12月1日は「世界エイズデー」

(2015.11.30)

世界エイズデーとは

レッドリボン

世界エイズデー(World AIDS Day)は、エイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見を解消するため、1988年にWHO(世界保健機関)が制定しました。12月1日に定められ、この日には世界各地でエイズに関する啓発活動が行われています。

世界エイズデーは知らなかったという人も、胸に赤いリボンのバッジをした人を見かけたことがあるのではないでしょうか。これは「レッドリボン」と呼ばれ、「エイズに偏見を持っていない、エイズとともに生きる人を差別しない」というメッセージが込められています。

HIV/エイズの現状

カンボジアの親子
パルリカちゃんはHIV/エイズとともに生きるお母さんと2人暮らし。ワールド・ビジョンの支援により、お母さんは自宅の前で商店を営み元気に暮らしています

国連がまとめた最新情報によると、2014年末現在、世界のHIV陽性者数は3,690万人にのぼります。しかし、新たにHIVに感染した人は200万人と、2000年に比べて35%減少しており、エイズによる死亡者数は120万人と、ピークだった2004年より42%減少しています。

死に至る病として恐れられた時代を経て、HIV/エイズ※を取りまく環境は大きく変わりました。適切な対策方法が確立され、HIVに感染しても健康な人と変わらない生活ができる時代となりました。

※エイズは、HIVというウイルスに感染することによって発症します。

エイズに両親を奪われる子どもたち

病気で母親を亡くし祖母に引き取られたヘクター君(右端)。祖母にも7人の子どもがおり生活は厳しい(ザンビア)
病気で母親を亡くし祖母に引き取られたヘクター君(右端)。祖母にも7人の子どもがおり生活は厳しい(ザンビア)

一方、医療へのアクセスがない途上国に住む人々や、経済的な要因で治療を受けられない人々にとっては、HIV/エイズはいまだ死に至る病です。特に、子どもたちへの影響は深刻です。

2015年の国連児童基金(UNICEF)のレポートによると、エイズにより親を亡くした子どもは世界で1,770万人。2007年と比べて16%も増加しており、HIVの新規感染は減少しても、子どもたちへの影響の深刻度はむしろ増しています。その多くはサハラ以南のアフリカに集中しており、この地域を覆う貧困問題と深く関係していると考えられます。

子どもたちは、エイズで両親を亡くすという悲しい現実に直面するだけでなく、祖父母や親戚に引き取られても、家庭が貧しく満足に食事を与えてもらえない、学校に行かせてもらえない等の厳しい状況に陥ります。さらには、HIV/エイズの予防法を学ぶ機会がないため、自身もHIVに感染するという悪循環が続いてしまいます。

感染の連鎖を断ち切るために

支援地の子どもたち

HIVに感染しても、適切な処置をすればただちに死に至ることはありません。子どもたちがエイズで親を亡くす可能性は低くなるのです。そこで必要になるのが、HIV/エイズの正しい知識と対処法です。
ワールド・ビジョンは、支援地域の中でHIV/エイズの問題に取り組んできました。

支援を受けている女性たち
ビューティさん(右)とタンディさん(左)

例えば、HIV/エイズの影響が最も深刻な国の一つであるスワジランドでは、子どもへの感染を防ぐため、地域保健員(研修を受けて地域の保健普及のために活動する人)による妊産婦への医療知識の普及が進んでいます。

「私たちの地域でも多くの人がHIV/エイズを患っていましたが、この病気に対する知識がなく、多くの人々は呪いにかかったと思っていました。このため、 病院や診療所に行くことを拒否し、何人もの人が亡くなりました」

こう話すのは、地域保健員のビューティさんです。HIV/エイズの看護に関する研修を受けたビューティさんは、患者を抱える家族に対して、補助栄養食の調理法を教えたり、病院をすすめたり、寝たきり患者の介護の仕方等を指導しています。ビューティさんとともにHIV/エイズと闘うタンディさんは、4人の子どものお母さん。ビューティさんのケアのおかげで、寝たきりの状態から診療所まで歩いて通えるまでに回復しました。


また、タンザニアの支援地域では、歌を通じて啓発活動を実施しています。「カミソリを使い回さない」「安全でない性交渉をしない」等の感染予防方法を、女の子たちに伝えています。ワールド・ビジョンは引き続き、これらの地域でHIV/エイズ根絶を目指して活動を進めます。