「子どものための2030アジェンダ:ソリューションズ・サミット」参加報告

(2018.02.23)

ソリューションズ・サミット ー子どもに対する暴力のない世界を目指し、67カ国が参加ー


2018年2月14-15日の2日間にかけて、スウェーデンの首都ストックホルムにて「子どものための2030アジェンダ:ソリューションズ・サミット」(Agenda 2030 for Children: End Violence Solutions Summit)外部リンク が開催されました。

この2日間にわたる国際会議は、SDG16.2「子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する」の達成を目指すもので、スウェーデン政府、「子どもに対する暴力撲滅のためのグローバル・パートナーシップ(GPeVAC)外部リンク」及び「オンラインの子どもの性的搾取撤廃のためのWePROTECTグローバル・アライアンス外部リンク」により共催されました。

スウェーデンのシルヴィア王妃のスピーチで開会したサミットには、67カ国から、当事者である子どもたち、各国政府、市民社会、民間企業、国際機関、専門家など、子どもに対する暴力をなくすための様々な取り組みを行うステークホルダー386名が参加し、子どもに対する暴力を取り巻く現状や、予防や撤廃のための方策などについて、議論を行いました。

サミットには、日本の市民社会の代表として、ワールド・ビジョン・ジャパンから柴田スタッフが参加しました。

67カ国から386名が参加し、2030年までに子どもに対する暴力のない世界を作るために議論を行いました。

子どもに対する暴力の現状と暴力をなくすための方法


現在世界では、5分間に1人の子どもが暴力の影響で命を落としています。そして、毎年少なくとも10億人の子どもたちが、身体的、性的、または精神的な暴力を受けています。ソリューションズ・サミットは、2030年までに、深刻な状況にある子どもに対する暴力に終止符を打ち、子どもたちが安心して暮らせる世界を作るための大きな希望となるものでした。

理由は4つあります。

第一に、社会的課題の解決には政治的意思の存在が不可欠と言われますが、今回のサミットには、スウェーデンのステファン・ロヴェーン首相をはじめとする各国政府の閣僚のほか、アミナ・モハメッド国連副事務総長、ヘンリエッタ・フォアUNICEF事務局長、テドロス・アダノムWHO事務局長、ユーリ・フェドートフUNODC事務局長に加え、市民社会や企業などからハイレベルな関係者が多数参加し、自分たちの取り組みと今後に向けた意思を力強く共有していました。

第二に、子どもに対する暴力をなくすためにはマルチステークホルダーの協働が不可欠ですが、67カ国からのサミット参加者は、政府のみならず、市民社会、民間企業、国際機関、専門家など多様なステークホルダーで構成されており、各国ですでにマルチステークホルダーでの協働がなされていることが伺えました。

第三に、子どもに対する暴力を予防し、なくすための、確立されたエビデンスに基づく手法(INSPIRE)(※1)について、関係者一同で改めて認識を共有したことに加え、成果を測るためのINSPIREの指標や、現場での活動のためのINSPIREガイダンスが近々共有されることが発表されました。つまり、具体的に暴力をなくすための科学的な手法がすでに確立されており、その実施を促進するための方法も新たに構築されていることが確認できました。

第四に、2日間のセッションでは、複数回にわたり、当事者である子どもたちによる振り返りやコメントが発表されました。特に、タンザニアの子どもによる、「僕の目の前で、僕のスピーチを僕の国の大臣が聞いてくれていることを嬉しく思います。僕には夢があります。自分の国が、美しいキリマンジャロ山や自然豊かな国立公園によってのみ有名になるのではなく、子どもたちが正義や子どもの権利を享受し、暴力のない社会に暮らしている国として有名になって欲しい。それが僕の夢です。」との力強いスピーチは、会場の参加者一同より熱烈なスタンディングオベーションを受けていました。

サミットでは、子どもたちによる振り返りやコメントの発表が何度も行われました。タンザニアの子ども代表によるスピーチ。

日本政府によるコミットメント


ワールド・ビジョン・ジャパンはこれまで、協働するNGOや国連機関や専門家とともに、日本政府に対し、子どもへの暴力をなくすことに積極的に取り組むGPeVACのパスファインディング国(※2)となることを求めるアドボカシーを行ってきました。その一環として、2017年9月にはGPeVACのスーザン・ビッセル事務局長を迎えて関係省庁と議論を行ったり、セミナーを開催するなどしてきました。

このようなアドボカシーの積み重ねの成果として、このソリューションズ・サミットにおいて、日本政府は子どもに対する暴力をなくすための3つのコミットメントを表明しました。外部リンク 第一に、GPeVACのパスファインディング国となること、第二に、GPeVAC基金の人道分野に対し600万ドルの資金拠出を行うこと、第三に、GPeVACの理事会に日本の外務大臣がメンバー入りすることです。子どもに対する暴力をなくすことを目指した日本によるこの大きなコミットメントは、会場から熱烈な拍手で迎えられました。

子どもに対する暴力をなくすためには、様々なステークホルダーによる協働が不可欠です。これについても、日本政府がスピーチの中で、「市民社会からの要請を受けて、市民社会の代表とこの分野における議論を深めるためマルチステークホルダープラットフォームを設立する」と宣言し、会場に集っていた国際市民社会グループからも盛大な歓迎を受けていました。

日本からの参加者。政府、市民社会、民間企業、国際機関、専門家など、マルチステークホルダーで参加しました。
ワールド・ビジョン柴田スタッフも日本の市民社会代表として参加しました(右から2番目)。

これからのワールド・ビジョンの取り組み


ワールド・ビジョンは、2017年3月、子どもに対する暴力のない世界を作ることを目指すグローバル・キャンペーン(It takes a world to end violence against children)を開始しました。 現在、ワールド・ビジョン・ジャパンでも、2030年までに子どもの暴力をなくすという世界的な動きに日本の皆さまにも加わっていただけるよう、日本でのキャンペーンを準備しています。

「2030年までに子どもに対する暴力のない世界を作る」
この目標を達成するために、ぜひ皆さまと一緒に取り組みを進めていきたいと願っています。

(※1)INSPIRE:子どもに対する暴力をなくすための7つの戦略。

各戦略(Implementation and enforcement of laws, Norms and values, Safe environments, Parent and caregiver support, Income and economic strengthening, Response and support services, Education and life skills)の頭文字をとってINSPIREと呼ばれる。詳細はこちら外部リンク

(※2)GPeVACのパスファインディング国:子どもに対する暴力撤廃にコミットした国。パスファインディング国になると、子どもに対する暴力をなくすための3-5年間の集中した取り組みが求められる。具体的には、マルチステークホルダープラットフォームの設立や国家計画の策定、データ整備などが求められる。