「ジェンダー平等」とは、2015年の9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」における目標の1つです。SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
そしてSDGsに含まれる17項目の目標のうち、5番目にあたる目標が「ジェンダー平等を実現しよう」というものです。そこで本記事では日本や世界におけるジェンダーの現状、および具体的に実践されている対策について紹介します。
日本にも、ジェンダー平等における課題は多く残されています。現状を知り、今の自分にできることを一緒に考えていきましょう。
SDGsの「ジェンダー平等」は、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女児の能力強化を行う」とあります。この目標を達成するために掲げられた具体的な目標は、以下の9つです。
5.1 | あらゆる場所におけるすべての女性および女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する |
5.2 | 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性および女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する |
5.3 | 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する |
5.4 | 公共のサービス、インフラおよび社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する |
5.5 | 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画および平等なリーダーシップの機会を確保する |
5.6 | 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画および北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスを確保する |
5.a | 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、 オーナーシップおよび土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する |
5.b | 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する |
5.c | ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性および女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策および拘束力のある法規を導入・強化する |
(注1)
ジェンダー平等を達成するには差別的な認識や偏見をなくすだけでなく、社会的、経済的構造から変化させていく必要があります。例えば女性の就労や経済活動の機会を作るには、政府から企業に働きかけるなど、環境を整える必要があります。女性の就労の妨げが家事であれば、家事をサポートするような公的サービスや、能力開発が求められる場合は就労のための能力強化の支援も求められる場合があるでしょう。
こうした取り組みの対象は、必ずしも女性や女児だけに限りません。ジェンダーとは社会のなかで生まれた男女の役割の違いによって生まれる、社会的・文化的な性別です。このジェンダーにもとづく偏見や不平等をなくし、すべての人が平等に自由でいられる権利を持つことが、ジェンダー平等におけるゴールといえます。
続いて、SDGs「ジェンダー平等」の現状について見ていきましょう。日本と世界、それぞれ解説します。
日本はアメリカやドイツ、フランスといった先進国に比べて、ジェンダー平等が達成できていない傾向にあります。2021年に世界経済フォーラムが発表した「The Global Gender Gap Report 2021」において、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中120位(注2)。先進国だけでなく、ASEAN諸国よりもジェンダー平等に課題があると分かりました。
日本では特に経済や政治の部門におけるジェンダー平等が課題となっています。例えば日本企業における女性の管理職は14.7%、パートとして働く女性は男性の約2倍です。こうした背景があり、女性の平均所得は男性より43.7%低い現状となっています(注3)。
また日本における平等感についての調査では、「(社会全体で)女性よりも男性の方が優遇されている」と回答した人が全体の75.6%にものぼりました(注4)。
世界には、さまざまなジェンダーの問題があります。例えば6〜11歳の子どものうち、学校に通えない女の子は男の子の約2倍です。ほかの年齢層を見ても、学校に通えない子どもの割合は、男の子より女の子のほうが高い結果となっています(注5)。
また世界では、子どものうちから結婚を強要される「児童婚」も深刻な問題です。児童婚は社会進出の機会損失だけでなく、家庭内の暴力や早すぎる妊娠、感染症、貧困の連鎖などジェンダー以外の問題とも複雑に絡み合っています。
ユニセフの発表によれば、世界で6億5,000万人もの女性や子どもが、児童婚の影響を受けているとされています(2021年10月時点)(注6)。さらにソマリアなどアフリカの一部地域では、女性器を切除する慣習も存在します(注7)。世界にはこうした命を脅かす危険な慣習や人身取引、暴力や搾取といったジェンダーに関する課題があります。
では日本や世界では、ジェンダー平等の実現に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。具体的な取り組みの例を見ていきましょう。
日本ではSDGsの目標達成に向けて、「SDGsアクションプラン」が策定されています。アクションプランでは特に、女性の社会進出を推し進めるための計画が多数。2021年(令和3年)当初では、約2.3億円の予算が割かれています(注8 p.7)。
計画のなかでも代表的なものが「働き方改革」です。働き方改革とは柔軟な働き方を実現し、女性をはじめとするすべての人が社会進出しやすい環境を作る改革のこと。また女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」とし、優良銘柄として東京証券取引所と共同で投資家に紹介する事業を実施しています(注8 p.8)。
なおSDGsが採択される以前から、日本はジェンダー平等に向けた諸外国への支援を実施。例えば2013〜2015年の3年間では、東南アジアやアフリカを中心に30億ドル超の支援を行いました(注9)。
「The Global Gender Gap Report 2021」において、もっともジェンダーギャップが少ないのは、アイスランドです。なおアイスランドが1位となるのは、12年連続です(注10)。アイスランドでは父親と母親で合計1年の育児休暇が取れます。さらにこの期間中の給与の8割は政府から支給されるのです。こうした社会的な補償が拡充されることで、ジェンダー平等が徐々に実現されています(注10)。
しかし国が貧しい場合や紛争により政治体制が混乱している場合など、国が主導して保障や制度を整えられないことも少なくありません。
こうした国々では諸外国やユニセフ、国際NGOなどを通して国際社会の協力を得て、徐々にジェンダー平等を推進しています。
ワールド・ビジョンでは、SDGsの「ジェンダー平等」達成に向けて、数々の支援を実施しています。
ワールド・ビジョンでは、人身取引を撲滅するための事業を行っています。例えば人身取引にあった人を保護し心のケアをするほか、人身取引撲滅に向けた啓発活動も実施。国際機関や政府と連携して活動を行っています。
また、特に東アジアのメコン河流域諸国では人身取引が絶えないため、「メコン地域人身取引対策事業」を開始。2011年10月〜2016年6月までの間、啓発活動や様々なサービス提供による人身取引の予防、被害者の保護、政策への働きかけを行いました。
本事業では男性や男の子も含め、性別に関係なく立場の弱い人々を対象に支援しています。
ワールド・ビジョンでは女性が収入を得られるよう、就労推進プロジェクトも行っています。例えばタンザニアのゴロワ地域では女性に対する農業の指導、貯蓄組合や小規模金融機関を活用した収入向上プログラムなどが実施されました。ほかにも地域ごとのニーズに応じて、女性の就労や生計向上を支援し、経済活動におけるジェンダー平等を後押ししています。
ワールド・ビジョンはすべての子どもたちが平等な未来を描けるよう、支援プログラム「チャイルド・スポンサーシップ」を行っています。
チャイルド・スポンサーシップでは皆さまから月々4,500円の継続的な寄付をお預かりし、家族の生計向上や教育、水衛生、保健・栄養など子どもを取り巻く環境全体に働きかけます。貧困による教育機会の損失や、将来の選択肢が狭まることを防ぎます。
ジェンダーに関係なくすべての子どもたちが等しく、希望ある未来を描くことができるために、私たちと一緒に一歩を踏み出してみませんか
ワールド・ビジョンの活動にご関心を持っていただけた場合は、ぜひチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いいたします。1日あたり150円のご支援で、未来が変わる子どもたちがいます。紹介したチャイルドからの手紙や、成長の報告書を通じて支援の成果を実感していただけます。
すべての子どもたちが等しく、希望ある未来を描くことができるために、ぜひ私たちと一緒に一歩を踏み出していただけますと幸いです。
注1 農林水産省:SDGsの目標とターゲット
注2 世界経済フォーラム:Global Gender Gap Report 2021
注3 男女共同参画局:世界経済フォーラムが「ジェンダー・ギャップ指数2021」を公表 内閣府男女共同参画局総務課
注4 男女共同参画局:社会全体でみた男女の平等感
注5 UNESCO:New Methodology Shows that 258 Million Children, Adolescents and Youth Are Out of School,p11
注6 ユニセフ:児童婚発生率は過去10年間で15%減少児童婚の撤廃に向けた新報告書発表
注7 ユニセフ:女性器切除(FGM)
注8 SDGs推進本部:SDGsアクションプラン2021,p7,p8
注9 外務省:【参考】 女性の活躍のための30億ドルの支援の成果
注10 NHK:世界で一番ジェンダー平等の国=アイスランドのお話