(2021.06.04)
初回は、国内で避難生活を余儀なくされる南スーダンの「国内避難民」の現状です。
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「昨年6月、私たちが住んでいたトンジ北郡でコミュニティ間の衝突が始まりました。多くの人が家を追われ、ほかの地域に避難しました。私たちは無力でした。衝突に加えて、洪水が発生したため農地も流され、なすすべもありませんでした。でも私と家族は、ワールド・ビジョンの食糧支援のおかげで飢餓から救われました」5人の子どもを持つ母親、モニカ・ニャヌットさん(32歳)は言います。
ワールド・ビジョンは国連世界食糧計画(WFP)と協働で、ワラップ州トンジ北郡の国内避難民にトウモロコシや豆、植物油、塩、プランピーナッツ(ピーナッツバターに似たペースト状の栄養治療食)等を配布しました。2021年3月までに、食糧配布や学校給食プログラム、栄養強化支援プログラムを通して、64,000人以上(うち42,579人は子ども)に食糧支援を届けています。
食料安全保障と栄養について分析する国際的な機関、Integrated Food Security Phase Classification (IPC) が最近発表した報告書では、南スーダン国内で2021年4月以降、同国の全人口の60%にあたる推定740万人が深刻な食糧不足に直面するとされ、緊急の対応が必要になると警告しています。また、生後6~59カ月の子ども130万人以上が、妊娠中または授乳中の母親483,382人と同様に、急性栄養失調の治療が必要になるとも予測されています。
2児の母親のニャラット・デングさんは、最初の子どもが生まれたときから、子どもにプランピーナッツを食べさせていたと話します。「最初の子どもは栄養失調でしたが、昨年、6カ月間の栄養支援プログラムを受けて回復しました。もし支援がなかったら、私たちはモリンガ(亜熱帯地方に自生する植物)の葉で飢えをしのぎながら、死んでいたでしょう。親として今の状況を不満に感じますし、栄養失調に苦しむ多くの家族を目にして無力感を覚えます」
アケッチ・ガー・マレックさん(60歳)も、近隣コミュニティの衝突から逃れてきた国内避難民の1人です。「女性や子どもを殺害された報復として、敵対するコミュニティの住民を殺そうとする人たちがおり、私たちは一番の標的になりました。トンジ北に逃れ、病院に避難し、モリンガの葉を食べ、物乞いをしながら生きてきました。自分で食べていくすべがないので、食糧支援が頼りです」
ワールド・ビジョンは、国連世界食糧計画(WFP)と協力して、ワラップ州を含む南スーダン北西地域において、コミュニティ間の紛争や自然災害などの緊急事態の影響を受ける国内避難民に支援を届けています。最もぜい弱で支援の手が届きにくいコミュニティを対象に、フード・フォー・アセット(インフラ整備など地域資産を形成するための労働に参加してもらう対価として食糧を支援する方法)や、生計を再建するための復興プログラムを実施し、人々の命をつなぐとともに、この困難が過ぎた後の自立を目指した活動にも取り組んでいます。
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