世界には、きれいな水を十分に飲めない人々が数多くいます。水が足りないだけでなく、不衛生な水を飲んで病にかかり、命を落とす人も少なくありません。こうした世界における水問題の原因は、さまざまです。
そこで本記事では世界の水問題の現状や、考えられる原因について具体的に紹介します。現状を知り、今の自分にできることを一緒に考えていきましょう。
世界では22億人、つまり10人に3人が安全に管理された水を使用できずにいます。10人にひとりにあたる、7億8,500万人は基本的な水サービスを受けることができません。このうち1億4,400万人は、湖や河川、用水路などの未処理の地表水を使用しています。安全に管理されていない、水は動物の糞尿やウイルス、菌が混じっているため、そのまま飲むには危険です。
不衛生な水が原因で5歳を迎える前に命を落とす子どもは毎日700人にものぼります。トイレや手洗いの設備が身近にない状況も大きな課題です。下水道設備が整っていないことや、石けんを使った手洗いができないことで、不衛生な環境の中、病気や下痢症によって亡くなる人もいます。特に、抵抗力の弱い子どもにとって、この問題は深刻です。
世界の水問題には、以下のとおり、さまざまな原因があります。
国ごとの状況や環境によって、何が原因となって水問題が起きているのかは異なります。また水道設備が整っている国でも、水問題は起こり得るのです。日本は現在、水に恵まれた環境が整っていますが、地球温暖化や水源の破壊によって、今後、水問題が他人事ではなくなる可能性もあります。
世界では水道やトイレ、下水道といった衛生設備のない国が多くあります。その結果、生活排水がそのまま流されるため近隣の河川が汚染され、安全な水が手に入らない地域があるのです。
世界では約23億人もの人がトイレを使えない状況下にあります。野外で排泄するしかない場合、直接川に流された糞尿が水質を汚染し、飲み水として利用できなくなることも少なくありません。
例えば、インドネシアにあるチタルム川は長さ300kmにもおよび、川沿いに住む約3,000万人の生活を支えています。しかし、チタルム川は「世界で最も汚染された川」と称されるほど、水質汚染が深刻な川です。
具体的には、鉛(なまり)が、アメリカで安全な飲料水の基準値として定められている量の1,000倍も含まれているなど、飲料用には到底およばない水質といえます。実際、周辺に住む人は手足の疥癬(かいせん)といった病に苦しんでいます。それでも汚染された川の水を飲み、生活用水として使わざるを得ない人々が多くいるのです(注1)。
水の使用量そのものが増加することにより、水不足や水質汚染が発生し、水問題となるケースもあります。特に問題となるのは農業用水です。世界では、約70%もの水が農業用水として使われています(注2)。
そのため農業が開発途上にある中東や北アフリカ地域などの国では、農業や帯水層を利用した灌がい(かんがい)農地の拡大が積極的に行われています。そのため、水が農業に使われ、生活用水や飲料水が不足しているのです(注2)。
また人口の増加や人の集中により水の使用量が増加し、水不足に陥る場合もあります。例えば中東や北アフリカ地域では、世界で最も多いとされる推定760万人の強制移住者がいます(注3)。このように多くの移住者が流入することで、受け入れ先の国も水不足に陥るケースもあるのです。
ほかにも世界的な人口の増加や産業の発展により水の使用量が増えることで、水問題が一層深刻になる可能性もあります。
地球温暖化も、世界の水問題における1つの要因です。地球温暖化は、地球の温度を上げるだけではなく、私たちの暮らしにさまざまな影響をもたらします。
例えば、地球温暖化により河川や海水の温度が上がると、植物プランクトンの増殖や水源地における水の循環が停止し、水系に重金属や塩類が流出して水質が悪化することが考えられます。
ほかにも地球温暖化が進むと地表や海面からの蒸散量が増え、農地での水需要が高まったり、河川の水量が減ったりといったあらゆるリスクがあるのです(注4)。
環境省によれば、地球温暖化によって上昇する気温を2℃から1.5℃に抑えるだけでも、水問題に苦しむ世界の人口割合を最大50%まで抑えられる可能性があるとしています(注5 p.5)。それほど、地球温暖化が水問題に与える影響は大きいのです。
水をめぐる紛争により、水問題が起きている地域もあります。水をめぐる紛争とは、水の配分や所有権に関する争い、上流地域での汚染物質排出に対する問題などのことです。特にインフラが整っておらず乾期も厳しい中東エリアでは、水をめぐる紛争が絶えません。
イスラエルやヨルダン、レバノンといった国では、ヨルダン川の所有権や水の配分をめぐって争いを繰り広げてきました。その北東部では、トルコやイラク、シリアがチグリス・ユーフラテス川の水資源開発と配分を巡り争ってきた歴史もあります(注4)。こうした紛争が原因で、水不足に苦しむ人も世界には多くいるのです。
ワールド・ビジョンは2030年までに、すべての人が安全で衛生的な水を利用できることを目指しています。そこで世界の水問題に対し、数々の取り組みを実施しています。
ワールド・ビジョンでは浄化槽やタンクなどの設備を支援することで、きれいな水を届けています。例えばインドのカンドゥクール地域ではチャイルド・スポンサーの皆さまからご支援いただいた寄付金を使い、太陽光パネルとモーターがついた水タンクを設置。178世帯がきれいな水を利用できるようになり、多くの子どもたちが不衛生な水による病気から守られました。
またエスワティニのシェウラ地域でも同様に、給水設備を設置。以前は2km離れた井戸まで水を汲みに行っていた12歳のティヤンザちゃんは、「家の近くに蛇口ができて、本当にうれしいです」と語ってくれました。もう彼女が学校に遅刻することも、長距離の水汲みに疲れることもありません。
ワールド・ビジョンでは地域の人々が自主的に水資源を管理できるよう、「水委員会」といった住民組織の立ち上げや運営を支援しています。例えばバングラデシュでは補助金を活用し、スラムでごみ・衛生管理能力を強化する事業を実施。
住民による「ごみ・衛生管理委員会」を組織し、相談を重ねてトイレを新設する場所を選定しました。さらにトイレの設置とともに、清掃方法など、維持管理のやり方を教える研修も行っています。今後は地域の人々だけで衛生的な環境を維持できるよう支援を続けていきます。
ワールド・ビジョンではきれいな水の大切さ、手洗いの仕方、感染症の予防法などといった知識を広める啓発活動も行っています。場所は学校や国内避難民キャンプなど、さまざまです。地域ごとに地道な啓発活動を進めています。
支援を必要とする人の中には、不衛生な環境で暮らすことが当たり前になっている人も多くいます。そこで改めてトイレや水道といった設備の大切さや、石けんによる手洗いにどのような効果があるのかを伝えています。知識や衛生に対する意識が広まれば、感染症を効果的に予防することができます。
ワールド・ビジョンでは世界の水問題を解決すべく、さまざまな形で支援に取り組んでいます。活動にご関心を持っていただけた場合は、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。
1日あたり150円のご支援で、きれいな水を得られる子どもが増えます。支援の成果については支援を受けた子どもから直接手紙が届くため、ご自分が支援した実感や喜びも感じていただけるはずです。
ぜひ私たちとともに、きれいな水で世界の子どもたちを救いましょう。
私たちの活動を支えるのは、
「チャイルド・スポンサーシップ」というプログラムです。
チャイルド・スポンサーシップは、
月々4,500円、1日あたり150円の皆さまからの継続支援です。
貧困、紛争、災害。世界の問題に苦しむ子どもとともに歩み、
子どもたちの未来を取り戻す活動に、
あなたも参加しませんか。
今あなたにできること、
一日あたり150円で子どもたちに希望を。
注1 AFPBBニュース:「世界で最も汚染された川」 水質改善に本腰 インドネシア
注2 ユニセフ:世界水週間(8/23~8/27)9割の子どもたちが高い水ストレス
注3 世界銀行:世界的な移住増加の10%は水不足に遠因
注4 国土交通省:水資源問題の原因
注5 環境省:IPCC AR6 特別報告書 p.5
注6 ぎふの木ネット協議会:森林の意味と役割
注7 林野庁:世界森林資源評価2020主な調査結果(仮訳) p.3-4