ウクライナ危機から1カ月、故郷からの避難と死に直面する子どもたち

(2022.03.24)

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、ウクライナ危機の発生から1カ月が経過する今日、子どもたちが家を追われ、命を落とし、人身取引や虐待の危険にさらされているという痛ましい状況について警告します。

【概要】

  • ウクライナ危機の発生からわずか1カ月で、少なくとも81人の子どもが命を落としました
  • 現在、ウクライナの子どもの5人に1人が難民として暮らしています
  • ウクライナ国外に逃れた難民は350万人以上、ウクライナ国内の避難民は650万人にのぼります
  • 人道支援機関は、ぜい弱な立場に置かれている子どもたちに対する性的搾取や虐待防止等の支援を優先しなければなりません。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、3月23日、ウクライナ危機による子どもの死者数を81人、負傷者数を108人と報告していますが、「激しい戦闘」が続く地域からの情報が入りにくいため、「実際の数字はこれよりもかなり多い」との見方も示しています。この地域には、マリウポリ、ヴォルノヴァハ(ドネツク州)、イジウム(ハリコフ州)、シェヴィエロドネツクとルビジネ(ルガンスク州)、トロスティアネッツ(スムィ州)等が含まれ、「多数の民間人死傷者が出ている」としています。

ワールド・ビジョンの中東および東欧地域の責任者を務めるエレノア・モンビオは、子どもの犠牲に心を痛めていると述べ、次のように訴えます。

「数字に関係なく、すべての子どもの死が悲劇ということに変わりありません。しかし、わずか1カ月の戦闘で、少なくとも81人の子どもが亡くなったことは悲劇的な事実です。これらの子どもたち一人ひとりの命と未来が奪い取られてしまったのです。その子どもたちの家族は、大切な子どもを失った深い悲しみに沈みつつも、攻撃の恐怖と避難という課題に対処せざるを得ないのです」

ウクライナ政府当局者は今週、1,500の住宅、202の学校、34の病院が全土で破壊されたと発表し、子どもの死者についても訴えています。3月22日には、報道機関もオデッサ郊外の住宅が砲撃を受けたと報じました。エレノアは、決して民間人を標的にすべきではないと述べ、公共のインフラを標的にすることを非難しました。

「私たちは、民間人、家庭、学校、医療施設を標的としたあらゆる暴力を非難し、紛争のすべての当事者に対して国際人道法および国際法にもとづく責任を遵守するように呼びかけます。

この紛争は、すでに民間人と公共のインフラに深刻な被害をもたらしましたが、今からでも平和を求め続けることが大切です。ワールド・ビジョンは、敵対的行為の即時停止の呼びかけに呼応して行動をともにします。民間人は、希望する場合、国籍や人種にもとづく差別を受けることなく安全な場所に避難することが保障されなくてはなりません。人道支援機関は、困っている人々がどこにいようとも、彼らにたどり着き、必要な支援を届けなくてはなりません」



ウクライナ国外の難民350万人超、子どもの5人に1人が難民に

悲劇的な死者数に加えて、ウクライナの子どもたちの5人に1人が、危機の発生からひと月と経たないうちに難民となりました。ウクライナの子どもの総人口750万人のうち、150万人が安全を求めて国境を越えたという推計によれば、2月24日に危機が始まって以来、20%の子ども、つまり5人に1人が難民となったことになります。

エレノアは、難民となった子どもの多さは、国境周辺での人身取引のリスク増大を引き起こしているとの懸念を示します。ワールド・ビジョンのスタッフは、ポーランドとウクライナの国境で、同伴者がいない多くの子どもたちを目の当たりにしていると言います。

「子どもの保護を担当する私たちのスタッフは、圧倒的な数の避難民の子どもたちや若者を目撃しています。彼らの中には、心に深い傷を負い、絶望的に空腹で、ウクライナにいる両親や親戚のことを深く心配している子どももいます。1人きりで旅をすることは、人身取引を含む虐待、暴力、搾取のリスクが高まるのです」とエレノアは訴えます。

「安全な場所だと信じて逃げ込んだのに、性的虐待や人身取引の犠牲になってしまう子どもたちのリスクを、私は非常に心配しています。このウクライナの危機は、深刻な危機であることはもとより、さらなる危機を含んでいると言わざるを得ません。

追い立てられる子どもたち、特に同伴者を伴わずに避難を余儀なくされる子どもたち、または避難先で家族と離ればなれになってしまった子どもたちは、暴力、搾取、虐待の大いなるリスクにさらされています。政府と人道支援機関は、人身取引を含む、子どもたちが直面する非常に現実的なリスクを軽減し、彼らの当面および長期のニーズに応えるために、避難してくる子どものうち、最もぜい弱な子どもを特定して登録するシステムを緊急に確立する必要に迫られています」


募金を受け付けています

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、ウクライナにおける紛争の長期化やニーズの増大を受け、より多くの子どもたちや人々に支援を届けるため、「ウクライナ危機緊急支援募金」を受け付けています。皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。
今すぐ募金

ワールド・ビジョンとは

キリスト教精神に基づき、貧困、紛争、災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。詳細はこちら



本件に関する報道関係者からのお問合せ先

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
広報担当:市山志保 【電話】03-5334-5356 【Email】shiho_ichiyama@worldvision.or.jp