2012.07.20
メキシコのバハカリフォルニア・スール州ロス・カボス市で行われたG20サミット(金融世界経済に関する首脳会合)は、6月19日に閉幕しました。ワールド・ビジョン(以下WV)はG20が栄養の問題を課題として取り上げたこと、ミレニアム開発目標を達成し、さらに前進していく上で、開発途上国と協力していく約束をしたことを歓迎します。また、欧州債務危機が、世界の貧しい人々のより良い未来を形作るための約束を妨げる理由にはしないと表明していることも評価します。
前回、2011年に行われたカンヌでのG20 サミットでは農業や開発に関する声明は33ページ中1ページ未満で、審議に使われた時間もわずかでした。しかし今回は農業や開発に関する世界的な課題に関する文書は14ページ中4ページわたっています。しかし、こうした声明が、漠然とした約束でなく、子どもたちのための具体的な成果をつくることで、子どもたちにとって本当に継続的な利益につながることを望みます。
WVはまた、G20諸国が開発の成果への評価や説明責任を確実にするように開発作業部会に要請したことを喜んでいます。これは開発への資金の安定化だけでなく、真の意味でG20が世界的な指導力を発揮する意思の表れです。G20諸国の説明責任は貧しい人々に対してなされるべきですし、そして貧しい人々の声が、直接または市民組織を通して反映されるべきです。
G20諸国は市民社会や経済界と協力し、農業や食料安全保障を向上させるために努力することが期待されており、WVはこの成果が最も必要ある人々の上に届くことを望んでいます。特にG20諸国が、小規模農家、特に女性にこの成果が届いたかを測定することを願います。子どもの栄養不良の割合を減らすことは、G20諸国が最も貧しい人々に到達できるプログラムを確実にする最も良い方法の一つです。単なる生産性向上は自動的にその利益が、貧しい人々に届くとは限らず、栄養に特化した支援こそが慢性的な栄養不良の削減にとって重要です。
G20諸国が表明した、栄養への取り組み拡充 (Scaling Up Nutrition: SUN)への支援は世界が劇的に子どもの死亡率や栄養不良を減少させようとしている流れに希望を与えてくれます。ただし、漠然とした政治的な約束から、子どもの栄養不良の割合や死亡率の高い国々の中で、SUNの実施への具体的なステップを期待します。今年5月に行われた世界保健総会では、2025年までに栄養不良を40%減少するという世界的な目標が合意されました。この目標を達成するために、G20各国が、ロシアで来年再会する前に早急に具体的な約束をする必要があります。
WVは過去に行われてきたG20サミットにおいても提言活動を行ってきましたが、今回のG20サミットはWVが経験した中で、最も透明性の高いG20サミットのプロセスでした。次回のロシアでのG20サミットでは、プーチン大統領が、市民社会をG20サミットの審議に参加させることを望みます。
ワールド・ビジョンはG20前に、日本政府のG20シェルパ(サミットにおける総理の個人代表)である西宮伸一外務審議官に政策提言書を提出しました。また世界各国のワールド・ビジョンがそれぞれの政府に向けて提言を行うとともに、メキシコのG20サミットにも赴いて、子どもたちの栄養と食料安全保障の成果や、開発への取り組みに向けて子どもに焦点を当てること、そしてG20と後発開発途上国との協議の強化を訴えてきました。こうした活動が他のNGO等とともに広がって、今回のように栄養が課題として取り上げられるという成果につながっていることを感謝します。