フィリピン共和国は東南アジアの島国で、人口は約1億900万人(2020年フィリピン国勢調査)で国土は日本の8割程度です。人口密度では日本をわずかに上回る水準です(注1)。
日本とフィリピンは結びつきが強く、2018年にフィリピンを訪れた日本人は60万人をこえました。日本人が訪問する国・地域のなかで9番目に多い数です(注2)。
一方で日本に滞在するフィリピン人は約28万人で、中国や韓国などに次いで4番目に多くなっています(注3)。
近年は経済成長を続けていたものの、新型コロナウイルスによる経済への影響のほか、常に自然災害に悩まされてきた国でもあります。とくに地方部に住む子どもたちの栄養不足、発育不良の問題は深刻です。
この記事ではフィリピンの台風被害の影響や解決が難しい貧困問題の実態を紹介します。日本がこれまで行ってきた支援や、今後必要とされる支援についても解説します。
これからフィリピンの子どもたちのために、私たちに何ができるかを考えるきっかけにしていただけたら幸いです。
フィリピンは2000年代まで長く経済が低迷していました。ほかのASEAN諸国が経済成長を遂げる中、政情不安などの影響からフィリピンは取り残される形だったのです(注4)。
2010年代から近隣諸国を上回る経済成長を見せています。2020年には新型コロナウィルスの影響で経済成長率は年9.5%のマイナス成長を記録したものの、2021年には年プラス5.6%と高い水準に回復しました(注5)。
しかし、地域格差が問題となっています。2021年の調査では1,000万人以上が食料を調達するのに十分な収入がないという結果が出ました(注6)。
とくに相次ぐ自然災害は、貧しい人々に深刻な影響を与えています。
フィリピンは台風、地震、火山活動など自然災害が頻繁に起こっています。
人命や住む場所を奪われるだけでなく、その後、ライフラインが途絶えて物資の供給を十分にできなくなることもあります。
2013年の台風30号は、フィリピン全土で死者・行方不明者が約8,000名となる甚大な被害をもたらしました。また2020年には、ルソン島南部にあるタール山の噴火が起こり、周辺に住む20万人が退避を余儀なくされました(注7)。
経済開発が遅れている農村部ほど、自然災害による被害が大きく、結果的にフィリピンでの地域格差を生み出す一因になっています。
フィリピン政府統計局によると、2021年前期のフィリピンの貧困率は23.7%で、2018年の同時期の21.1%からやや悪化しています。貧困率に該当するのは月収が約2万9千円を下回る世帯です(注6)。(2022年4月1日の通貨レート:1ペソ=2.37円を元に算出)
地域別で比較すると顕著な地域差が明らかです。貧困率が最も低いのは首都マニラ周辺で2.3%。これに対してミンダナオ地方西部では61.3%と大きな開きがあります(注8)。
フィリピンでは、外国のIT企業の業務を請け負うBPO産業が急増し、外貨の獲得など経済成長の下支えになってきました。しかしインフラや人材が都市部に集中しているために地方には雇用機会や所得が生まれず、結果的に格差が拡大したとの指摘もあります(注9 p.35)。
日本のフィリピンに対する二国間援助額は2019年、累計10億ドルとなりました。日本からの援助先として、フィリピンはインド、バングラデシュに次ぐ世界第3位です(注10)。
このほか度重なる台風被害などでも、日本はフィリピンに対して無償で緊急支援を行っています。
災害時の人道的な支援、また経済発展を促すための寄付は、長年にわたって行われてきたのです。
2022年1月には前年末に大きな被害をもたらした台風被害を受けて、フィリピンに対して、1,300万ドルの緊急無償資金協力を行っています(注11)。
とくに被害の大きかった中南部の被災者に対して食料、水やシェルター、生活必需品などを支援しました。
資金協力だけではなく、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ支援では、JICAがフィリピン国内におけるワクチンの輸送を支援する援助を行っています(注12)。
日本はフィリピンにとって最大の投資国、援助供与国です(注13)。
フィリピンから見た日本は第3位の輸出先であり、輸入元としては中国に次いで第2位の国です(注14)。
2011年には、両国関係を「戦略的パートナーシップ」と位置づけ、貿易面でも関係が強化されてきました。輸入額、輸出額ともに近年ほぼ一貫して右肩上がりに増えているのはその証と言えるでしょう(注1)。
ビジネスの交流が進んだ結果、日本企業がフィリピンに生産拠点を作る例も増えています。またフィリピンの人材が看護師や介護福祉士の資格を取得して日本に滞在するなど人材交流も進んでいます。
フィリピンの経済的な発展は、日本にとっても大切なのです。
子どもたちの命と未来を守るため、ワールド・ビジョンのチャイルド・スポンサーシップへのご協力をお願いします
ワールド・ビジョンでは、フィリピンの人々の暮らしを守るために寄付を通じて支援を行っています。フィリピンの地方部の貧困率は依然として高く、日々の食料の確保にも困窮する人々が多くいます。
また災害の発生時にはより多くの人々が生命の危機にさらされることになり、緊急的な支援が必要です。加えて、防災やインフラを強化し、災害に強い生活環境を整えるにも支援が欠かせません。
フィリピンへの寄付は、人々の生命や暮らしを守ることに直結するのです。
フィリピンで求められている支援には次のようなものがあります。
2021年12月の大型台風の被災時は、日本をはじめ世界各国が人道支援を行いました。命を救われた人々の中には住居を失ったケースも少なくありません。自然災害による被害を抑え、貧困格差を是正するには防災対策や、教育環境の整備など長期的な支援が必要です。
ワールド・ビジョンが2009年から継続している、フィリピンでの2つの支援事業を紹介します。
どちらも大型台風の被害を何度も受けた、食料の確保さえままならない貧困世帯が多い地域です。継続的に子どもたちが健やかに成長できる環境を整えるためのサポートを行っています。
レイテ地域開発プログラム
ワールドビジョンはレイテ地域で2009年から開発プログラムを通して継続的な支援を行ってきました。
「レイテ島」と聞くと、第2次世界大戦で日本軍とアメリカ軍による激戦の舞台となった歴史を思い出す人もいるかもしれません。
首都マニラから南東へ約580kmのレイテ地域では、度重なる自然災害により貧困が続いています。加えて、栄養不足の子どもが多くなっています。
また、周辺の急速な都市化が進み、レイテ地域にも人口流入が続きました。その結果、農業と漁業に従事してきた住民の農地や漁場が狭くなり、ただでさえ貧しかった生活がさらに厳しい環境に追いやられています。
2013年には大型台風の甚大な被害を受けました。強度の高い家屋建設の支援や、小規模なビジネスの立ち上げサポート、子どもたちへの教材の支給などは現在も継続して行われています。
サマール地域開発プログラム
サマール地域もまたフィリピン南東部にあり、2013年の台風をはじめ度々自然災害に悩まされてきた地域です。
従来から貧困世帯が多いため、教育を受けられない子どもたちが多くいました。加えて虐待、育児放棄、人身取引など子どもたちの人権侵害も課題となっています。
子どもの5人に1人は栄養不良で、乳幼児の死亡率が高いことでも知られる厳しい環境です。
そこで、ワールド・ビジョンはサマール地域開発プログラムを実施し、11,474人の子どもたちに識字能力向上の支援をしました。そのほか、1,244人の子どもに対して、子どもの権利などを学習する機会の提供なども行っています。
こうしたワールド・ビジョンによる子どもたちに向けた活動の多くは、チャイルド・スポンサーシップの皆様によって支えられています。
「チャイルド・スポンサー」とは、子どもたちが健やかに成長できるように持続的な環境整備を目的とした支援を行う制度です。
教育を受けられ、十分な栄養を摂れること、虐待や暴力から逃れ、子どもとして生きる権利が守られるように、地域の人々とともに環境改善を行ってきました。
チャイルド・スポンサーシップは、フィリピンの貧しい子どもたちを救う方法の1つです。1日150円の継続支援で、貧困に直面しているフィリピンの子どもが健やかに育ち、未来に希望を持てるようになります。
チャイルド・スポンサーになっていただいた方には毎年、チャイルドの成長報告をお届けするほか、お手紙を通じてチャイルドと交流し、成長を見守ることも可能です。またチャイルド・スポンサー同士も、Facebookグループを通じて交流できます。支援の成果はさまざまな形で実感いただけるでしょう。
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注1 外務省:フィリピン基礎データ
注2 外務省:日本人が多く訪問している国・地域
注3 出入国在留管理庁:令和2年6月末における在留外国人数について
注4 JICA:フィリピン
注5 フィリピン統計局:GDP Posts an 8.3 Percent Growth in the First Quarter of 2022
注6 フィリピン統計局:Proportion of Poor Filipinos Registered at 23.7 Percent in the First Semester of 2021
注7 外務省:海外安全ホームページ
注8 JETRO:2018年の貧困率は16.6%、2015年比で3割減少、2022年までに11%を目標に
注9 アジア経済研究所:『フィリピン経済・産業の再生と課題』調査研究報告書|2017 年
注10 外務省:ODA実績
注11 外務省:フィリピンにおける台風被害に対する緊急無償資金協力
注12 JICA:フィリピン向け無償資金協力贈与契約の締結:ワクチン接種に必要な機材の整備を通じ新型コロナウイルス感染症ワクチンの効果的で安全な接種体制の構築に貢献
注13 外務省:ODAとは
注14 CIA:The World Factbook
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