【トルコ・シリア大地震から1年】国際NGOワールド・ビジョン、人道危機状況への警鐘と継続したコミットを訴え。シリア対応プログラム責任者が能登半島地震を受け、日本へ連帯のメッセージ

(2024.02.06)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、2023年2月6日(月)にトルコ南部を震源とするマグニチュード7.8の地震が発生してから1年を迎えた2024年2月6日(火)、シリア北西部で深刻化する人道的危機の包括的な概観、緊急ニーズ、早急に取るべき重要アクションをまとめた政策提言書Beyond the Rubble(瓦礫を越えて)を発表しました。

2011年からシリアで活動を続けるWVは、13年目でなお終息の見えない紛争と昨年の地震により、人道ニーズが今も増え続けており、シリア北西部では410万人が人道援助で命をつなぎ、食料不安が370万人に影響を及ぼしている状況に警鐘を鳴らしています。WVでシリア対応の責任者を務めるエマニュエル・イッシュは、シリア北西部の子どもたちの未来のためのWVの継続的なコミットメントを約束するとともに、能登半島地震の影響を受けている人々と日本の人々に励ましのメッセージを述べました。

ワールド・ビジョンのシリアプログラム対応責任者 エマニュエル・イッシュから日本の皆さまへ

「能登半島地震で被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。

自然災害から私たちは逃れることはできません。災害はそれまでの暮らしを破壊し、影響は何年にもおよびます。1年前の今日、わずか1分間のうちに、1,500万人の生活がひっくり返りました。地震を生き抜いた人々も心は傷付き、あらゆるものを必要としていました:住まい、食料、そして、寄りかかれる肩を。

大地震は、13年間におよぶ紛争と、争いが引き落とした食料不足、物価高騰、就学率の悪化、そして、劣悪な生活環境をぎりぎり生き抜いてきたシリアの人々に追い打ちをかけるものでした。

地震によりWVの事務所やスタッフも影響を受けました。稼働できたスタッフは全体の半数ほどでしたが、私たちはすぐに対応を開始し、毛布、食料、衛生用品、暖房器具の燃料など、手元にあるだけの物資を人々に届けました。人々は支援を必要としており、WVには支援を届ける使命があるからです。倉庫はすぐに空っぽになりました。しかし世界のWVの仲間、日本を含むご支援者の皆さまが力を寄せてくださったことにより、私たちは活動を継続し、地域のパートナーとともに、多くの人々に支援を届けることができました。

WVには事務所や部署の垣根はありません。ひとつの『ワールド・ビジョンがあるだけです。私たちは力を合わせ、一つの大きなチームとして、足し算でなく掛け算の成果をもたらします。WVの日本の同僚が、能登半島地震の影響を受けておられる皆さまの支援活動を進めていることを頼もしく思っています。被災された皆さまが、この苦しみを乗り越え、日常を取り戻すことができると信じています。シリアで、日本で、私たちは支援を必要としている子どもたち、皆さんのために在ります。私たちはワールド・ビジョンです」

学校修繕により、13,600人の子どもたちが学びの機会を取り戻しました
学校修繕により、13,600人の子どもたちが学びの機会を取り戻しました
「私たちはすべてを必要としていました。WVスタッフが私たちを訪ね、支援物資を届け、何か困ってくれることはないかと聞いてくれる日、私は安心して眠ることができたのです」家を失いトルコで避難生活を送るシリアのお母さん
「私たちはすべてを必要としていました。WVスタッフが私たちを訪ね、支援物資を届け、何か困ってくれることはないかと聞いてくれる日、私は安心して眠ることができたのです」家を失いトルコで避難生活を送るシリアのお母さん
この1年間で100万人の人々に安全な水と衛生の支援を届けました
この1年間で100万人の人々に安全な水と衛生の支援を届けました

政策提言書の概要

政策提言書 「Beyond the Rubble: The Impact of the Earthquake on Children in Northwest Syria One Year Later(日本語仮題:瓦礫を越えて 〜シリア・トルコ地震から1年。子どもたちに与えた影響とは)外部リンク

<高まる人道ニーズ>

  • 2023年2月に発生した大地震は、13年間続いた紛争と相まって、シリア北西部だけで4500人以上の死者を出し、学校や病院などのインフラに甚大な被害を与え、援助に頼らざるを得ない410万人の生活状況をさらに悪化させました。
  • シリア北西部では、紛争、地震、資金削減という複合的な危機が、保健・栄養の分野で深刻な緊急事態を誘発。子どもと女性を中心に600万人近くが必要不可欠な栄養援助を受けられず、医療機関も閉鎖や縮小に追い込まれている。食糧援助にアクセスできる人の数は200万人から100万人に半減。この憂慮すべき状況を脱するためには、保健・栄養サービスを安定させ、子どもの死亡率上昇を抑えるための緊急かつ選定的な支援が必要である。
  • シリア北西部における複合的な危機により、子どもの保護に関わる状況が著しく悪化している。子どもが世帯主である家庭、児童労働、早期結婚の増加が地震後は顕著。このような状況で、生きていく上で必要不可欠な公的文書(出生証明書など)の入手が非常に困難となっている。適切な文書がないために国籍を持てず、教育や保健医療などの必要不可欠なサービスを受けられない子どもたちが、何世代にもわたって続く懸念がある。さらに、資金不足による「女性と女児のための安全な居場所」の閉鎖や、治安悪化によるコミュニティセンターの閉鎖が、コミュニティが直面する課題に拍車をかけている。
  • シリア北西部の大部分の住民が整備されていない仮設住宅での生活を余儀なくされており、そのうち約80万人は過密で管理が行き届いていない避難キャンプでテント生活を送っています。こうした状況をさらに悪化させているのが資金難で、住居や生活必需品に必要な資金が30%しか調達できていない。


<ワールド・ビジョンが推奨する対応方針>

  • 国際社会が主導する和平プロセスを通じて、進行中のシリア危機を政治的に解決し、永続的な安定と復興を促進すること。
  • 無条件かつ無制限の人道的アクセスによりシリア北西部の410万人の命を守ること。
  • 深刻な資金不足に陥っているシリア人道対応計画への資金調達を完遂し、シリアの人道的ニーズに徹底的に対処できるようにすること。
  • プロジェクトの計画・実施において地元コミュニティや組織をエンパワーしながら巻き込み、キャパシティビルディング(人材育成)に繋げ、人道的ニーズへの対応を持続可能かつ効果的なものとすること。


この政策提言を通じて、ワールド・ビジョンは、長期的なレジリエンス、コミュニティの参画、包括的なモニタリング、そしてすべての復興活動における革新的で気候変動に配慮した戦略の統合を強調しています。

避難生活を送る女性と語らうWVJ事務局長木内真理子(2023年9月トルコ南部)
避難生活を送る女性と語らうWVJ事務局長木内真理子(2023年9月トルコ南部)

ワールド・ビジョン・ジャパンとは

キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。
※詳細はこちら:www.worldvision.jp

ワールド・ビジョンのシリア対応プログラム

ワールド・ビジョンは、2011年から、シリア国内、ヨルダン、トルコにおいて「シリア対応プログラム」を展開し、国内外で避難生活を送る人々ならびに受け入れコミュニティの人々を対象に、子どもの保護、教育、水衛生、生計向上、保健サービスを提供しています。2023年2月6日の大地震がシリア北西部ならびにトルコ南部に甚大な被害をもたらして以降、WVは包括的な人道支援イニシアチブを通して、危機的状況にある子どもたちや人々を支援してきました。地震の被災地において、保健栄養、子どもの保護、教育、生計向上、水衛生など多様な領域で約50事業を実施し、シリア北西部の180万人を含め、シリア北西部ならびにトルコ南部でおよそ200万人の人々に支援を届けました。

募金を受け付けています

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、「難民支援募金」を受け付けています。ご協力をお願いいたします。
募金は、寄付金控除等の対象となります。


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本件に関する報道関係者からのお問合せ先

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 広報担当:德永美能里
【電話】090-6567-9711  【Eメール】minori_tokunaga@worldvision.or.jp