【ウクライナ危機1年】紛争の影響、子どもたちに色濃く。
ウクライナ東部で子どもたちの攻撃性、不安症、薬物乱用の増加明らかに

(2023.02.21)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、ウクライナ危機勃発から1年を迎えるにあたり、1,700万人以上が緊急人道支援を必要としているなか、ウクライナの子どもたちが平和を切実に必要としている現状を報告します。子どもたちが日常を過ごせているという感覚を取り戻すことは極めて重要です。

被害を受けた家屋

  • 2022年2月24日以降、毎日54人近くの民間人が死亡または負傷しています
  • ほぼ半数(47%)の子どもたちがそれぞれの家になんらかの被害を被っています
  • 半数以上の子どもたちが、彼らや仲間が現在置かれた過酷な状況に対処するための手段として、喫煙やその他の依存症に陥ったと述べています。その傾向は、14~17歳の男子の間では 77%に上昇します

ウクライナ紛争の激化から1年が経ち、ウクライナのヘルソン、ハルキウ、ドニプロの子どもたちに壊滅的な影響がおよんでいることが新たな調査によって明らかになりました。

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンとウクライナにおける連携団体である、アームズ・オブ・マーシー(Arms of Mercy)が実施した調査で、インタビューを受けた子どもの83%が自分の身の安全を非常に心配しており、3人に1人以上の子どもが暴力を最も心配な事上位3つのうちの1つに挙げていることが明らかになりました。

「ウクライナの子どもたちは、平和を切実に必要としています。ウクライナ東部の多くの子どもたちにとって、この紛争は、丸一年は経過していないものの、9カ月以上経過しています。昨年2月に紛争が激化する以前から、ウクライナ東部の子どものおよそ5人に1人が絶え間なく続く暴力、避難生活、家族との離別から生じるストレスに対処するために、喫煙または合成薬物を使用しました。現在、10代の少年の80%近くが、彼らの仲間がなんとかやっていくために喫煙やその他の薬物を使用するようになったと考えているという事実は、非常に憂慮すべきことです」ワールド・ビジョンのウクライナ危機対応ディレクター、クリス・パルスキーは言います。

2022年2月以降、ウクライナの状況は急速に悪化しています。ウクライナでは、毎日54人近くの民間人が死亡または負傷しており、1,700万人以上が緊急人道支援を必要としています。多くの子どもたちが家を失い、より安全な場所に避難しなければなりませんでした。調査の対象となった子どものほぼ半数(47%)が、それぞれの家になんらかの被害を被ったと述べています。

「子どもたちは、すでに抱えているトラウマの上に積み重なっていくトラウマに対処するのに苦しんでいます。紛争の影響を受けた子どもたちや家族の経験をもとに、ウクライナでは150万人以上の子どもたちが、紛争中に受けた被害の結果として、うつ病、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、双極性障害、または統合失調症を発症する可能性があると考えられます」と、パルスキーは述べ、次のように続けます。

「現地で子どもたちに対応するワールド・ビジョンのスタッフと支援パートナーは、子どもたちは薬物乱用の増加に加えて、ますます恐れを抱くようになっており、感情を抑えるのに苦労していると言っています。21%の子どもたちが、彼らの仲間たちが、仲間への暴力も含む、身体的暴力に走っていると述べています。子どもたちは、親族が砲撃で傷つき、親が最前線に兵士として送られていることを非常に不正義であると感じ、他者に復讐したいという気持ちを抱いています」

「彼らの家族は紛争の経済的影響に苦しんでおり、以前は手に入れられた物を、今同じように購入する力がありません。また、半数以上(53%)の子どもたちが移動制限を受けることを非常に懸念しています。そして、子どもたちが日常生活を実感するのに非常に大切な教育を、子どもたちはほとんど受けることができなくなっています。 頻繁な停電と空襲警報により、多くの子どもたちが避難所からオンライン授業に接続するのに苦労しており、子どもたちは学習することが出来なくなっています」

「子どもたちが日常を過ごせているという感覚を取り戻すことは極めて重要であり、紛争のすべての当事者は、国際人道法および人権法へのコミットメントを尊重し、維持しなければなりません。平和がなければ、ウクライナの子どもたちは肉体的だけではなく、精神的にも深刻な犠牲を払い続けることになるのです」


ワールド・ビジョンは、紛争の勃発した2022年2月末からウクライナや近隣諸国で支援活動を行っており、 最初の11カ月で36,000人以上の子どもたちとその家族に早急に必要とされる心理社会的支援を提供しました。ワールド・ビジョンとアームズ・オブ・マーシーは、ハルキウ、ドニプロ、ヘルソン、各地域において、子どもたちと協力して、心理社会的支援を実施し、子どもたちが安心して安全に過ごせる居場所を提供し、食料、衛生用品、暖房などの基本的なニーズにも対応しています。ワールド・ビジョンは、2023年3月以降、支援パートナーのラチョ・ドローム(Lacho Drome)を通じたウクライナの少数民族ロマの人びとのコミュニティを保護するためのプログラムを含む、ウクライナ東部での現金給付支援をさらに拡大することを計画しています。

ワールド・ビジョンとアームズ・オブ・マーシーは、2022年12月にハルキウ、ヘルソン、ドニプロでどのような支援が必要とされているのか調査を行い、2023年1月にフォローアップ調査とデータ分析を行いました。調査チームは、9歳から17歳の合計457人の子どもたちを対象にインタビューを実施しました。

【主な調査結果】

  • 調査対象の457人の子どものうち47%が、家になんらかの被害を受けました
  • 21%の子どもが、彼らの仲間が精神的苦痛に対処するための手段として、暴力に走っていると回答
  • 半数以上(51%)の子どもが、彼らの仲間が精神的苦痛に対処するための手段として、喫煙やその他の依存症に陥っていると回答。その傾向は、14〜17歳の男子の間では77%に上昇します
  • 34%の子どもが、暴力の脅威を心配事のトップ3の1つとして回答
  • 83%の子どもが、身の安全を心配事のトップ3の1つとして回答
  • 53%の子どもが、移動制限を心配事トップ3の1つとして回答
  • 10人に1人(11%)を超える18歳未満の子どもが、自分は不幸または非常に不幸だと感じていると回答
ワールド・ビジョンが支援するユースクラブで 開催された、音楽を用いた支援の様子

ワールド・ビジョン・ジャパンとは

キリスト教精神に基づき、貧困や紛争、自然災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録された、約100カ国で活動するワールド・ビジョンの日本事務所です。
※詳細はこちら:www.worldvision.jp

本件に関する報道関係者からのお問合せ先

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 広報担当:德永美能里
【電話】090-6567-9711  【Eメール】minori_tokunaga@worldvision.or.jp

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