お風呂掃除やファストフード店でのアルバイト。日本でも、子どもが働く光景はよく目にします。しかし世界には、生きるために劣悪な環境で働かなくてはならない子どもたちが大勢います。
そんな子どもたちを減らすために制定されたのが、児童労働世界反対デー。厳しい世界に生きる子どもたちの現実をお伝えします。
児童労働は大きく二種類に分けられます。一つは、就業最低年齢(原則15 歳)未満の子どもが大人のように働く労働で、例えば、他人の家で一日中行う家事労働。
もう一つは、18歳未満の子どもによる健康・安全・道徳を損なう恐れのある労働で、危険な作業や売春、兵士等、「最悪の形態の児童労働」と言われます。
教育を受けられない、自由に遊ぶ時間がない等、子どもが健全に育つことが難しいという点で、日本で見られるアルバイトやお手伝いとは区別されます。
児童労働を強いられる子どもの数は、年間1億6795万人。
これは、世界の子どもの約9人に1人という割合です。さらに、この半数以上は、先述の「最悪の形態の児童労働」に就いており、子どもの人権が脅かされています。児童労働の主な原因は貧困。
教育の機会を失った子どもは、大人になっても良い仕事を得にくいため、家族を養えず、その子どもも働かなければならないという悪循環に陥っています。この悪循環から、9人に1人の子どもが未来を奪われているのです。
児童労働は、私たちの身近なところにも存在します。例えば、コーヒー。安い価格の背景には、広大な農園で一日中コーヒーの実を収穫する子どもがいるかもしれません。
大人よりも賃金が安い子どもは、コーヒーの他にも、チョコレートの原料であるカカオの収穫、Tシャツになる綿花の摘み取り、サッカーボールの縫製、指輪や携帯電話の部品になる金属の採掘等に従事しています。
モザンビークに住むヨハネ君は、お母さんと3人の兄弟の5人家族。お父さんがいないため、長男のヨハネ君が働きます。毎朝6時に起きて、採掘場で金を探します。空腹のまま、8時間泥を掘り続けましたが、売れる量には届きません。
約2日間で、ようやく2米ドルの収入になります。この地域には、ヨハネ君のような子どもたちが沢山います。「僕には食べ物も休みもない。働き続けるしかないんだ」
この問題に取り組むため、国際労働機関(ILO)は国際条約で児童労働を禁止しており、国連も「子どもの権利条約」で子どもの基本的人権を認めています。多くの国はこれらの条約に賛同し、国内法を整備。また近年では、製品の製造過程で児童労働が行われていないか、厳しくチェックする企業も現れています。
ワールド・ビジョンは、児童労働の主な原因である貧困を断ち切るため、チャイルド・スポンサーシップを通じて、地域全体の環境改善に取り組んできました。さらに、2014年のG20サミットに際して、G20諸国が児童労働問題に協力して取り組むことを求めた政策提言書を発表しています。これからも、支援活動とアドボカシーの両輪で、この問題に取り組んでいきます。
ワールド・ビジョン・ジャパンは、日本に住む子どもたちに児童労働をはじめ世界の子どもたちを取り巻く課題に目を向け、自分にできることを考えるきかっけとしてもらうことを願ってグローバル教育を実施しています。日本の子どもたちに、動画や写真、疑似体験を通して、世界の同世代が生きている「今」を見つめるきっかけを持ってもらう取り組みです。
6月4~6日、福岡県内の小学校で実施した授業では、小学4~6年生の子どもたちが、ゴミ山で売れるものを探すカンボジアの子どもの児童労働を疑似体験。
新聞紙を敷き詰めてゴミ山を再現した体験スペースので、新聞紙に埋まったプラスチック製品を制限時間内で探します。プラスチック製品を見つけるのにまず一苦労。しかも、プラスチック製品を袋いっぱいになるまで集めても、一食を買うことすらできない収入にしかならないことを、実感をもって体験しました。
実際のゴミ山では、怪我や病気につながる危険があること、また、児童労働をしているために学校に行けない現状も動画で学びます。動画に登場する同じ年齢の女の子は、両親がいないため働いて妹や弟を支えています。児童労働の厳しい現実に言葉を失う生徒の皆さん。感想を聞くと「つらいにきまってる...」と一言。
【感想用紙に寄せられた言葉】