(2023.10.16)
世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、10月16日世界食料デーを前に、「子どもの飢餓と栄養不良」に関して日本を含む16カ国でイプソスと連携して実施した意識調査結果を発表しました。
14,000人の声を集めた調査の結果、子どもの飢餓と栄養不良は世界的に広がっており、人々の懸念が高まっていることが明らかになりました。調査はまた、子どもの飢餓と栄養不良の解決への希望も示しました。
そのほか、今回の調査で明らかになったポイントは以下のとおり
「飢えは、世界の一部で起きている問題ではなく、世界中で起きている問題です。すべての子どもたち分の十分な食料があるはずなのに、毎日、飢える子どもが増えています。保護者は、各所で食料を求めて行列に並び、究極の選択すら迫られています」
キリスト教精神に基づき、貧困、紛争、災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。
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世界中の人々が、自分自身や子どもたちのために食卓に食べ物を並べることができない苦悩を経験している(過去30日間で)
栄養不良は世界的に広がっており、37%の保護者が「子どもが日常的に必要な栄養素を摂取できていない」と回答しています。このことは、チャド(66%)、マラウイ(64%)、コンゴ民主共和国(63%)などの低所得国でより強く感じられる他方、ドイツ(24%)、アメリカ(20%)、オーストラリア(19%)、カナダ(18%)、韓国(17%)でもおよそ10人に2人の保護者が、同じように回答しています。
ワールド・ビジョン総裁/最高責任者アンドリュー・モーリーは次のように述べます。
「この世界には、すべての人に行き渡るだけの食料があります。しかし、多くの食料が廃棄されているのです。その一方で、何百万人もの子どもたちが飢えと栄養不良に苦しんでいます。この最新の調査結果は、世界中の何百万人もの子どもたちが直面している残酷な現実を示しています」
「子どもの健康と成長を支えるための最善な選択をする余地がない保護者があまりにも多すぎます。彼らは食料を得るためにあらゆる手を尽くしています。家財を売り、娘を嫁がせているのです。バングラデシュからアメリカまで、世界中で、食料が有り余っている人がいる一方で、食料がない人が大勢いるのです」
世界で、5歳未満で命を落とす子どもの死因の45%は栄養不良です。しかし、栄養不良が原因で5歳未満で命を落とす子どもの割合はどれぐらいだと思うかを聞いた質問に対して、半数近く(44%)が「30%以下」と回答し、栄養不良の影響が過小評価されていることが明らかになりました。さらに、回答者の約半数(46%)は推定することすらできず、いかに栄養不良問題が世界中の人々にとって盲点であるかが示されました。
国レベルでの飢餓の最大の要因は、「物価上昇と生活費の増加(55%)」と「飢えに対する政府の介入が不十分なこと(37%)」と考えられています。これらの問題は政府による介入で解決可能なため、国民はそのような政策を支持しています。
たとえば、「子どもは学校で食事をとるべきだ」という考えを回答者の97%が支持しており、「政府による給食への資金援助」を85%が望んでいます。しかし、現実的には過去30日間に、「子どもに給食の提供があった」と答えた保護者はわずか40%でした。また、「子どもに給食の提供があった」と回答した保護者のほとんどが「子どもは日常的に必要な栄養素を摂取している」と回答しており、給食の重要性が浮き彫りになりました。
世界の人々は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に対して十分な進歩があると感じておらず、その理由として「自国内で飢えている子どもが多すぎる(74%)」が最も多く挙げられました。また、2030年までに「自国の飢餓がゼロに」が達成されると信じている人は37%にとどまり、「世界の飢餓がゼロに」が達成されると信じている人はさらに少ない33%でした。特に悲観的だったのは、オーストラリア(17%)、カナダ(17%)、ドイツ(16%)、日本(9%)でした。
ワールド・ビジョン総裁/最高責任者アンドリュー・モーリーは次のように述べます。
「2015年、世界の首脳たちが集まり栄養目標を策定しましたが、そのための投資はされませんでした。今日、何億人もの子どもたちが、治療可能な疾病、低体重、発育不良、衰弱、貧血、過体重に苦しんでいます。世界中で起きているあらゆる危機が飢餓を悪化させるに伴って、栄養不良に直面する子どもの数も急増しています」
回答者の4分の3(75%)は、「自国で苦しんでいる人への政府による支援が不十分だ」と感じており、10人に7人は、政府による介入が「自国の子どもの栄養不良に対して(71%)」「世界の飢餓危機に対して(69%)」不十分だと感じていることが明らかになりました。
それでも、世界の人々は子どもの飢えをなくす手法はあると信じており、そのほとんどが「世界には、分け合えば全員分の食料がある(80%)」「十分な食料があることは基本的人権だ(90%)」と考えています。
世界の人々は、子どもの飢えの解決に対する最大の責任は「政府にある(68%)」と回答しつつ、「保護者(48%)」、「支援機関/団体(34%)」にも責任があるという考えを示しています。幸いなことに、責任があると見なされている主体は信頼も得ています。子どもの飢えの解決について最も信頼できる存在として挙げられているのも「政府(40%)」「保護者(37%)」「支援機関/団体(29%)」でした。
また、過去12カ月間で「食べ物を必要としている人に食べ物を差し入れた(43%)」、「地元で飢えに苦しむ家族を支援したことがある(26%)」、「飢えに苦しむ人を支援する団体や教会に寄付をしたことがある(21%)」など、多くが個人でもできることをしていたことが示されました。これは、89%の人が「世界の飢餓を終わらせる責任は、ひとり1人にある」と強く信じている表れです。飢えは、もうたくさん。政府、市民、企業、NGOや支援団体が協力すれば、より早く子どもの飢えや栄養不良をなくすことができます。なぜなら、この世界には十分な食料があるからです。
本報告書は、イプソスがワールド・ビジョンとともに16カ国で行った調査の結果です。オーストラリア、ブラジル、カナダ、チャド、コンゴ民主共和国、ドイツ、イラク、日本、マラウイ、メキシコ、ペルー、フィリピン、韓国、イギリス、アメリカの18歳以上、バングラデシュの19歳以上の合計14,131人にインタビューを実施しました。
フィールドワークは、オーストラリア、バングラデシュ、ブラジル、カナダ、ドイツ、日本、メキシコ、ペルー、フィリピン、韓国、イギリス、アメリカで2023年8月16日から2023年9月4日の間にオンラインで実施され、コンゴ民主共和国とマラウイでは2023年9月13日から2023年9月19日の間に、チャドでは2023年9月13日から2023年9月21日の間に、イラクでは2023年8月31日から2023年9月15日の間に、コンピューター支援電話インタビュー(CATI)で実施されました。サンプルは、カナダ、アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、ブラジル、メキシコ、ペルー、バングラデシュでそれぞれ約1,000人、チャド、コンゴ民主共和国、マラウイ、イラクで約500人でした。
フィリピン、ブラジル、ペルー、バングラデシュ、チャド、コンゴ民主共和国、マラウイ、イラク、メキシコのサンプルは、都市部に暮らす、国家平均よりも教育レベルが高いか裕福な暮らしを送っているかのいずれか、またはその双方の成人です。したがって、その国の代表的な層ではありません。これらの国の調査結果は、各層を「つなぐ(コネクトする)」層の声が反映されていると捉えるべきです。カナダ、ドイツ、イギリス、オーストラリア、日本、韓国、アメリカのサンプルはその国を代表する層のものです。
「世界平均」は、調査を実施したすべての国の平均を反映しています。各国の人口に合わせて調整されていなく、総計を示唆するものではありません。結果の合計が100にならない場合、または差が実際よりも±1程度大きく見える場合は、四捨五入、複数回答、「わからない」または未回答を除外した可能性があります。イプソスのオンライン世論調査は、1,000人の世論調査は±3.5%ポイント、500人の世論調査は±5.0%ポイントの信頼区間を用いて計算されています。イプソスの信頼区間に関する詳細は、イプソスのホームページをご確認ください。本調査結果の公表は現地の規則に則っています。
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 広報担当:德永美能里
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