【シリア危機12年】子どもたちはかつてないぜい弱な立場に置かれています
国際NGOワールド・ビジョン、国際社会が一丸となって支援に取り組むよう呼びかけ

(2023.03.15)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、シリア危機発生から12年を迎えるにあたり、シリアにおける人道支援のニーズがこれまでになく高まっているにも関わらず、支援のための資金が年々減少し続けていることを危惧し、国際社会が力を結集させることを呼び掛けています。 シリアの子どもの多くは、12年にもおよぶ紛争によって平和を知らずに育ちました。そして、紛争が恒常化してしまったため、国際社会の関心が薄れてしまっています。ワールド・ビジョンは、シリアの子どもたちと家族を取り巻く憂慮すべき現実について報告書『Dire Consequences: 12 Years of Suffering in Syria(悲惨な結果:シリアにおける12年間の苦しみ)』を発表しました。

避難生活を送る女性

  • シリアにおける人道支援のニーズは高まっているにも関わらず、支援のための資金は年々減少し続けています
  • 現在シリアにいる子ども640万人のうち、200万人以上が学校に通えていません
  • 学校に通えていない子どもたちの4割は、児童婚の危機にさらされている女の子です
  • 先月の大地震の後、トルコとシリアで85万人以上の子どもたちが家を失い、避難生活を送っており、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の危機にさらされています

※報告書『Dire Consequences: 12 Years of Suffering in Syria(悲惨な結果:シリアにおける12年間の苦しみ)』全文はこちら外部リンク

ワールド・ビジョンは2013年からシリアで支援活動を展開しており、現地時間2月6日未明に発生した大地震にも対応しています。先月発生した大地震によってシリアの人々の複合的な苦しみは増大し、搾取や暴力に対してよりぜい弱になっています。

現在シリアにいる子ども640万人のうち、200万人以上が学校に通うことができず、そのうちの4割は、児童婚の危機にさらされている女の子です。彼女たちの多くは様々な暴力や苦しみに耐えたり、その様子を目撃せざるを得ませんでした。

世界的な新型コロナウイルス感染症の大流行や、シリア北西部におけるコレラの大流行に加えて、医療施設・学校・国内避難民キャンプへの攻撃によってシリアの子どもたちの健やかな健康と学びが打ち砕かれました。

たとえ紛争が今日終結したとしても、2021年のシリア危機10年に合わせてワールド・ビジョンが発表した報告書『Too high a price to pay: the cost of conflict for Syria's children(高すぎる代償、紛争の犠牲となるシリアの子どもたち)』によると、教育や医療サービスの機会を奪われた子どもたちのことを考慮するならば、そのコストは2035年までにわたって、現在の金額で1兆7000億米ドルの規模までに蓄積され続けるでしょう。

※報告書『Too high a price to pay: the cost of conflict for Syria's children(高すぎる代償、紛争の犠牲となるシリアの子どもたち)』詳細はこちら

長引く紛争だけでも対処することが困難にもかかわらず、先月トルコとシリアを大地震が襲いました。両国で合わせて85万人以上の子どもたちが家を失い、苦しみとトラウマはより一層複雑なものになりました。メンタルヘルスの専門家によると、シリアの子どもたちは現在、子ども時代に逆境にさらされ続けることによってPTSDを発症するリスクが高まり、その結果、行動や感情に様々な問題が生じ、その影響を大人になってからも受け続ける可能性があると述べています。

2022年、ワールド・ビジョンは、健康、水衛生、保護/精神衛生と心理社会的支援(MHPSS)、教育、保健栄養、生計向上の分野の支援活動をシリアで行い、190万人以上に支援を届けることができました。受益者のうち、45%は子どもで、30%は女性でした。ワールド・ビジョンは2月6日に発生したトルコ・シリア大地震にも発災直後から対応しています。これまでに、両国の15の提携団体とともに支援活動を展開しています。シリア北西部では、ワールド・ビジョンと提携団体の迅速な対応により、発災後の最初の数週間で生きるための支援を必要としていた5万人以上の人々に支援を届けることができました。



ワールド・ビジョンのシリア対応プログラムの責任者を務めるヨハン・モーイのメッセージ

「10年以上の間にこれほどの規模の苦しみと荒廃を見たことがありません。影響は非常に甚大で、被災者が回復するには、今の子どもたちが大人になるくらいまでの時間を要する可能性があります。生活が改善される見込みがほとんどないシリア北西部では数百万人がすでに人道支援によって生活しており、この地域では復興により多くの時間を要する可能性があります。

シリア危機発生から12年を迎えるにあたり、ワールド・ビジョンは、震災後の膨大なニーズへの対応を可能にするために、アクセスの拡充、資金提供、人道支援を求めています。また、国際社会はシリアの子どもたちや若者たちの声に耳を傾けなければなりません。特に、彼らの教育・生計の手段・メンタルヘルスや心理社会的支援サービスを求める声は重要です。そして、彼らに寄り添い、一時的ではなく、大人になってからも、将来にわたって有効な解決策に投資する必要があります。

今は、紛争が勃発した時にシリアの子どもたちに約束したことを破る時ではありません。シリアの子どもたちは幸せで充実した豊かないのちを生きる権利があり、今こそ、かつてないほど私たちを必要としているのです。国際社会は、12年におよぶ紛争と、失われた子ども時代を経て、彼らの喫緊のニーズを満たし続けることができるように、また、彼らの未来がより希望に満ち溢れたものであることを確実にするために力を合わせなければなりません」



発災から1カ月でワールド・ビジョンが実施した支援

ワールド・ビジョンはかねてよりシリア北西部で活動を実施していたため、発災後すぐに初動調査を行い、発災から2時間後には喫緊に必要とされる暖房器具や燃料の配布を開始することができました。発災から1カ月間でワールド・ビジョンが実施した支援内容は以下のとおりです。

  • 調理済みの食品:12,753人
  • 燃料と暖房器具:19,155人
  • 食品や生活必需品購入のための現金給付:11,985人
  • 毛布、衛生用品などの緊急援助の物資:6,646人
  • 医療支援:100,000人

ワールド・ビジョンは、これからも被災された人々に寄り添い、命を守り、生活を建て直し、未来を築く支援を届けてまいります。
燃料を配給する様子(シリア)

募金を受け付けています

厳しい冬のただ中に今回の地震で被災した、シリア北西部・トルコ南部の子どもたち、人々の命を守るため、「トルコ・シリア大地震緊急援助募金」へのご協力をお願いいたします。シリア北西部で被災した人々の中には、紛争から逃れ厳しい避難生活を送る中で厳冬期を迎え、すでに、燃料か食料かという究極の選択を迫られていた人々も多くいます。そのような極限状態にあった人々を今回の地震が襲いました。ご寄付により、緊急に必要とされている食料、緊急援助物資などを届けます。人々の命を守り、明日への希望をつなぐため、ご協力をお願いいたします。

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ワールド・ビジョン・ジャパンとは

キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。
※詳細はこちら:www.worldvision.jp

本件に関する報道関係者からのお問合せ先

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 広報担当:德永美能里
【電話】090-6567-9711  【Eメール】minori_tokunaga@worldvision.or.jp

取材のご案内

トルコ・シリア大地震緊急援助事業に従事するワールド・ビジョンスタッフによる英語インタビューの電話・オンラインでの対応が可能です。なお、各国からの要請に対応しているため、日時のご相談・指定をさせていただきます。
上記問い合わせ先までご連絡ください。

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