【エボラ流行で10代の妊娠が増加】 性的搾取や暴力を子どもたちが報告

(2015.6.25)



国際NGOプラン、セーブ・ザ・チルドレン、ワールド・ビジョンの3団体は、シエラレオネ国内において、1年間にわたるエボラ出血熱の流行が引き金となり、女の子への搾取や暴力、さらに10代での妊娠が増加していることを明らかにしました。


3団体は、国連児童基金(ユニセフ)の協力のもと、シエラレオネ国内で3500人以上の死者を出したエボラ出血熱の子どもたちへの影響について、9つの地域に暮らす7歳から18歳までの女の子と男の子たち1100人を対象に聞き取り調査を行い、Children's Ebola Recovery Assessment Report(以下、「子どもたちのエボラ復興評価報告書」)を公表しました。



エボラで増加した性暴力と10代での妊娠

子どもたちの体験を盛り込んだ報告書からは、子どもたちがエボラ危機による長期にわたる深刻な影響に強い不安感を持っていることが分かります。本調査は、シエラレオネ政府のエボラ復興戦略に、子どもたちの意見が盛り込まれることを目的に行われたものです。

子どもたちは、9カ月間にわたる学校閉鎖が児童労働や搾取、家庭や地域で暴力にさらされる機会、10代での妊娠の増加をもたらしたと受け止めています。


聞き取り調査に応じた女の子617名の大半が、地域で10代での妊娠の事例が多くなった理由について、学校という安全な環境がなくなり性的搾取や暴力の危険にさらされたためと答えました。シエラレオネの学校は、エボラ感染拡大防止のため長期間閉鎖され、4月14日にようやく再開されたものの、170万人の子どもたちの学習進度に遅れが生じています。

ディスカッショングループ参加者の1割にあたる子どもたちからは、エボラによって家族や親族を亡くした、地域の弱い立場に置かれた女の子たちが、食べ物など日々の基本的な必要を満たすために性的取引を強いられていることを報告しました。子どもたちは、こうした実態を10代での妊娠が増加した理由の1つと考えていることが分かりました。

女の子への二次的被害の様子が明らかに
女の子への二次被害の様子が明らかに

不安を募らせる子どもたち

さらに、子どもたちの多くが性暴力への恐怖を感じていることも聞き取り調査から分かりました。大半の子どもたちが、地域で女の子への性暴力の事例を1つは知っており、なかにはエボラ感染防止のため隔離された家庭の女の子が被害にあった事例も含まれていました。性暴力への恐怖を口にしたのは、15歳から18歳の女の子が大半でしたが、さらに若い年代の女の子も性暴力への不安を述べました。男の子たちも自分の姉妹や友人がそうした危険に直面していることを認識していました。

シエラレオネ東部カイラフンの男の子は、「友だちの女の子たちは、水を汲みに遠くまで出かけた際に性暴力にあいました。中には川で溺れさせられた子もいました」と話しました。

性暴力などの状況を指摘した子どもの絵
性暴力などの状況が表現された子どもの絵

復興には子どもたちの参加が不可欠

子どもたちはまた、性暴力の被害にあった友人たちが、心理的なダメージ、妊娠、性感染症、怪我や死、差別や社会的排除などの影響を被ることへの心配を口にしました。

プラン・インターナショナル・シエラレオネ事務所長であるケーシー・コールマンは、「この報告書は、エボラ出血熱が子どもたちの生活に非常に大きなしわ寄せをもたらしており、回復には時間がかかることを示しています。子どもたちへの影響は甚大です」とコメントを寄せました。


多くの家族が生計手段を失い、子どもたちを学校へ送る経済的余裕がなくなっている状況のなか、聞き取り調査に参加した子どもたちからは、10代の妊娠を防止するための対策 、新たなエボラ出血熱感染発生の防止、保健サービスの再構築、そしてエボラ危機によって拡大した、食べ物やお金、生計手段における格差への対応に対する提案が示されました。
プラン、セーブ・ザ・チルドレン、ワールド・ビジョンの3団体は、政府と国際機関に対して、シエラレオネがエボラからの復興に向けて動き出す中で、子どもたちの意見や不安をしっかりと汲み取るよう訴えています。

セーブ・ザ・チルドレン・シエラレオネ事務所代表であるアイザック・オーコは、「子どもたちは、失った機会、搾取、虐待に関する彼らの物語を私たちに分かち合ってくれました。国の復興戦略が功を奏するためには、子どもたちのニーズが考慮されなければなりません。つまりすべての子どもが教育を受け、一年間の学習の遅れを取り戻せるようにする必要があります」と述べました。


シエラレオネ人口のおよそ半数は18歳未満が占めています。ワールド・ビジョン・シエラレオネの事務局長であるレスリー・スコットは、「子どもたちが声を上げました。報告書では、子どもたちははっきりと、教育、保健サービス、安全に成長できる環境を優先事項として掲げました。私たちは彼らの意見を聴いたのですから、今度は私たちが実行しなければなりません」と述べました。


「子どもたちによるエボラ復興評価報告書」に関わった子どもたちによる、シエラレオネ政府に対する提言

1.復興段階への全面的な移行のため、エボラ出血熱を早期に終息させるための効果的な対策をとること

2.学費の補助や、エボラ出血熱で家族や親戚を失った子ども、特に遺児への奨学金支給など、
  すべての子どもたちが確実に教育を受けられるようにすること

3.エボラ出血熱の流行の影響で見捨てられた遠隔地の診療所などへの資格を持つスタッフの追加派遣をはじめとする、
  保健システムの強化を図ること

4.性的な取引から女の子を保護するために、親への啓発や貧しい家庭への生計手段の支援を通じて
  児童労働や搾取への対策を強化し、10代の妊娠を減少させること


報告書はこちらからダウンロード可能です(英語)pdfアイコン

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