地震や津波、豪雨など自然災害の多い日本では、災害に関するニュースを目にする機会が多いため、災害支援に関心の高い人も多いでしょう。災害支援が話題にのぼるときは、現地で活動する災害ボランティアにスポットが当たりがちではありますが、被災地を支援する方法はボランティアのほかにもいろいろあります。
この記事では、まず国内と国外の災害支援の現状と、日本企業による災害支援への参加のあり方を解説します。そのうえで、ワールド・ビジョンによる実際の災害支援活動の例を、国内と海外に分けて詳しくご紹介。さらに、災害時に被災地を支援するためにできるさまざまな活動のうち代表的なもの3つを挙げ、それぞれについて詳しく説明します。
はじめに、災害支援の現状を詳しく見ておきましょう。ここでは日本国内で起きた災害と海外で起きた災害への支援についてそれぞれ解説しますが、日本国内の災害支援についての説明では、災害ボランティアについても触れていきます。
後述するように災害支援は行政主導で行われるのが一般的ですが、日本企業がどのように支援に参加しているのかもあわせてご紹介します。
日本の災害対策基本法には、災害時に住民の生命や身体、財産を保護するという自治体の責務が明記されています(注1 p.12)。
ただし、このための取り組みをすべて行政が直接行うことはできないため、実際の災害支援は、社会福祉協議会やNPO、そのほかの組織や個人ボランティアなど、さまざまなアクターと連携しながら行われます。特に、社会福祉法に基づき全国の都道府県や市区町村に設置されている社会福祉協議会は、被災者支援や復旧・復興に向けた地域支援を行う組織であり、災害発生時に災害ボランティアセンターを開設し、運営しています。この災害ボランティアセンターは、ボランティアの募集や被災地のニーズ調査などを行うほか、ボランティア活動に関して行政等との調整を行う役割も担います。(注1 p.17)。
日本では1995年が「ボランティア元年」と呼ばれていますが、これはこの年に起きた阪神・淡路大震災の被災者を支援するために、多数のボランティアが全国から被災地に集まったことが理由です。阪神・淡路大震災の際は延べ137万人以上がボランティアとして支援に参加し、これ以降、全国でボランティア活動が発展するきっかけとなりました(注2)。
2011年の東日本大震災にいたっては、災害ボランティアセンターをとおして約150万人がボランティア活動に参加しました。また、これまで災害ボランティアセンターをとおすことなく、さまざまな災害支援に参加したボランティアの数は550万人いると推定されています(注2)。
災害支援の仕組みや方針がわかったところで、次は実際の災害支援活動を詳しく見ていきましょう。ここでは、ワールド・ビジョンが行った最近の災害支援の実例を、国内と海外に分けてご紹介します。
2018年に西日本豪雨が発災した際、ワールド・ビジョンは被災地でのニーズ調査に基づいて、子どもたちへの支援を行いました。
具体的には、避難所の人出が少なくなる週末にスタッフを派遣して子どもたちをサポートするなど、子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりのためのさまざまな取り組みを実施。子どもたちを対象とした活動のほかに、保護者向けに開催した子どもの心のケアに関する座談会も好評でした。
同様に、2019年に台風によって被災した福島県では、慣れない避難生活による子どもたちのストレスの緩和を目的とした「キッズスペース」を、福島県を拠点に活動するNPO法人と協力して開設。未就学児から高校生までの子どもたちが、普段はできない新しい遊びにいきいきと取り組む貴重な機会が生まれ、子どもたちだけでなく保護者からも喜びの声が聞かれました。
2024年1月1日に発生した石川県能登地方を震源とする地震を受け、子ども支援を中心とした支援を行うことを決定しました。
能登半島地震の緊急支援募金の受付も開始しました。(2024.01.04 加筆)
2021年8月にハイチをマグニチュード7.2の大地震が襲った際、ワールド・ビジョンは次のような多岐にわたる支援活動を展開しました。
このような活動をとおして、支援開始から1年の間に、ワールド・ビジョンは合計15万人を超える被災した人々に支援を届けてきました。
このように、災害が起きた際にはさまざまな支援が必要となり、行政以外にもたくさんの組織が支援活動に取り組むこととなります。こうした状況の中で、被災者を支援するために私たち一人ひとりにできるのはどんなことでしょうか。ここでは、ボランティア参加を含めた具体的な支援の方法を3つご紹介します。
国内で災害が起きたとき、ボランティアとして被災地支援に貢献したいと思う人は少なくないでしょう。実際に、多くの災害ボランティアが、被災地の復旧や復興に大きく貢献しています。
災害ボランティアは、がれきの撤去や泥出し、炊き出し、災害ボランティアセンターの運営の補助など、さまざまな活動を行います。発災直後は力仕事が多く、時間が経つと心のケアやイベント実施などにニーズが移ってくのが特徴です。
ボランティアとして災害支援を行う際、まずは最新の情報を確認することが重要です。ただし、被災地の自治体に電話をすると負担になってしまうので、社会福祉協議会のウェブサイトやSNSで、ボランティアの受け入れ体制やニーズなどを確認するとよいでしょう。
ボランティアとして活動するにあたっては、被災地に負担をかけないための準備が必須です。被災地では物資が限られているため、現地での物資調達は被災者への負担となります。飲料や食べ物、宿泊先、交通手段は自分で確保し、活動中の事故などに備えてボランティア活動保険に加入することも忘れないようにしましょう。
被災地に着いたら、災害ボランティアセンターで個人ボランティアとして登録します。マッチングを経て支援内容が決まったら、オリエンテーションを受けた後に実際のボランティア活動が始まります。活動終了後には、災害ボランティアセンターのスタッフへの報告も必要です。
前述のように被災地では一時的に物資が不足するため、支援物資を送ることも、災害支援に大きく貢献する方法の1つです。
しかしながら、民間の輸送サービスを利用して物資を送る場合、交通規制などの影響で届くまでにかなりの時間がかかる場合があります。また、送った物資が被災者に配られるまでには、受け取り側での中身の確認や仕分けが必要であるため、それがかえって行政職員への負担となってしまう場合もあるので注意が必要です。
したがって、賞味期限の近い食品を送らないといった基本的な配慮だけではなく、中身が何かを箱に書く、極力1つの箱に1種類のものしか入れない、といったような配慮も求められます。また、受け取る側でスムーズに対応してもらえるように、避難所や市区町村を宛て先にして送るのではなく、連絡が取れる知人宛てに送るのが望ましいでしょう。
当然ながら、被災地のニーズは刻一刻と変化します。被災者に役立ててもらえるよう、きちんとニーズを把握したうえで必要な物資を送ることを心がけたいところです。
ここまで見てきたように、災害ボランティアとしての活動や支援物資の送付には、事前の情報収集や準備が欠かせません。だからこそ、直接的な支援は自治体やNPOなどに任せ、自分はお金を送ることでそれを間接的に支えるという選択肢もあります。災害時の金銭的な支援は、大きく分けて義援金と寄付の2つに分けられます。
災害発生時に広く募集される「義援金」は、受付団体をとおして被災した自治体に送られ、被災者に配分されるものです。公平かつ平等に配分額を決定する必要があるため、お金が被災者に届くまでに時間がかかりますが、被災者にとっては貴重な現金支援となります。
これに対して、支援団体への「寄付」は、ワールド・ビジョンのように災害支援活動を行う団体の活動資金となります。被災者に直接現金を届けるものではありませんが、自分が支援したいと思う団体を選んで、その活動を後押しすることが可能です。
災害が発生して寄付をしたいと思い立ったとき、どの団体に寄付をするかで迷わないようにするためには、日ごろから情報収集をしておくのがよいでしょう。
例えばワールド・ビジョン・ジャパンは、全国災害ボランティア支援団体ネットワークの子ども支援分野のコーディネーション・ワーキンググループのメンバーであり、2022年に完成した被災者支援コーディネーションのガイドライン策定にも参画しました。さらに、災害時、子どもの心のケアをテーマとした無料セミナーでも講師を務めるなど、災害時の子どもへの支援で厚い信頼を獲得しています。
ワールド・ビジョンは、いつどこで起きるともしれない災害や紛争に迅速に対応できるよう備えておくため、緊急人道支援のための募金を常時受け付けています。
緊急援助活動は、文字通り時間との戦いです。災害が発生すれば多くの人が一瞬にして日常を奪われ、支援に頼らざるを得なくなります。そんなときに、必要とされる支援を迅速に届けられるよう、ぜひワールド・ビジョンの緊急人道支援募金へのご協力をお願いします。
ワールド・ビジョンの活動にご関心を持っていただけた方は、ぜひメールマガジンにご登録ください。月に1回、お届けします。
注1 内閣府:防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック
注2 政府広報オンライン:被災地を応援したい方へ 災害ボランティア活動の始め方
注3 JICA:国際緊急援助とは
注4 外務省:災害対応支援Q&A
注5 外務省:ODA(政府開発援助)-防災 日本の取組
注6 ODA見える化サイト:検索結果一覧 2021年以降の水資源・防災分野課題
注7 SEMA:設立の趣意
注8 SEMA:加盟企業・市民団体の一覧