがとうございます」

あふれ出る涙をぬぐうパンナさん

第2部:みんなでつながろう、子どもたちのために

第2部では、2010年のWVJ主催イベントにご登壇くださったJAXA宇宙飛行士の野口聡一さんの動画メッセージ紹介に続き、スペシャルゲストとして会場にお越しくださった作曲家の宮川彬良さんがご登壇くださいました。

「音楽の力でつながろう」(作曲家/チャイルド・スポンサー 宮川彬良さん)

宮川さんのピアノ演奏で、今日のために結成されたWorld Vision Anniversary Special Choirの皆さんから全3曲の歌をご披露くださったのに加え、宮川さんから素敵なメッセージをいただきました。

1曲目「おとのつばさ」

宮川さん「私がここに立っているのは、20数年前にワールド・ビジョン・ジャパンの広告を見て『支援をしたい』と言った妻のおかげです。正直、はじめは何を支援しているのかよく分からなかったですね。でも、支援している子どもたちの成長報告とか手紙が届き始めて、少しずつ何が起きているのか分かり始めました。そう思っていたんですが、正直、ちゃんと理解したのは、今日のこのイベントに来てからですね(笑)

こんなにも素晴らしい活動をしているワールド・ビジョン・ジャパンさん、本当に30周年おめでとうございます。心からの感謝をお伝えしたいです。妻は、良い広告に出会いました(笑)」

宮川彬良さんとChoirの皆さん

2曲目「まちがみんなをすきなんだ」

宮川さん「最近、"地域"というのはとても大切だと感じているんです。まちはどんどん便利になっちゃいました。良いことなんですけど、でも、すごい近くに住んでいる人のことを全然知らない、という感じになっちゃいました。まちは大人の心があらわれるんです。

世界の99.9999999%の人が子どもたちを愛しています。そうじゃないでしょうか。(会場拍手)『いつ、どんなときも、大人の目はきみたちを見守っているんだよ』という想いを込めて歌います。『まちがみんなをすきなんだ』」

美しい歌声が会場に響きわたりました

3曲目:「幸せはすべての人に」

宮川さん「せっかくなので、音楽の授業をしましょう。音楽には『こういう風に社会をつくると、うまくいくよ』という気づきがたくさん入っているんですね。男性も女性ものびのびと生きる、でもそこにはハーモニーがある、というのが協和がとれたメロディーになるんです。これが<音楽の力>なんです。未来をみるのが"音楽の力"だとぼくは思っています。最後に『未来は必ずくるよ』という想いを込めて歌います。理想的な現実ではないからこそ、歌います。『幸せはすべての人に』」

想いを込めてピアノを演奏くださる宮川さん

第3部:未来に向かって

第3部では、ルワンダフィリピンから来日した、チャイルド・スポンサーシップの支援を受けて「今」成長しているチャイルドから報告を行いました。

チャイルドからの報告:ルワンダ

  • フィレッテちゃん(10歳)

司会「学校に行くのは好きですか?」
フィレッテちゃん「好きです。英語と社会の授業が好きです!」

司会「(学校で勉強している写真を見て)真剣な表情をしていますが、何をしているところですか?」
フィレッテちゃん「2学期の期末テストを受けている写真です。テストの結果で進級できるかできないかが決まるのでとても緊張します」

司会「将来は何になりたいですか?」
フィレッテちゃん「パイロットになりたいです。飛行機で人を乗せているパイロットを見ていると私にもできるんじゃないかと思うし、ルワンダには女性パイロットが少ないから、パイロットになりたいです!」

緊張しつつ、笑顔を見せてくれたフィレッテちゃん
  • オリヴィエくん(15歳)

冒頭で、オリヴィエくんは「ウムガンダ*」 についての詩をラップ調とも聞こえる伝統的な暗唱で披露してくれました。
*ウムガンダ:「ともに働く」という意味で、大虐殺を乗り越えて平和を築きながら国づくりを進めようという、ルワンダ政府の強いリーダーシップによって継続されている国民全体が参加する奉仕活動。

司会「水汲みをするのが好き、ということですが何時に水汲みするんですか?」
オリヴィエくん「朝5時に起きて、水汲みに行きます。往復で1時間ぐらいかかります」
司会「どうして水汲みが好きなのですか?」
オリヴィエくん「きれいさを保つことができるからです」

司会「将来は何になりたいですか?」
オリヴィエくん「サッカー選手になりたいです!」

想いをこめて詩を披露してくれたオリヴィエくん
  • サンドリンちゃん(12歳)

司会「普段、何をするのが好きですか?」
サンドリンちゃん「お掃除、お料理、勉強が好きです」

司会チャイルド・スポンサーシップでこれまでどんな支援を受けましたか?」
サンドリンちゃん「学校に行くための制服、かばん、ペン、ノートを支援してもらいました。家族は、生計向上のためのヤギも支援してもらいました。とても嬉しくて、大きくなったら今度は支援する側になりたいです」

司会「将来は何になりたいですか?」
サンドリンちゃん「お医者さんになりたいです。病院にいくと診察を待っている人がたくさんいて、診察を待っているあいだに死んでしまう人がいっぱいいるから、そういう人たちを助けたいです」

のびやかに詩を朗読してくれたサンドリンちゃん
オリヴィエくんとサンドリンちゃんから感謝の想いがこもった詩を受け取りました

チャイルドからの報告:フィリピン

  • ラヴリーちゃん(15歳)

司会「2013年の台風ハイヤンのこと覚えていますか?」
ラヴリーちゃん「よく覚えています。わたしはレイテ島に住んでいたのですが、家が壊れてしまいました。私も腕を怪我しました。たくさんの人が泣いていました」

司会「ワールド・ビジョンからどんな支援があったか覚えていますか?」
ラヴリーちゃん「緊急支援としてシェルターや学習道具を受け取りました。復興支援では、父親の農業を助けるための道具やバナナの種を受け取り、経済的に助けてもらいました」

ラヴリーちゃんは、台風で被災した経験を心にとどめながら、地元のレスキュー隊のジュニアメンバーとして積極的に活動しています。

台風ハイヤンで大きな被害を受けたあとの支援について語ってくれたラヴリーちゃん
  • サイモンくん(15歳)

司会「サイモンくんは学校や子どもクラブのメンバーとして活動する中で、ライフスキルについて学んだとのことですが、具体的にはどんな力がついたと思いますか?」
サイモンくん「ライフスキル学習を通して、<どのように良い決断をするか>(good decision making)を学びました。どんなイベントをするにも、きちんと考えることの重要性を学びました。ぼくは生徒会のリーダーもしているので、色々なイベントを企画実施するのにとても役立っています」

司会「ところで、サイモンくんはチャイルド・スポンサーの方と会えたんですよね。会ってみてどう感じましたか?」
サイモンくん「スポンサーに会うのは僕の夢だったので、天国にいるような気持ちになりました。優しい方でした。会えてとても嬉しかったです」

チャイルド・スポンサーと会えた喜びを、輝く笑顔で語ってくれたサイモンくん
  • アメリカちゃん(15歳)

司会「アメリカちゃんは台風ハイヤンに襲われた直後に、チャイルド・スポンサーから手紙を受け取ったそうですね。どんな気持ちでしたか?」
アメリカちゃん「台風の直後にスポンサーの方から手紙を受け取って、本当に嬉しくて励まされました。台風に負けないぞ、という気持ちになりました。スポンサーさんからもらったプレゼントやお手紙をすべて大事にしています。チャイルドになったのは7歳でした。その時のことは心に残っています」

アメリカちゃんが、チャイルド・スポンサーとの8年という長い歳月の歩みの中で受け取ったお手紙の数々を写真で見せてくれました。

チャイルド・スポンサーからの手紙に同封されていたミニアルバムを披露してくれたアメリカちゃん

フィリピンの子どもたちが、ご支援者の皆さまへの感謝の歌を披露してくれました!

未来への希望と挑戦(WVJ事務局長 木内真理子)

「これまでの30年間、皆さまにいただいたご支援に感謝申し上げます。これまでの歩みを支えてくださった存在として、まず挙げさせていただきたいのは、ご支援者の皆さまです。皆さまがお寄せくださったチャイルドへの温かい思いと、ワールド・ビジョンへ寄せてくださった信頼がなければ、今日の日を迎えることはできませんでした。そして、子どもたち。苦境にありながらも、力強くたくましく成長し、生きようとする彼らの姿が私たちの活動の原動力です。さらに、世界中で活動している同僚。時に危険を顧みず、現場の最前線で子どもたちに尽くす姿を誇りに思うとともに、彼らがいるからこそ、ご支援者の皆さまとチャイルドをつなぐ活動を続けてくることができました。

この感謝を胸に、10月からは31年目の活動をスタートします。激変する社会の中で変えるべきところをしっかり見定めて、勇気を持って変えていくこと、同時に、変えてはならないことはしっかりと継承して、引き続き、皆さまに応援していただきながら歩んでいきたいと願っています。

変えてはならない最も大切なことの一つは、"何もかも"はできなくとも、"何か"はきっとできるという団体創設時からのスピリットだと思います。途上国の子どもたちを取り巻く環境は厳しく、「何もかも」を解決することは到底できないでしょう。けれど、子どもたちの成長を祈り、楽しみに思う気持ちを持ち続けることはできるのではないでしょうか。この気持ちこそが、貧困や格差といった大きな問題解決に欠かせない一番大切なことではないかと、以前に訪れたルワンダやフィリピンで出会ったコミュニティの人々の言葉please remember us」(私たちのことを覚えていてください)を思い起こしながら、感じるのです。

今も、紛争や災害で苦しんでいる子どもたち、また西日本豪雨や北海道胆振東部地震で被災された方々にも思いをはせながら、これからも皆さまとともに歩ませていただく団体でありたいと願っています。

11月からはクリスマス・キャンペーンが始まります。思いをさらに広げていくための新たな挑戦の始まりです。皆さまの子どもたちへの思いを、ご家族、ご友人、お知り合いの方に広げていただければ幸いです。引き続き、ご支援とご指導を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

本日はご来場くださり、本当にありがとうございました」

未来に向けて決意を語る事務局長の木内

フィナーレ:合唱「"何か"はきっとできる」

WVJ親善大使 ジュディ・オングさんからのメッセージ

「感動しすぎてくらくらしています。涙で目のまわりが真っ黒になっているのではないかと心配しています(笑)

24年間、ワールド・ビジョン・ジャパンの親善大使として一緒に歩んでまいりましたが、こうやって子どもたちの姿を見て、少しの支援が、少しずつ幸せを届けられていることを知ることができて感謝しています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは地域を育てます。地域が育つとやがて卒業式があります。それは手が離れることを悲しむのではありません。なぜならその地域がそこからどんどん大きくなって、世の力になっていることを感じるからです。私の好きなことばは「幸せのボーナス」です。自分の幸せのほんの一部を、誰かの幸せのために分かち合うことです。そのことを、これからもワールド・ビジョン・ジャパンとともに続けていきたいと思います。

泣いたあとは歌えないんですが、皆さま、一緒に歌いましょう!」

メッセージをくださったジュディ・オングさん

会場全体で大合唱!「"何か"はきっとできる」(伴奏:宮川彬良さん)

イベントは、WVJテーマ曲「"何か"はきっとできる」の大合唱でフィナーレを迎えました。この曲は、ワールド・ビジョンの創設者ボブ・ピアスが残した「"何もかも"はできなくとも、"何か"はきっとできる」という言葉に、世界の子どもたちが豊かに生きられる世界の実現を願うWVJ矢島志朗スタッフ(当時)の祈りが重ねられ、1994年に誕生した曲です。以下の皆さまの熱演に、最後は会場の皆さまの歌声も加わり、熱唱の余韻が残る中で、30周年フィナーレイベントは幕を閉じました。

・ジュディ・オングさん、酒井美紀さん、宮川彬良さん
・バングラデシュの元チャイルド:パンナさん
・ルワンダのチャイルド:フィレッテちゃん、オリヴィエくん、サンドリンちゃん
・フィリピンのチャイルド:ラヴリーちゃん、サイモンくん、アメリカちゃん
・WVJ Anniversary Special Choir:澤崎一了さん、高木貴子さん、竹内恵子さん、村林徹也さん、西澤宏佳さん、西澤幸さん、森田美幸さん
・有志合唱隊の皆さん

プレイベント:ワールド・ビジョン・フェス

お昼12時からスタートしたプレイベント、WVフェスには300名を超える皆さまがお越しくださり、スタッフやほかの参加者と交流したり、民族衣装体験コーナーや水汲み体験をお楽しみいただきました。11時から販売スタートしたキッチンカーでは、タイ料理とハイチ家庭料理のランチを購入しようと早くから行列ができました。13時頃には完売御礼!大盛況のうちに終了したWVフェスでした。

スタッフにお声がけいただきました
水汲み体験。「わ~、重たい!」
民族衣装を着て記念写真撮影、パシャリ

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