(2019.07.23)
東京オリンピック開催までいよいよあと1年となりました。オリンピックのタイミングに合わせ、世界の子どもたちの健やかな成長にも大きな影響をもたらす「成長のための栄養サミット2020(仮称)」が日本で開催されるのをご存知ですか?
「栄養サミット」は、2012年にロンドンオリンピック・パラリンピックが開催された際、オリンピックという機会を活かして、地球規模の課題に対する具体的な国際的コミットメントを得ようとするキャメロン英首相(当時)のイニシアチブによって始まりました。94の政府・関係機関が出席して「成長のための栄養(Nutrition for Growth)コンパクト」に同意し、2020年までに達成すべき栄養改善ターゲットが以下の通り具体的に設定されました。
・5歳未満の発育阻害*の症状にある子どもの数を少なくとも2,000万人減らす
・発育阻害を予防し、母乳育児を増やし、重度急性栄養不良の治療を増やすことによって170万人の5歳未満の子どもの命を救う
*慢性的な栄養不良などが原因で、子どもが年齢相応の身長に達していない状態にあること
この実現に向けた達成状況や、各国によるコミットメントの進捗状況については、毎年発行される世界栄養報告(Global Nutrition Report)で報告されています。
栄養改善を地球規模課題として取り組む国際的機運の高まりは、翌年2013年6月のG8ハイレベル栄養イベント「成長のための栄養(Nutrition for Growth)」、2016年8月のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの機会に開催されたブラジル、英国、日本共催の「成長のための栄養イベント」などに引き継がれ、この流れの中で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせ日本で「栄養サミット」を開催することが決まり、2017年12月、UHCフォーラム2017年において安倍総理が正式に表明しました。
ワールド・ビジョンは、栄養改善に向けた国際的な取組みにおいて、世界各地で子どもの栄養改善を目指す支援事業を行っている国際NGOとして、他団体と協働し、政府や国際機関に対する政策提言活動を行っています。今年の2月14日に、衆議院第一議員会館において開催された第7回国際母子栄養改善議員連盟では、栄養改善に取り組む国際的専門組織と日本政府との間で積極的な政策対話が行われ、国会議員、関係省庁、大学、国連機関、NGO関係者など100人以上が参加しました。
このイベントで提言を行うため、海外から集まった専門家の一人が、ワールド・ビジョン・インターナショナル サステナブル・ヘルス・シニア・ディレクターのダン・アーヴィンで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のケダール・マンカッド氏、SUN市民社会ネットワーク副議長/セーブ・ザ・チルドレンUK(英国)のキャサリン・リチャード氏、リザルツ教育基金/ACTIONのナンディーニ・ピライ氏、国連世界食糧計画(WFP)ローマ本部のファティハ・テルキ栄養部長らとともに、日本の議員、省庁関係者に対して、来年の栄養サミットに向けた日本政府のリーダーシップへの期待を表明しました。
日本政府からは、鈴木外務大臣政務官、山東昭子議員(国際母子栄養改善議員連盟会長)、逢沢一郎議員(同副会長)、塩崎恭久議員(同顧問)牧島かれん議員(同事務局長)等、多くの国会議員の参加があり来年の栄養サミットを盛り上げていくことの重要性の再確認をはじめ、重要なステークホルダー(関係者)がサミットに出席しやすい日程調整の重要性や、栄養改善の支援強化(資金拠出)にあたっては支援の質と効果を裏付けることが必要であるという問題意識の共有が行われました。
ワールド・ビジョンのダン・アーヴィンは、第2次世界大戦中、満足な食べ物を得ることができない中で必死に生き抜こうとする兄妹を描いた映画「火垂るの墓」に触れ、20世紀初頭には日本の子どもの65%が発育阻害の状況であったことを紹介しながら、戦後、日本政府が推し進めた栄養政策が画期的であったことを述べ、日本には、栄養不良に苦しんでいた多くの子どもたちを救い、健康大国となった自らの成功体験を活かして国際的な栄養改善のためにリーダーシップを発揮してほしい、と述べました。
今回の訪日中、議員連盟のイベントや、財務省、外務省、厚生労働省等、関係省庁訪問にて行った政策対話から受けた印象をダン・アーヴィンがブログに綴りましたのでぜひこちらをご覧ください。ワールド・ビジョンは、今後も他団体と協働しながら、来年開催される「栄養サミット2020」が世界の子どもたちの栄養改善につながる内容となるよう、関係者への働きかけを続けます。
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