第88報:気仙沼市での防災支援が完了

将来の災害から、子どもたちの命を守るために(2012.11.8)

「ワールド・ビジョン・ジャパンからいただいた支援は、"命"に直結するものばかりです。将来の災害に備え、リスクが高い部分を支援していただいただけでなく、子どもたちが環境や、代替エネルギーについて考える機会を与えていただいたと思います」。2012年10月30日、ワールド・ビジョン・ジャパンによる気仙沼市への防災支援の引渡式で、菅原茂市長が語った言葉です。

気仙沼市は、東日本大震災により1,000人以上が命を落とし、およそ9,500世帯が被災するなど、甚大な被害を受けました。市の防災体制を強化し、将来の災害から気仙沼市の人々、特に子どもたちの命を守るため、ワールド・ビジョン・ジャパンでは気仙沼市教育委員会および危機管理課のご協力の元、様々な支援活動を行ってきました。

太陽光発電システム、井戸、防災倉庫支援

気仙沼市にある指定避難所の多くが、小・中・高等学校です。東日本大震災発生後、これらの避難所の多くで、電気や水道などのライフラインが寸断され、被災した子どもたちや、人々の生活に大きな打撃を与えました。

ワールド・ビジョン・ジャパンはソーラーフロンティア株式会社と協働で、指定避難所となっている小・中学校16校に太陽光発電システムを支援。合わせて、太陽光発電によって揚水が可能な井戸と、防災倉庫も支援しています。災害発生時には、最低限必要な電気と水を供給することができ、将来発生する災害から、人々の命を守る機能の強化につながります。さらに、子どもたちが普段の学校生活で井戸水の利用と太陽光発電システムの仕組みにふれる機会を通して、災害時にそれらを適切に活用できるようになることを期待するとともに、自然の恩恵を学び、防災意識を高める機会になることを目指しています。

小学校に設置された、太陽光発電システム
小学校に設置された、太陽光発電システム

子どもたちが願う「未来の面瀬」

支援を受けた学校の1つ、面瀬(おもせ)小学校では、5年生の子どもたちが総合学習の一環として、防災倉庫の壁面を利用して「未来の面瀬」というテーマで壁画を制作。たくさんの魚が泳ぐ川と海、再建された家や商店、新しくできた「面瀬タワー」などが描かれており、復興に対する思いと豊かな自然に囲まれた地域を愛する子どもたちの気持ちが伝わってきます。

面瀬小学校の子どもたちが制作した壁画
面瀬小学校の子どもたちが制作した壁画

潮位・津波観測システム支援

震災前、気仙沼市内には3カ所に潮位・津波観測システムが設置されていましたが、東日本大震災によって流失。余震の危険性が最も高い時期に、次の津波に備えることができない状態が続いていました。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、同市危機管理課からの支援要請を受け、市内の5カ所に新たな潮位・津波観測システムを設置。衛星回線を使って送られる潮位・津波センサーからの情報をモニター部のコンピューターに通し、潮位の変動をリアルタイムで確認することができます。地震発生の際は、市独自のシステムで観測を行うことにより、気象庁からの情報を待たずして避難情報を発表し、地域の住民の方々、また学校などの施設にいち早く情報を伝えることが可能となり、一人でも多くの命を守ることにつながります。

その他にも、防災行政無線広報が聞き取りにくい地域の仮設住宅に住む方々が災害に備えるため、防災行政無線簡易型戸別受信機(防災ラジオ)を2,500台、東日本大震災による津波の浸水範囲と東日本大震災後に使用可能な避難所等を表示した津波浸水図を30,000部、高台避難への啓発を図り津波発生に備えるため簡易津波避難標識100基を、市に寄贈しました。

市内に設置された潮位・津波観測システム
市内に設置された潮位・津波観測システム

将来の災害から、子どもたちの命を守るために

引渡式で菅原市長は、ワールド・ビジョン・ジャパンの気仙沼漁協に対する支援などにも言及し、「ワールド・ビジョン・ジャパンには、気仙沼市の"命"と"経済"を支援していただきました。本当に感謝しています」と話してくださいました。また、ワールド・ビジョン・ジャパン事務局長の片山は、「多くの方々のご協力の元、すべての支援を無事に完工することができました。このような支援を行う機会をいただいたことに感謝しつつ、気仙沼市の防災体制の強化、復興に寄与することができれば、大変幸いです」と話しました。

ワールド・ビジョン・ジャパンの気仙沼市への防災支援は、10月末をもってすべて終了し、これらの施設は、今後気仙沼市によって維持・運営・管理されます。


気仙沼市役所内に設置されたモニター
気仙沼市役所内に設置されたモニター