【G7タオルミナ・サミット2017】首脳会合に対する深い失望、そしてG20サミットへ

(2017.05.31)

「G7サミット」の役割とは



5月26~27日の二日間、イタリアのシチリア島タオルミナにおいて、「G7サミット(首脳会議)」が開催されました。

G7サミットは1975年以来、毎年開かれている国際的な会議で、経済先進国であるアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、そして日本の7ヶ国が現在参加し、持ち回りで議長国を務めています。

サミットの目的は、グローバル経済や安全保障、国際協力など地球規模の喫緊な課題について、政治・経済に大きな影響力を持つ7ヶ国が問題認識を共有し、協力して解決策を定めることにあります。

特に首相や大統領が集まる首脳会議は、G7各国の経済力を生かして問題解決のための資金拠出を表明したり、広く国際社会に向けて行動を呼びかけるための、重要な機会となっています。
また、年間を通して、保健・外交・環境などテーマごとの大臣会合も開催されます。

2017年タオルミナ・サミットに対する期待



第43回となる今年のG7サミットは、深刻な飢餓が広がる最中に開催されました。

2017年の年明け時点で、世界で約1億800万人の人々が飢餓にさらされています。これは昨年より35%も多い被害規模です。

特に、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、そしてイエメンでは、壊滅的なレベルの飢饉のリスクにさらされており、これら4ヶ国だけで140万人の子ども達が栄養不良により命を落とす危険があると報告されています。

※ワールド・ビジョン・ジャパンは、南スーダンで緊急支援を続けています。



ソマリアにて、道路を整備する女性たち。地域コミュニティでの食料の流通と確保につながります

G7は過去のサミットにおいて、食料安全保障(食べ物の安定的な確保)と栄養(飢餓や栄養失調の対応と予防)を重要議題としてきました。会議後の対応策や資金拠出は必ずしも十分ではありませんが、これまで、G7が一致して行動を起こすことを表明してきました。

2009年「ラクイラ食料安全保障イニシアティブ外部リンク(議長国イタリア)
飢餓対策や食料安全保障のため220億ドル(約2兆円)の拠出を約束

2012年「食料安全保障および栄養のためのニュー・アライアンス」(議長国アメリカ)
向こう10年間で5,000万人を貧困から救い、政府と民間セクターが協力して慢性的な飢餓と栄養不良を解決すると宣言

2013年「成長のための栄養サミット」(議長国イギリス)
政府や国際機関、市民社会などが、栄養対策のため2020年までに230億ドル強の支援をおこなうと表明

2015年「エルマウ・サミット首脳宣言」(議長国ドイツ)
2030年までに開発途上国における5億人の飢餓を解決すると表明>

南スーダンに住む家族。食料確保に困難を抱えていますが、支援により長男は学校へ行けるようになりました

今回のタオルミナ・サミットでも、明白な飢餓の実態を前に、緊急そして長期的な解決策を表明することが期待されていました。

実際に、議長国のイタリア政府も食の安全保障について積極的な姿勢を示しており、今年1月末の段階では、ワールド・ビジョンをはじめ市民社会とG7各国のシェルパ(首脳の補佐官)で活発な政策対話がおこなわれるなど、飢餓対策の前進に向けて期待が高まっていました。

G7サミットに参加したワールド・ビジョンのスタッフ

具体策を欠いた首脳宣言


しかし、会議後に発表された「首脳宣言(コミュニケ)」は、具体的な解決策の伴わない"言葉だけ"の内容となりました。

食料安全保障と栄養については、「2015年の『エルマウ・サミット首脳宣言』で掲げられた『2030年までに、開発途上国の5億人の人々を飢餓と栄養不良状態から救い出す』外部リンクという共同目標を再確認する」とあり、そのことは最低限の評価ができます。

しかし、この大きな目標をどのように達成するかについては、昨年の伊勢志摩サミットに引き続き、「さまざまな資金を組み合わせたファイナンス、および民間資金を活用する官民連携を奨励する」といった言葉以上の具体策は示されませんでした

南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、イエメンにおける飢饉リスクについても、「深く懸念している」とし、今年2月に国連事務総長が44億ドル(約5,000億円)の緊急支援を呼びかけたことについて「強く支持」しながらも、G7政府として追加の資金拠出をおこなうことや抜本的な飢餓対策を講ずることについての表明はありませんでした

具体的な行動の欠如は、食料問題以外にも、内戦勃発から6年を迎えたシリア危機や、難民・移民の問題、気候変動など各テーマについても同様であり、NGO/NPOを含む市民社会から多くの失望の声が上がりました。


タオルミナ・サミットにNGOの立場で参加した、ワールド・ビジョン・インターナショナルの政策ディレクター、クリス・ダークセン=ハイベルトは首脳宣言を受け、「今回は首脳7名のうち4名にとって初めてのサミットであったが、それは壊滅的な人道危機や最も弱い立場に置かれた子ども達に対して、決定的な行動を起こさないことの言い訳にはならない」とし、「何百万もの人々がいま命の危険に直面している。手遅れになる前に、国際社会は行動しなければ」と危機感を訴えました。


ソマリアに住む家族。母親である女性は現在、栄養プログラムによる支援で研修を受けています

飢饉回避のため、政治・国際社会への働きかけを続けます


次回2018年のG7サミットは、カナダを議長国として開催される予定ですが、ワールド・ビジョン・ドイツの保健政策マネジャー、マーウィン・メイヤーは、「早く食料を届けなければ、数十万人の子ども達が来年を迎えられない。彼ら彼女らにとって、2018年がより良いサミットになるように望む余裕はない」と言います。

直近の大きな政治決定の場として、7月7~8日にドイツ・ハンブルクで「G20サミット」が開催されます。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、ドイツ市民社会をはじめ国際的なパートナーシップと協力しながら、栄養・食の安全保障について解決策が取られるよう、引き続き現場に根差した提言活動を進めていきます


エリザベス(10歳)の家族は、食料を得るため小屋を売りました。学校の給食はエリザベスにとって重要な食事です





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