難民認定者数と認定率の世界比較、受け入れ数ランキングや日本の現状

世界の難民の数は、ここ10年間一貫して増加の一途をたどっています。難民たちが難民としての権利を享受するためには、避難した国で難民認定を受ける必要がありますが、世界の難民認定者数や難民認定率には大きな開きがあります。

この記事では、まず主要国の難民認定者数や難民認定率を概観し、難民認定者数が多い国や、難民受け入れ数が多い国、そして難民の出身国を、それぞれ上位からご紹介。さらに、日本の難民認定者数や難民受け入れに関する近年の変化についても解説します。

難民認定者数と難民認定率の世界比較

バングラデシュにある世界最大の難民キャンプで発生した火災の被害を受けた女の子
バングラデシュにある世界最大の難民キャンプで発生した火災の被害を受けた女の子

はじめに、世界の難民認定者数と難民認定率を比較してみましょう。主要国のデータを一覧にまとめ、その後に難民認定者数の多い国を上位からご紹介します。

主要国の難民認定者数と難民認定率

まずは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が公開しているデータを使って、主要国の難民認定の規模を比較してみましょう。ここでは、難民認定数のほかに、申請数と処理数(認定、不認定など、何らかの判断が下された件数)、そして認定率という合計4つの指標を、最新の2021年のデータを元に算出しました(注1、注2)。

なお、ここでの申請数には新規申請のほか、審査請求などそのほかの形態の数も含みます。また、認定率は、2021年の認定数を同年の処理数で割って計算しています。

2021年認定数2021年認定率2021年申請数2021処理数
アメリカ 20,590人 18.06% 210,488人 114,006人
イギリス 13,703人 56.56% 60,950人 24,226人
ドイツ 38,918人 15.14% 253,688人 257,029人
フランス 32,571人 15.65% 171,323人 208,187人
カナダ 33,801人 55.38% 35,839人 61,038人
オーストラリア 3,562人 13.53% 28,326人 26,321人

比較した国々の中では、認定数ではドイツが最多です。その後に僅差でカナダとフランスが続きますが、認定率ではイギリスとカナダが50%超えと突出しています。そのほかの国々は15%前後と似通った数字におさまっています。


世界で難民認定者数が多い国の上位12カ国

続いては、同じデータを使って、2021年の難民認定者数が多かった国をご紹介します。ここでは、認定数が1万人を超えている上位12カ国を掲載しました(注1)。


国名2021年難民認定者数
コンゴ民主共和国 44,545人
ドイツ 38,918人
カナダ 33,801人
フランス 32,571人
メキシコ 27,216人
アメリカ 20,590人
ウガンダ 19,551人
ギリシャ 13,775人
イギリス 13,703人
トルコ 13,227人
オーストリア 12,022人
オランダ 10,698人


先ほどご紹介したドイツ、カナダ、フランス、アメリカ、イギリスといった主要国も入っていますが、コンゴ民主共和国やウガンダといったアフリカの国々や、中米のメキシコも上位に位置しています。ほかに、中東アフリカ地域の難民が地中海を渡ってヨーロッパに渡る際に経由する、トルコやギリシャも上位に入りました。

主な難民受け入れ国と出身国

UNHCRの報告によると、難民のうち72%が近隣国に避難している
UNHCRの報告によると、難民のうち72%が近隣国に避難している

上で紹介したのは2021年の難民認定者数が上位の国ですが、各国が現在受け入れている難民の総数に目を向けると、ランキング上位に入る国の顔ぶれは大きく変わります。そこで、難民の受け入れ国と出身国を、同じくランキング形式で見ていきましょう。

難民受け入れ数が多い上位の国

UNHCRの報告によると、2021年末時点での難民の受け入れ数が多い上位10カ国は次のとおりです。なお、ここで言う「難民」には、UNHCRの分類上は難民と分けて数えられている、国外に逃れたベネズエラ人が含まれます(注3 p.19)。

難民全体に占める割合は、パレスチナ難民を含む難民総数2,710万人と、国外に逃れたベネズエラ人440万人を合計した3,150万人を分母にして計算しています(注4)。

2021年末時点の難民受け入れ数難民全体に占める割合
トルコ 375万9,800人 11.94%
コロンビア 184万3,900人 5.85%
ウガンダ 152万9,900人 4.86%
パキスタン 149万1,100人 4.73%
ドイツ 125万5,700人 3.99%
スーダン 110万3,900人 3.50%
バングラデシュ 91万8,900人 2.92%
レバノン 84万5,900人 2.69%
エチオピア 82万1,300人 2.61%
イラン 79万8,300人 2.53%

先ほどのランキングと異なり、欧米の主要上位10カ国に入るのはドイツのみです。難民のうち72%が近隣国に避難していると報告されているように(注4)、ドイツ以外の国々はいずれも、紛争や迫害が起きている国々の近隣に位置しています。

難民の主な出身国

一方で、多くの難民を送り出している国はどこなのでしょうか。同じUNHCRの報告によると、2021年末時点で難民となっている人々の出身国のうち、最も人数の多い10カ国は次のとおりです(注3 p.17)。

なお、ここでの難民全体に占める割合は、パレスチナ難民を除く難民数2,130万人と、国外に逃れたベネズエラ人440万人を合計した2,570万人を分母にして算出しています(注4)。

2021年末時点の同国出身難民数難民全体に占める割合
シリア 684万8,900人 26.65%
ベネズエラ 460万5,600人 17.92%
アフガニスタン 271万2,900人 10.56%
南スーダン 236万2,800人 9.19%
ミャンマー 117万7,000人 4.58%
コンゴ民主共和国 90万8,400人 3.53%
スーダン 82万5,300人 3.21%
ソマリア 77万6,700人 3.02%
中央アフリカ共和国 73万7,700人 2.87%
エリトリア 51万1,900人 1.99%

シリア内戦の勃発から10年以上が経過した現在でも、シリア難民が難民全体の4分の1以上を占めています。ベネズエラやミャンマーは難民流出が比較的最近話題になりましたが、アフガニスタンやアフリカの国々のように、長年紛争や政情不安が続いているために難民が帰還できず、難民問題が長期化している国も多くあります。

日本における難民の現状と近年の変化

難民としてレバノンへ逃れてきたクルド人の家族
難民としてレバノンへ逃れてきたクルド人の家族

ここまでは世界の難民認定や難民受け入れの状況を見てきましたが、私たちの住む日本ではどうなっているのでしょうか。

ここでは、日本の最新の難民認定者数や、そして別の形での難民や難民申請者の受け入れ数をご紹介し、日本の難民受け入れに関する近年の変化について解説します。



日本の難民認定者数

2021年に日本で難民申請を行った外国籍の人は合計2,413人で、審査の結果、難民として認定されたのは65人でした。このほか、過去に難民認定を申請した際に難民と認定されなかった外国人が、2021年に審査請求(不服申し立て)を行って難民と認められた例が9件。最終的に2021年に日本で認定された難民は、合計74人となっています。なお、2021年に行われた審査請求は合計4,046件でした(注5)。

この74人という数は、日本の1年間の難民認定数としては過去最多です(注6)。認定された難民を国籍別に見ると、実に32人がミャンマー人で、近年のミャンマーでの政情不安が影響していることがわかります(注7 p.8)。



難民認定以外での日本での難民の受け入れや在留許可

日本では、2010年から「第三国定住」と呼ばれる制度をとおして難民の受け入れも行っています。

これは、難民が最初に保護を求めた国から、彼らを定住者として受け入れることに同意した第三国へと移動する制度です。第三国定住の対象となるのは、すでに難民として認定されている人々です。多数の難民を受け入れている保護国からほかの国に難民を移すことで、保護国への負担を軽くし、国際社会が責任を分担し合う仕組みと言えます。

2021年には受け入れはありませんでしたが、日本はこの取り組みをとおして現在までに194人の難民を受け入れています(注6)。
さらに、日本では難民認定申請の審査の結果、難民と認定されなかった場合でも、人道的な配慮を理由に在留を認める場合があります。この仕組みのもと、2021年には合計580人が在留を認められました。配慮の理由としては、本国の情勢などが挙げられています(注5)。

特にこの年は、ミャンマーで国軍によるクーデターが発生したことで抗議デモが活発化し、国軍や警察の発砲等により市民が死亡・負傷する事案が報告されるなど、情勢の不透明感が増しました(注7 p.7)。これを受けて、本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置として、「特定活動」という在留資格でミャンマー人の日本への在留を認めることが決まりました。これもあって、難民認定数同様に、2021年は在留許可の数も過去最多となっています(注6)。



日本の難民認定や難民受け入れに関する近年の変化

上述のとおり、2021年には、ミャンマーの情勢悪化を受けてミャンマー人の難民認定やミャンマー人への在留許可が多く行われ、難民認定者数や在留許可数は過去最多を記録しました。

なお、上で触れたミャンマー人に対する緊急避難措置に基づき、日本では2022年3月末までに約4,600件の在留資格を許可しています。もともと、この在留資格は6カ月間有効なもので、就労も認められていました。しかし、ミャンマー情勢に改善が見られないことから、日本は2022年4月から在留許可の期間を1年に延長するなどの措置を実施。さらにミャンマー人の受け入れ態勢を拡充しています(注8)。

このほかにも、2022年7月にトルコ国籍のクルド人が日本で初めて難民と認定され、主要メディアでも報道されました。初回の難民申請が2018年に不認定となり、裁判を経て不認定処分が取り消されていましたが、「迫害の恐怖を抱く客観的事情がある」として、このクルド人申請者が難民に当たるとの判断が下されました(注9)。

日本の難民認定者数は世界的に見れば小規模ですが、このような近年の変化を見ると、徐々に拡大していく兆しがあると言えるかもしれません。


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エチオピアで子どもの健康状態を確認する様子。皆さんのご支援によってこのような活動を展開することができます

エチオピアで子どもの健康状態を確認する様子。皆さんのご支援によってこのような活動を展開することができます

難民認定を受ければ難民たちは一定の保護と基本的な権利の保障を享受できるようになります。しかし、特に近隣国の難民キャンプで暮らしている難民たちの生活は過酷で、支援がなければ日々の暮らしを維持することも難しい状況です。

現在はウクライナ危機に注目が集まり、シリアや南スーダンから近隣国に逃れている難民のような、長年避難生活を余儀なくされている人々が話題にのぼる機会が減っています。しかしながら、このように難民危機が長期化している地域においても、難民の人々は依然として苦難にさらされ続けているのが現状です。

私たちワールド・ビジョンは、難民となり、このような厳しい環境で避難生活を強いられている子どもたち・人々のために、世界各地で地道な支援活動を続けています。

故郷を離れて先の見えない生活を強いられている子どもたちの命と未来を守るため、ぜひワールド・ビジョンの難民支援募金へのご協力をお願いします。

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参考資料

注1 UNHCR:Refugee Data Finder 2021年の難民認定数など外部リンク
注2 UNHCR:Refugee Data Finder 2021年の難民申請数外部リンク
注3 UNHCR:Global Trends - Forced Displacement in 2021外部リンク
注4 UNHCR:数字で見る難民情勢(2021年)外部リンク
注5 出入国在留管理庁:令和3年における難民認定者数等について外部リンク 
注6 出入国在留管理庁:我が国における難民保護の状況等pdfアイコン
注7 出入国在留管理庁:令和3年における難民認定者数等についてpdfアイコン
注8 出入国在留管理庁:本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置(改訂)pdfアイコン
注9 日本経済新聞:クルド人男性、難民認定へ 入管庁が調整外部リンク

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