(2022.07.26)
ワールド・ビジョンは、日常的な紛争の現実から子どもたちを解放するため、地元のパートナー団体と協働でサマーキャンプを開催しています。キーウ、リヴィウ、チェルノフツィ等、紛争で疲弊したウクライナ各地で、34を超えるキャンプを企画・実施しています。
サマーキャンプは5~17歳の子どもたちが対象で、期間は1~2週間です。スポーツや工作、将来的にはロボット工学のワークショップ等、年齢に応じたアクティビティを提供します。
キャンプは楽しむことが一番の目的ですが、より深い目的があります。PFA(Psychological First Aid for Children:子どものための心理的応急処置)の訓練を受けたサマーキャンプのスタッフが、子どもたちが精神的苦痛を抱えていないかどうかを観察し、支援が必要な場合には適切に引き継ぐのです。紛争にさらされているぜい弱な環境にいる子どもたちのため、特別なアクティビティを用意しています。
ワールド・ビジョンのウクライナ危機対応におけるウクライナ事務局長、キャサリン・グリーンは、キャンプは地域の団体と協力して運営されており、圧倒的な人気があると言います。
「ウクライナの子どもたちが1、2週間の楽しい時間を必要としているなら、それは今しかありません。この数カ月間、子どもたちが経験した恐怖は、私たちの理解を超えています。
あるキャンプでは、初日に140人の子どもたちが集まり、笑い声や歌声がひびき、小さな肩から紛争の重荷が取り除かれるのを見ると、心が温かくなりました」
キャサリンは続けます。
ワールド・ビジョンのパートナー団体が運営するサマーキャンプの初日、ウクライナ西部の村では140人の子どもたちが興奮気味に集まってきました。
大打撃を受けたウクライナ東部から逃れてきた17歳のアンジェラさんは、キャンプの運営を手伝っています。ルハンシク州の自宅は焼失し、現在は、家族の友人と暮らしています。アンジェラさんは、子どもたちが遊び、お互いに交流する機会を持つことが大切だと言います。
「ボードゲームや縄跳びなど、いろんなゲームをしたり、ただ毎日集まって子どもたちを話したり笑ったりしています。キャンプのリーダーの1人であるティモシーは、"本当の子どもとして過ごせている"と話してくれます」
その、ティモシー君(14歳)はこう語ります。
「僕たちは、たくさんの活動をしています。直接子どもたちとつながり、コミュニケーションをとることができます。それは、一番重要なことです」
ティモシー君もまた、ルハンシク州から脱出し、その旅路を「恐ろしい」と表現しています。「故郷を離れる時、もう二度と戻れないかもしれないことは分かっていました」と言います。
ワールド・ビジョンが先日発表した報告書『No Peace of Mind』によると、ウクライナの150万人の子どもたちが、紛争による不安やうつ、社会的障害などのメンタルヘルスの問題を抱えるリスクがあるとされています。このキャンプは、子どもたちのメンタルヘルス上の必要性に応えるひとつの方法です。
また、ウクライナの親たちは、子どものメンタルヘルスが最大の心配事であることを明らかにしており、ワールド・ビジョンが発表した同報告書は、迫り来る危機に警鐘を鳴らしています。
ワールド・ビジョンは、直接的に、またパートナー団体を通じて間接的に、ウクライナと周辺国に逃れた人々に包括的な支援を届けています。2022年6月30日までに、ウクライナ、ルーマニア、モルドバ、ジョージアで、6万人弱の子どもを含む153,910人に支援を届けました。96,000人以上に食料を、12,000人以上に一時的な避難所を提供し、給付した現金の総額は889,000米ドルを超えています。